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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 2 -BURNING Rain on DUO 《ロシアの赤い悪魔》-
23/188

17

 「——ふふふ。 お主の剣は乱暴この上ない」

 「——それが私の持ち味なのです」

 

 大地は抉れ。

 風は悲鳴を上げる。

 血と肉が舞い。

 地上を戦へと変える。


 かくして神との戦いは驚くほど簡単に始まった。

 白銀の神エレネーガ。

 神代でも指折りの実力者。

 神って言ったら大体の奴は上で黄昏ているらしいが——


 (よりにもよって闘神だもんな……)


 闘神と言えば戦を好む狂信性。

 もたらすものと言えば災いぐらいか。

 まさしく人類にとっての疫病神。


 「——まったくアヤツも面白い人間に聖剣を与えたものだ」

 「……っ」


 ここものの数分で数千手。

 エレネーガとエイラの鍔競り合い。

 剣と刀が交じり合う。

 聖剣からは輝く光が、銀刀からは雪にも映える透明な粒子が。

 お互いの能力対抗によって起こされる眩き。

 

 エレネーガは力技共に卓越している。

 人間界で圧倒的な力を持つエイラでさえエレネーガには遠く及ばない。


 ——ただ、それは1人だったらって話だ。


 「大地同調アース・シンクロ!」

 「ぬ?」


 大地と同調。

 星が巡るように、周り一帯が青い光に包まれる。

 それすなわち支配にして基体。

 自然に、魂が宿る。


 「人を成せ」

 

 俺の言葉で地は形を変える。

 土は人を模す。

 魔族ともとれる大きな図体で。

 ところどころに尖りのある。

 まさしく土人形ゴーレム

 

 「小僧は土を操る能力か」

 「……さあ、 どうだろうな」


 数にして20。

 普段はこんな造ることもないが特大サービス。

 

 (といっても数秒の時間稼ぎにしかならないだろうけど……)


 動き出すゴーレム達。

 重さにして1体あたり3トンといったところ。

 普通乗用車くらいはある。

 ただ見た目にそぐわず動きは俊敏だ。

 質量の大群。

 迫っていく土の弾丸。


 「他愛ないな」

 

 白銀刀は摩訶不思議。

 一刀。

 俺からしたらそんな早くもない。

 下にストンと振りかざした、それだけだ。

 それだけなのに——


 「……やっぱ神ってのはチートだろ」

 

 原初への回帰。

 ゴーレム20体は何のために造り出されたのか理解する暇もなく、 元の大地へと帰っていった。

 呆気なく。

 だがゴーレム達には悪いがこれは時間稼ぎ。

 瞬間の出来事に見えるが、おかげで2秒稼げた。

 

 「エイラ! 下がれ!」

 「——!」

 

 2秒で十分。

 彼女らの剣戟はゴーレムの進撃で中断された。

 それだけあればエイラの後退が可能になる。

 俺が介入するまでの間、1オン1、ずっと戦っていた。

 こっちの準備もだいぶ進んだ。

 俺の入り時だろう。

 ここからは2オン1といこうか。


 「俺が前に出る。ホーミング頼む」

 「……心得たぞ」


 エイラとの戦いを見る限り、ヤツは遊んでる。

 本気どころか半分出してるかも怪しいところだろう。

 それでいてエイラがだいぶ消耗してる。

 いかに怪物か。


 (『あれ』が完成しなきゃ勝ち目ゼロ、今は耐えるが一択)


 「大気同調アトモス・シンクロ

 

 大気と同調。

 この空間は今俺となった。

 気流を変える。

 足への風を集中転化。

 速度を上げる。 

 ロウからのオーバートップ。

 神速へのシフトチェンジ。

 

 「……風が流れている?」

 「さあ行くぞ神様。二回戦目スタートだ」


 いわばエイラの一回戦は様子見。

 まあこいつの馬鹿みたいな体力あってこそだけど。

 

 「出番だ。とびきりの頼むぞ」

 

 テンペストは応える。

 この槍には意志がある。

 シンクロという能力故なのか。

 そう感じるんだ。

 さて白銀刀に俺とこの槍はどこまで通用するか。

 

 「——土の使い手かと思ったが、まさか風も操れるとはのう」

 「多才なもんでね」

 「っほっほっほ。まさに奇怪、おもしろい」

 「じゃあ、行くぞ」


 音を置き去りにする。

 電光石火。

 俺の踏み込んだ地は割れ、圧倒的な瞬発を生む。


 「……穿て! テンペスト!」

 

 一撃。

 口頭発動による槍の神滅事象が発動し、あらゆる神性を殺す。

 槍には黒き銀の魔力が纏わる。

 そしてスピード。

 シンクロ加速による風変流で一度でマッハ3をたたき出す。


 「ぬお!」


 俺は瞬間でエレネーガの間合いに入った。

 流石に驚いた声を上げている。

 早すぎるが故、スローモーションのように停滞する時間。

 一閃。

 しかし、導き出すのは、鋼の悲鳴―—


 「っげ! これ受けるんかい!」

  

 ギリギリ!?

