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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 2 -BURNING Rain on DUO 《ロシアの赤い悪魔》-
22/188

16

 太陽が照らす山道。

 風が吹く。

 雪をハラハラと舞わす。

 風花という言葉が相応しい光景だ。


 

 今日の目的は、ムズカチェン町を襲うドラゴン族の殲滅撃退。

 イエシェフさんからの依頼であり、報酬は怪物バイクKGZ。


 町長の人柄もあって、この魔族退治をやることに踏み切ったわけだ。


 

 「――1匹もいないではないか!」

 「まだまだ先ってことだろ」

 「手っ取り早く出てきて欲しいものだ」 

 「激しく同意」


 町から出発して数時間経つ。

 すでに昼飯は町の住人が用意してくれたモノを頂いた。

 

 「一回戦ったときは、自分たちでドラゴンって言ってたからなー」

 「しかも黒い翼と尾を持つ、おそらくだが……」

 「黒龍族だな」

 「その割には弱かったがな」

 「下っ端だったんだろ」


 町で一回交えたとき、ヒト型の形はとっていたが、翼や角、尻尾を持っていた。

 まさしく魔族の証明。

 エイラも言っていたが、おそらく奴らはドラゴン族の中でも厄介な黒龍の血を引くもの。


 「でも、もし上がいるなら厄介なことになるな」

 「――うむ」

 

 ドラゴン族の種別は色々あるものの、使える魔法はだいたい『炎魔法』だけだ。

 しかし、黒龍族の特徴はその炎の特異性にある。

 通称『黒炎魔法』

 読んで字のごとく、黒い炎だ。

 ただこれが厄介極まりない。

 そこには『破壊』の事象が含まれており、簡単に言うなら燃やすではなく、なんでもぶち抜ける破壊光線といったとこか。


 前回戦ったみたいな雑魚ぐらいなら問題ないが、上位層であればあるほど魔法の威力は上がる。

 討伐レベルもだいぶ変わってくるだろう。

 

 「ドラゴンの王は、吸血王の数段厳しいぞ」

 「しかも黒龍族の魔王となると……」

 「バハムートだな」

 

 黒龍の魔王。

 『破天バハムート』

 破壊を具現化したような魔王で、その強さは魔王でもかなりのもんだ。


 ドラゴンは基本多種族と関わらないようにするが、黒龍族含むコイツらだけは例外で、気が向いたらぶち壊すっていう、まあ破壊屋集団とでも思ってほしい。

 

 「いやいや流石にバハムートはない。そもそも会うことなんて一生ないね」

 「……ユウ」

 「ん?」 

 「それ、 フラグだぞ?」

 「…………」


 エイラよ、フラグなんて言葉よく知ってたな。

 しかし、俺の悪運そろそろ尽きてるはず。

 会うなんてこと――――
















 「……まさか本当に」

 「大当たりだな」

 「……いや、 大外れの間違いだ」

 「確かに」


 結論を言えば、破天バハムートはいた。

 全身から血を流し、魂ない姿で、亡骸だけがそこにいた。

 周りには生物と確認できない程に、肉塊となった魔族も添えられて。


 土地は荒れに荒れ、血と肉散乱するそこは地獄とも形容できる。

 

 『――退屈のう』


 

 響くのは気怠そうな声。

 ソプラノ。

 女、というかまだ幼い少女の声音。

 

 これはエイラが言ってるわけじゃない。

 もちろん俺がそんな声出せるわけでもない。


 低めの身長、俺の首元ぐらいの高さだろうか。

 腰まで伸びるは煌めく銀髪、それに着崩した和服が相なって最早違う意味で神々しさを感じさせられる。

 ただ、見た目なんてどうでもいい。

 本質は『絶対』

 

 


  バハムートの死骸の上には、神が座していた。


 

 


 「――エイラ」

 「――ああ」


 2、3日かかると思っていた魔族討伐。

 ただラッキーなことに奴らの拠点は思いのほか近く、こうして日が沈む頃には本拠地に乗り込めたわけだ。

 

 しかし、俺たちが目にしたのはすでに息絶えたバハムートとその仲間の死骸。

 正確には以前の姿が想像できないほど、粉々にされた肉塊だが。


 周りには特有の生臭い匂い。

 そして焦げ臭くもある。

 肉の焼ける匂いだ。


 こんな香りがすれば普通、それを捕食するためほかの動物が来るもんだ。

 

 ただ、彼女が、それをさせない。

 発されるのは絶対的な力。

 感じるのは圧倒的なプレッシャー。

 

 人智を超えた、超越生物、もはや生物と定義していいのかもわからない存在。

 SSランクとか、SSSランクとか関係ない。

 これはそういう話じゃない。

 物差しで計れる相手じゃない。


 吸血王を討伐しに来たつもりが、道草食って出会ったのが、死んだバハムートと神なんてシャレにならない。

 こんなん話のネタにもならんぞ。

 むしろ伝説として童話にするレベルだ。


 そして神に出会ったなら――


 「……逃げるぞ」

 「いや、ユウ――」


 逃亡一択。

 分が悪いどころじゃない。

 ここまで来る途中で、本当にバハムートがいたら戦おうとかエイラとフザケタ話してたが――


 (レベルが違う、バハムートに圧勝してる時点で、神の中でも戦特化のやつだろう、勝ち目なんてない)


 『待てい、ぬしら』


 「……!」


 話しかけてくんなよ!

 折角見なかったふりして帰ろうと、たまたま通りすぎただけでーす、って感じで去ろうと思ったのに。

 頼む、関わりたくない。

 

 「えっと、なんでしょう……?」

 『蜥蜴どものう、こ奴ら弱すぎてのう』

 「へ、へー、そうなんですか」

 『破壊がどうとか言う割に、一瞬だったわ』

 「……」

 「流石だ」


 いやいやバハムート一瞬なんかい!

