表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 2 -BURNING Rain on DUO 《ロシアの赤い悪魔》-
25/188

18.5 with Silver's thinking

 我は神。

 銀を司り、戦を愛す。

 悠久の時。

 神代より数多の英傑たちと剣を交えてきた。


 何十年前だろうか?

 我からしたら数日前のように感じる感覚。

 

 ある時一人のおなごと出会った。

 黒髪と黒い瞳を持つ人間。

 

 今と比べ我ら神魔の類が狂喜乱舞していた時代。

 言わずもが我は絶対。 

 絶対は我。


 なんであったろう?

 退屈で山川を破壊していたからか、 はたまた殺戮をしていたからか。

 出会った、その黒き瞳を持つおなごは、あろうことか我に物申した。

 破壊するな。

 無下に殺すな。


 まったくピーピーと五月蝿いことよ。

 

 我に説教垂れるものだから軽く蹴散らそうとしたが、はてさて、その細い身に見合わぬ剛腕な能力の持ち主じゃった。

 なめてかかってものだから、足を救われひっくりかえってしもうた。

 一瞬のスキ。

 しかしトドメをさすわけもなく、アヤツは我の横に座ったのだ。

 そして言いおった————

 

 『私はおなごじゃない。 ————って名前があるの、言葉が分からないほど馬鹿じゃないでしょ?』

  

 信じられるだろうか?

 この我に向かってなんという不敬。

 万死に値する。

 だが、一度は戦いに負けた身、退屈しのぎにでも少し付き合ってやるかと考えた。

 

 それからアヤツとの旅が始まった。

 海を渡り。

 山を登り。

 陸を歩き。

 時には語り合い。

 時には笑い合い。

 時には言い合い。

 拳を交わし合う日もしょっちゅうだった。

 

 今思えば楽しい毎日だった。

 戦以外で初めて心が充実した。

 いや、我ら二人で嬉々として殺戮を行ったときもあったか。

 なんにせよ一瞬で過ぎ去る、そう感じる日々であった。


 しかし、 ある時じゃ。

 魔王の動きが活発になりよった。

 魔力を感じとるに、我にも匹敵する、いや、正直に言えば我以上の力を持つ魔王の存在だと察した。

 奴らは徒党を組み、この星の征服を目論んでいるようじゃった。


 人の身では到底勝てる相手ではない。


 無謀な勝負。

 じゃがアヤツは我に言った。

 『助ける』と。

 おぬしは力がある。

 隠れておればやり過ごせる。

 戦表に出ることなくこのまま旅を。

 我と一緒に、我と一緒に生きようぞ。

 

 しかしアヤツは首を振った。

 それは出来ん。

 そして力があるからとも言う。


 力ある者だからこそ戦う。

 力ある者だからこそ守る。


 我はよくわからんかった。

 力は力。

 自分が活きるために必要なものとしか考えておらんかった。

 

 助言も聞かん。

 ならばこそ我も一緒に行こうと申した。

 人のためでない。

 お主のために、共に戦ってやろうと言ってやった。

 感謝してほしいものだ。

 たかが人っこのために戦の神である我が手を貸してやるのだ。


 しかし、アヤツは必要ないと申す。

 なぜじゃ?

 

 曰く我は神。

 一緒に戦って、魔王を倒そうものなら、次は我が狩られると考えたらしい。

 バカなことよ。

 確かに魔王に交じり、私欲働く邪神もおるが、戦神の我は別にそんなことは思うておらん。

 仮に狙われようとも負けぬであろう。

 それにぬしは我と相対することなぞないだろうに。


 何度も言うたがアヤツは折れん。

 結局我はアヤツの意志を崩す事はできんかったんじゃ。

 手を振り去っていくアヤツを見送ることしかできんくて。

 じゃが、約束をした。


 『必ずまた会いに来る』

 

 再会の約束。

 そこからどれほど月日が経ったか。

 アヤツがいないことでこんなにも、こんなにも長く感じるかという日々。

 しかしどれほど待ってもアヤツは現れんかった。

 

 シビレを切らし、人里に降りた我は彼女を知らんかと聞いた。

 そして知ったのは、魔王連合と人間の戦いが、人の勝利で終わったこと。

 喜ばしい。

 つまりはアヤツの活躍で魔の奴らを蹴散らしたということだ。


 そこで共に十人の英雄の話も聞いた。

 戦争を終わらせた立役者のようだ。

 なんと!