 エレネーガは寸でで刀を合わせてきた。

 これ初見で破るとか……

 やっぱ格が違うってことか、それじゃあ得意じゃないけど——


 「たまには泥臭くやりますか!」

 

 必殺を交わされ、すぐにキレイに捌かれる槍身。

 エイラの追撃も加わるが、前の戦闘での消耗が原因か、キレが足りない。

 やはりここは俺が7割、エイラは回復だな。


 槍は反されるが、黙っちゃいない。

 両手に握った槍をある種曲芸のように操る。

 これはテンペストに刻まれた戦いの動き。

 そして迫るはエレネーガの神速。

 大胆に、美しく、ときに荒波のように、流れる銀刀銀髪。

 交えるごとに、火花にも似た魔力の粒子が生まれる。

 

 だが戦闘は意志あるテンペストの領分。

 体は勝手に動く。

 なら俺は——


 「血液同調ブラッディ・シンクロ!」


 雪空に星が巡る。

 青き輝きはそこに染み入る魔族の鮮血、 血液に伝わる。

 真っ赤な太陽に月が現れるが如し。


 「撃ち抜け!」

 

 血液は鋭く伸びる。

 これいわゆる血の弾頭。

 即興マシンガン。

 即効が最短。


 だが————


 「遅いのう」

 

 弾く。

 弾いて弾いて弾く。

 テンペストをいなしながらも、その動きは正確。

 まあでも————


 (エイラ、あとどれくらいかかる!?)

 (あと5分、いや3分くれ)

 (……了解)


 この間にもアイコンタクトが交わせた。

 エイラ完全復帰まで3分。

 そうすりゃこの2オン1の見栄えもだいぶ良くなるだろうな。

 いまは俺は全受け、この形成上しょうがないけど。


 そんな思考しちゃいるが、もう目の前を刀が通りすぎてる状態。

 テンペストに戦闘を任せちゃいるが、そろそろボロが出始める。

 見た感じじゃ弾丸も見切られてるし。


 「おぬしの能力、それは全能かの?」


 剣戟は続いている。

 俺の服が少しずつ裂け、少しずつ傷が生まれ、少しずつ迫っている時に。 

 神は問いかける。

 

 「……全能?」

 「地を、天を、水をも操る。けったいな能力思うてな」

 「神様に褒められるとは嬉しい限りだ」

 「ふふ。神など信じておらんくせによく言うわ」


 軽口叩いちゃいるがヤバい。

 ヤバいぞ。

 エイラに3分ぐらい耐えれるってアイコンタクトしたが、これキツイかも。

 

 (本命の方もまだ仕上がってない。こりゃあテンペストの——)


 「そろそろ本腰入れてくかのう」

 「っな!」

 

 このタイミングで!?

 マズいって勘弁してくれよ。

 もうキツイです。

 

 「おなごはまだのようだし、小僧がどこまで来れるか楽しみじゃ」

 「まじかい……」

 

 エレネーガのプレッシャーが増すのが感じ取れる。

 しかもだ。

 彼女はまだ刀しか使っていない。

 そう、 能力・・を使っていないんだ。

 これから垣間見るのが本物。

 圧倒的な力だ。


 押しつぶされる。

 なぎ倒される。

 

 仕方ない。

 分かりきっていたこと。

 だから最初に言った。

 『全力』で行くって。

 一刻も早く目的地に行きたいってのに、 これ使えば当分は動けない。


 (イタリアで、エイラとの一戦以来、まあやれることやるしかない)


 「神様」

 「なんじゃ」

 「俺は、四道 夕って名前があるんだ」

 「ん?」

 「小僧って呼ぶなってことだよバーカ!」

 「…………」


 もうなんでもいい。

 あと少し。

 どんな手段を使ってでも生き延びる。

 時間の経過。

 残された手立ては少ない。


 「……そうか、そうか、我に正面から物申すか」

 「そうだ。だからアンタのことも様はつけない。エレネーガで十分だ」

 「……っふっふっふ。こんな豪胆なヤツがまだいようとはな」

 

 いいぞ。

 なんかよくわかんないけどエレネーガがしろらしい空気を纏いだしてる。

 このタイミングになって剣戟も止んだし。

 実際エイラは今、現在進行形で何重もの強化を行っている。

 刹那の時とはいえ、神に近しい存在へと昇華できるだろう。

 

 (『アレ』もあと、あと少しなんだ……)


 「ではユウ、共に死地へと参ろうぞ」

 

 感慨タイムも終了。

 ここまでで、 意外とコイツは悪い奴じゃないのかもしれない。

 ただバトルジャンキーというだけで。


 「————私を忘れてもらってはこまる」


 思考を移行。

 やっとだ。

 ようやく1つ準備が整った。

 まったくこんなに回復、強化させてやったんだ、その分の働きはしてもらわなくちゃな。


 「……おせーよ」

 「すまない。ただ、待たせた成果はある——」


 久しぶりにも感じるエイラの登場。

 右手には——


 「めっちゃピカピカしてるな」

 「ああ。暴れたくてうずうずしているところだ」


 聖剣はかつてないほどにその存在感を放つ。

 輝いてはいるが、ここまで闘気や殺気を含んでいると最早魔剣レベルじゃないか?


 「エレネーガ、待たせたな」

 「無用な気遣いじゃ」


 エレネーガは遊んでる節もあって、若干、というかエイラがこの状態になるまで見逃していたと思う。

 それで俺に攻撃が集中したが、おかげでスーパーエイラとなってこいつは帰ってきた。


 ここからが本命。

 エイラ全攻めの後続俺。

 

 「——真開闢強化ラ・カルマ・ミラータ!」 

 「——テンペスト・シンクロ」

 

 聖剣の完全開放。

 テンペストと同調。

 俺達は新たなステージへ。

 神の世界に一歩、足を踏み入れる。 




 第三ラウンド、開始だ。

 

 


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