 どんだけだよ。

 

 額に汗かきながら俺は返しているが、さすがエイラ、たくましい答えだ。


 『おぬしらも蜥蜴退治かの?』

 

 蜥蜴退治とは言ってくれる。

 神にとっちゃ魔王も魔族もそこらの虫とかと同じってか。

 神に懺悔とかキリスト教じゃ鉄板だろうが、俺は仏教徒、偽って――


 「え、えーっと、さ、山菜採りで――」

 「我々はドラゴンを倒しに来たのだ」

 『ほう?』

 「……え」

 

 (エイラ話合わせろよ! なんで言っちゃうの!?)


 おいおいアイコンタクト、アイコンタクトしただろ。

 いい顔して頷いたじゃねーか。

 なんでバカ正直に答えてんだよ。

 ロクなことになんないぞコレ……


 失念していた、エイラがバカなことを。


 『我も暇だったものでな』

 「いえ、手間が省けたというものです」

 「……」

 

 とっとと帰りたい。

 神とか魔王とか、別に話す分には問題ない。

 大体の奴が普通に受け答えできるし、会話のキャッチボール?は可能だ。

 ただ、総じて最終的には――


 『代わりと言ってはなんだがのう、我が相手をしよう』

 「なんと!」

 「……そうなると思ってた」


 『まだまだ物足りんでのう、丁度いい』

 「ユウ! やるぞ!」

 「……エイラ、相手分かってんのか?」

 「神だ!!」

 

 そうかそうか。

 わかってるのか。

 

 「バカか?」


 頭逝っちゃってるぞ。

 でも、エイラは本能で感じてるんだろう。

 行きつく先を。

 今を打開する術を。

 

 「――わかっているだろう、逃げることは、叶わん」

 「――はあ、そんぐらいわかってるよ」


 エイラは悟った様に言う。

 そうだ。

 神なんてほとんどが名前だけ。

 中身はどこかのガキ大将と同じ。

 自由気まま。


 崇拝するやつもいるが、そいつは目の前の彼女の眼を見てからにしてほしい。

 

 興味。

 歓喜。

 混沌。  


 入り混じったソレは、品定め、もしくはケース越しの玩具を見ているようだ。


 「エイラ」

 「?」

 

 


 「――――本気でいくぞ」

 「――――もちろんだ」



 政府にバレるとかこの際気にしてらんない。

 本気でやったところで瞬殺されるかもだけど、逃げられない以上、どんな無理難題でもやるしかない。

 隣にはエイラもいる。

 突き詰めるさ。


 ちょっと魔族倒しに来たら神と遭遇とか。

 確率的には年末宝くじよか低い。

 俺の運、これほどか?

 いやエイラももしかしたらスゴイ悪運の持ち主か?


 しっかしこの状況、バルハラが見たらメチャメチャ笑ってくるだろうな。

 お前のこと笑っておいて、この様じゃ人のこと言えない。



 (……お前の力、借りるぞ)



 「――エル・エル・エマ・アマスタリ」


 『ほう……』


 「――バイース・バラウス・バリアーヌ。嵐が轟く。嵐が轟く」


 『そうか、人の身にして奪ったか』

 

 「――来い、テンペスト」


 言葉が紡ぐ、刹那の世界。

 嵐の具現。

 疾風迅雷。

 雪と砂塵が舞う。

 

 神との一戦、この状況と皮肉ったが、それは悪い意味じゃない。


 俺の手に現れるのは魔槍だ。

 地中海に君臨し、神の位を降りた羅刹の王。

 王の名はバルハラ。 

 この槍は彼が握った、神を屠る、神滅の武器。

 

 

 バルハラの意志を受け継ぎ顕現する。


 俺の手に黒銀の槍が握られる。

 

 『南の戦坊が持っていた、忌々しい神殺しの槍か』

 「そうだ。アンタにはもってこいだ」

 『そうであろうな。しかし、すでに神擬きを屠っているとは驚い――」

 

 「――聖剣カリヴァーン


 大気が割れる。

 溢れ出る光の輝き。

 これもまた人智を超えた超上の武器

 テンペストの展開を終えると同時、次いでエイラが聖剣の力が解放した。

 暖かく、そして神々しい。

 全てを照らし、全てを救い、全てを払う。


 『女子おなごは、聖剣か……』

 「――強化ミラータ

 

 エイラはすでに万全だ。

 聖剣の力もすでに身をもって知っている。

 あとはどこまで連携できるかがキーだ。


 『滅神の槍使いと、聖剣の担い手、面白い組み合わせのう』

  

 「――確かにそうだな」

 「――俺はなんも面白くないね」

 

 描く予想図。

 エイラと歩む。

 かつて世界を救ったあの人達もこんな気持ちだったんだろうか。

 どうしようもなく強い敵。

 

 別に怖気づいてる、わけじゃない。

 初めてだ。

 相手神様なのに、隣に誰かいて、こんなに頼もしく感じるのは。


 「私の名はエイラ・X・フォード! そして相棒――」

 

 「四道ヨンミチ ユウだ。あんたを殺して生き残るよ」


 『――面白い。やはり面白い。下界に居る甲斐あるというものだ』

 


 少女は君臨する。

 白銀の髪が揺れる。

 彼女の手には、銀色鋼の『刀』が現れる。


 (白銀色、刀を使い、神の中でも戦を好むバトルジャンキーな性格、おそらくやつは――)



 『我は銀を司り、戦を、覇を、天を臨む――』


 

 (不倶戴天ってか。こりゃあ、神様なかでも超大外れの奴だ――)


 


 



 『――闘神エレネーガ、お主らを地獄に連れて行こう』

 


 

 

 


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