 その中にはアヤツの名もあったのだ。

 っふっふっふ。

 そうであろうなんせこの我と共に過ごしたものなのだから。


 『それでこやつら、いや、この黒髪の少女はどこにおるのだ?』


 歓喜一転、途端に曇った顔を浮かべる人の子たち。

 なんじゃ?

 どうしたのじゃ?


 悲し気に口を開き、放った言葉はアヤツの『死』じゃった。

 何を言っておる?

 我が人の姿をし、神であることを知らぬ故嘘をついておるのか?

 無意識じゃった。

 神威をさらけ出し、虚をつくなと説いても、怯えたこやつらの返答は『戦死』の一言。

 曰く魔王の一人と相打ちになったらしい。


 信じられんかった。

 信じんかった。


 我は、きっとどこかでケロッと生きてるのだと信じ世界を周った。

 海、山、陸。

 アヤツとともに旅したような道をひたすら進んだ。

 しっかし、一向にアヤツが現れることは無かった。


 なぜだ?

 なぜ死ぬ?

 見知らぬ人々にために、なぜオマエが死ななければならぬか。


 世界中を探しつくし。

 最後に、極東の島国にて、アヤツの墓を見つけた。

 縦長に伸びる立派な石碑。

 そこにはアヤツの名が刻まれておった。

 

 頬に熱いナニカがつたう。

 これは、涙だろうか?

 流したことなぞ無い。

 流すことなぞ無いのだ。


 しかし意識せずともポタポタと滴のように落ち着く。

 涙は、止まらんかった。


 アヤツは嘘つきじゃった。

 また我と旅を、我と会うと言うたのに。

 我との約束を破りおった。

 不敬じゃ、万死に値する。


 アヤツはなんじゃ?

 我に説教垂れておきながら、情けない、情けないぞ。


 日が赤く染まり始めるときになってやっと涙は止まる。

 

 くよくよしていても仕方なかろうと感じる。

 我は神、アヤツは人。

 交じり合うことなぞ元々無かったのじゃ。

 

 じゃが、改めて分かった。

 おぬしは我にとって、初めての『友』だったのだと。


 技を競い、夜明けまで語り、色んな経験を共にした、初めての友だったのだ。


 これが、悲しくないわけないじゃろうが。


 だが、おぬしはやりきったのじゃな?

 誰よりも戦い、誰よりも人を守ったのじゃな?

 おぬしの話をすると皆うれしそうな、感謝した顔をする。

 ならばこそ、我も最期、こんな情けない顔で送るのも失礼じゃろうに。


 友よ、我は忘れぬ。

 友よ、我は忘れぬ。


 誰よりも、おぬしの友として、笑顔で送りだそう。


 「さらばじゃ、ゆっくり眠れい」


 銀華を捧げる。

 名は知らぬ。

 じゃがおぬしが好きといってた華を、我が不滅の銀華として捧げよう。

 我はまた、今度は独りで旅立つ————











 「————ほほう、破壊の黒龍か、面白いのう」


 あの別れからどれくらいの年月が経っただろう。

 久しく下界に訪れた時、そこそこの力を持つ蜥蜴たちを見つけた。

 

 しかし戦ってみれば退屈の一言。

 炎を出させる間もなく一撃じゃった。

 まったく、スピードが遅すぎるのじゃ。

 魔王といっても、近頃のは雑魚ばっかだからの。


 倒したことだし、もうこの場を離れようかと思ったとき、ふと後方から神性を感じた。

 いや神性と、もう一つは神殺しの性か?


 おもしろい。


 神の使いと神殺しか。

 退屈凌ぎにでもしてやろう。


 そうして現れたのは二人の人間だった。 

 金髪の聖剣を携えたおなご、そしてもう一人は————


 黒い髪、そして黒い瞳をもつ少年。

 神滅の波動を感じる小僧。

 

 なぜじゃ?

 この小僧を見た時、アヤツと会った日のことを思い出した。

 我に物申す不届き者。


 まだまだ我も甘い。

 アヤツと少し特徴が似ているだけではないか。

 この小僧が我に物申すことなぞ出来ぬまい。


 しかし、もし我に異をたてるようなら、こやつもまた我の友になりえる、新たな巡りかもしれぬ。

 

 そうなれば今度こそ、そうじゃな、銀に変えてでも、我の退屈に付き合ってもらおうかのう————


 

 


 


   

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