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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 2 -BURNING Rain on DUO 《ロシアの赤い悪魔》-
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15.5 with Friends and ONLY BED

 「——にしても魔王討伐どうなってんだか」

 「——やっぱSランカーは何考えてるかわかんないっす」

 「——しかもフォード先輩とふたりっきりで」

 「——今もどこかでイチャイチャしてるっすよきっと」


 ここはセント・テレーネ学園、1学年Aクラス。

 イタリアにある学園で、俺トニー・モーガスは一応、優秀者集まるこのAクラスに所属している。


 数週間前、日本からある編入生が来た。

 名をユウ・ヨンミチ。

 俺の隣の席にして、寮の同室、そして友達だ。


 「ザックも連絡こないんだろ?」

 「うっす。音沙汰ないっすね」

 「一報くれりゃあいいもんを」

 「そっすよねー」


 ユウはフォード先輩と小隊を組んだ翌日、魔王討伐というデタラメなことを言って姿を消した。

 朝起きた時にはユウはいなく、残されたのは一通の手紙。


 「エイラと魔王倒しに行ってくる。迷惑かけてすまない。今度飯奢るよ。ってそれしか書いてないんだもんな」

 「ユウっちらしい手紙っすけどね」

 「まあな。生き残る気まんまんってか?」

 「ふたりじゃ、ほぼ死ぬっすからね」

 

 ふたりでの魔王討伐は不可能だ。

 前例はもちろんない、挑もうとしてるのもユウたちが歴史上初だろう。


 そもそも魔王ってのはSSランクが10人いてやっと相手にできるかどうか。

 どこの魔王と戦うつもりかは知らない、ただ本当にふたりだけ戦おうものなら、待っているのは約束された『死』だ。


 「先生の話じゃ、ロシア上空で飛行機から落下。それから消息不明らしいけど——」

 「今頃ロシアの森で彷徨ってるっすよ」

 「落ちたくらいでユウが死ぬって思えないもんなー」


 今回俺たちに事前に言わなかったのも、巻き込ませない、心配させないためだったのかもしれない。

 もしくは連絡することで、自分たちの居場所を察知される可能性があると考えたから。

 どれが正解かはわからない。


 (ユウのことじゃ、うまくやってるだろうけどな)


 「無事に帰ってくりゃ、それでいいさ」

 「おお、トニー意外と寂しそうっすね」

 「ま、ユウがいた時はスゲー楽しかったからさ」

 「……そっすよね。早く帰ってきて欲しいっす」

 

 ユウとは数日間しか一緒に過ごしていない。

 でもアイツの能力、言動、行動、すべてに俺たちとは違ったナニカを感じさせられた。

 いろいろ衝撃的なことも多かった、けど楽しい日々で、今はなんだが物足りなくもある。

 

 「今度会うときは絶対飯奢らせるぞ」

 「もちろんっす!」


 魔王、魔王か。

 案外ユウなら、ユウとフォード先輩ならやり遂げてしまうかもしれない。

 失敗するっていうイメージ、あの人たちが死ぬっていう想像が浮かばない。

 俺は経験不足だからこんな考えなのかもしれない。

 でも――――


 「きっとなんとかなるだろうさ」

 「俺もそう思うっす」


 

 「――それか魔王そっちのけで、フォード先輩とのイチャイチャに夢中になってたりしてな……」

 「……全然あり得るっす」

 「くっそおおお! 羨ましいいいい!」

 「寝るときとかも一緒のベットだったり……」

 「お、おいおい、勘弁してくれよ」

 「冗談っすよ、さすがにないっすよー」


 言っちまえばユウが生きてるか死んでるかもわからない。

 イタリア政府もロシア政府も、どういうアクションを起こすのかも。

 

 そういうのひっくるめて、俺はアイツを信用してる。

 きっと成功させるって。

 死ぬなんてことはないって。

 

 今の俺が直接的にできることは何もない。

 でも、待つことはできる。

 

 ユウが帰ってきたとき、一番で迎えてやる、そして即ボケをかましてやるのが、俺の務めってもんだろう。


















 「――はあ、まさかベッドが1つしかないなんてな」

 「――屋根ある部屋を借してくれただけ、有難いことだぞ」

 「――そりゃそうだが」

 

 俺たちは明日から、町長から依頼されたドラゴン退治を行う。

 いつも通りカマクラを造って一晩明かすつもりだったが、町長の好意で部屋を借してもらえた。

 ただ、別に宿を借りたわけじゃない。

 旅行者いない田舎に宿があるわけもなく、 町長の家の一室を借りた。


 「しかもイエシェフさんの借す時のセリフ……」

 「ああーあれか」


 




 『――明日から大変でしょう。狭いですが私の部屋をお使いください』

 『ベッド! ベッドはあるのか!?』

 『ええ。もちろんです』

 『借りよう!』

 『しかしベッドは1つしかないですが、まあ問題はないですな』

 『1つしか……ない』

 『恋人同士なのでしょう? それとも、おふたりはすでに結婚されているのですかな?』

 『『け、 結婚!?』』

 『おっと失礼苗字が違いましたな。老人は早計で困ります。っはっはっは』



 

 「っはっはっはって、最後笑ってたし」

 「うむ。まさか結婚してると勘違いされるとはな」

 「…………それにエイラが相手だったら途中で殺されそうだ」

 「いま失礼なこと言わなかったか?」

 「……気のせいだ」


 エイラのビジュアルは俺が会ってきた女のなかじゃ確実にトップだ。

 しかし何度も言うが中身がひどい。

 もし結婚しようものなら、 エイラを怒らせたときにいちいち死を覚悟しなければ。

 

 コイツも、将来誰かと結婚するんだろうか?


 (……エイラの結婚相手には同情しかないな)


 「私はユウと結婚、全然構わんがな」

 「……また誤解されるからやめとけ」

 「ほ、ほんとだぞ!」

 「はいはい」


 エイラはさっきからこの話ばっか。

 イエシェフさんが変なこと言うからだ。

 それから気まずくはないが、なんか上手く話せないかんじ。

 俺は小学生かっての……

 

 (でもまあエイラの機嫌もいいし、あんまり口出しはしないようにするか)


 「――そういや、アイツらはどうしてるかな」

 「学園のことか?」

 「手紙一枚置いてきただけだからな」

 「連絡は、できんか……」

 「場所がバレるからな」


 飛行機中にいるときは電話してもいいかと思ったが、ロシア政府に睨まれてからは、電子系の居場所を知られるようなものは使っていない。

 

 知られたところで、ロシアは何もしてこない。

 その可能性がないこともないが、十中八九、なにかしらのアクションを起こしてくると思う。

 拘束か、送還か、はたまた殺害か。

 

 なんにしてもバレないに越したことはない。


 (アイツらには、イタリア帰ったときに飯奢らないとな)


 「……そろそろ寝るか」

 「そうだな」

 

 1つしかないベッドに身体を投げる。

 久しぶりのこの感覚、ふかふかだ。

 いままで寒くないとはいえ、ずっと雪の上での野宿。

 辛かった。

 布団とはこんなにも素晴らしいものだったのかと再確認させられる。


 (ベッドを、布団を考えた人は天才だ――)


 「……そしてだ。……なぜ抱き着く?」

 「寒いからだ」

 「……もう夢見なくなったんだろ?」 

 「何があるかは、起きるまでわからん!!」

 「声大きいって」

 「……すまない」

 「俺の腕、絞め潰すなよ」

 「ああ、心得た」


 心得ったって、危険すぎだろ。

 間違って強化でもされりゃあ俺の腕なんて軽くペシャンだ。

 

 「では、おやすみだ」

 「おやすみ」


 エイラはあの夜からよく抱き付いて寝るようになった。

 最初の頃はうなされてる日もあったが、横にいるエイラの様子を見る感じじゃ大丈夫そう。

 隣に寝るだけで改善されるのだから、いくらでも手は貸してやりたい。


 ただ―ー

 

 (デカい胸が腕にあたる……)


 明日の朝は早い。

 睡眠は少しでも多くとっておきたいが……


 (おっぱい、 おっぱいの感触が逆にツライ……)


 胸だけじゃない。

 エイラからのいい香りが鼻をくすむ。

 それらが俺の睡眠を妨げるのだ。

 

 しっかし、こうして黙ってれば、完璧美少女なんだけどなあ。


 構図だけ見れば、同じ布団で金髪美少女と寝る。

 若き男子の夢だろう。


 (トニーやザックに知られたら死刑もんだな ま、アイツらがそんなこと思ってるわけもないか――)


 隣からは穏やかな寝息が聞こえてきた。

 

 

 時間が経つにつれ、だんだんと気になっていた胸の感触も消えていく。

 俺の意識も、久しぶりのベッドのおかげか、スーっと落ちていった。

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