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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 1 -ITALIANs Break Heat《イタリアからの新風》-
2/188

1

 『俺は超能力者だ』

 

 このセリフを百年前に言おうものならきっと中二病のレッテルを張られただろう。


 西暦2117年。

 あの日からちょうど百年。

 あの日というのは、人類に、正確には地球全体が変わった日のことだ。

 人には不思議な力が、各地には異形の生物が次々と誕生した。


 俺の名は、四道よんみち ゆう

 いわずもがな能力者だ。

 年齢は16。

 

 明後日には日本の能力者育成のための学園に入学する予定だ。

 いや予定だった。

 皮肉なことに地球の転換期からちょうど百年たった今。

 この時が俺の人生を変える転換日となったのだから————




 「というわけで君にはイタリアの学園に編入してもらうよ」

 「……」

 「これも政府のめいれ、要請だからね」

 「……いま命令って言いかけましたよね?」

 「っはっは。 気のせいだよ」


 俺と対話しているのは日本能力者統括委員会の役人。

 通称黒服さん。

 名前の由来は黒い背広を着ているからという単純な理由だ。

 

 「実のところヨーロッパ連合の圧力がすごくてね……」

 

 黒服さんは苦笑い、というか疲れた笑みを浮かべている。

 

 「特にイタリア、次いでフランスとイギリスかな」

 「……そうですか」

 「あの出来事があったから仕方ない面もあるんだけどね」

 「それはそうですけど……」

 

 俺は数日前、ヨーロッパである出来事、もとい災害に巻き込まれた。

 結果的に死ぬことは免れたけど現地の被害は相当なものだ。

 

 例を挙げるなら、イタリア領土のコルス島はもう世界地図には存在しない。

 島の大きさはちょうど日本列島四国の半分くらいだった。

 今では跡形もなく砂塵となって海の底に漂っているわけだが。

 そもそもこの島、元はフランス領、しかし22世紀に入ってからはあの大戦の影響でイタリア領へと変わった。

 そういうこともあって国際的にもなかなかめんどくさい島。

 そんな土地を潰してしまったのだから大も大も大問題。

 イタリアが、むしろヨーロッパ諸国が怒るのも無理はない。


 「まあ半分は君のせいみたいなものだしね。イタリアからの要求は断れなかったよ」

 「行くしかないのかー……」

 「できれば日本政府としても稀有な能力者は手放したくなかったんだけどね」

 「じゃあ頑張ってくださいよ……」

 「君がイタリアに行くのが最善の手なんだよ」


 俺は日本生まれ日本育ち、生粋の日本人だ。

 海外には何度か旅行で行ったことがあるくらい。

 自分は日本の学校に通い、日本で働き、日本で死ぬと思っていた。

 だがたった数日の出来事でイタリアに行くことになるとは……


 「そうは言っても高校生活3年間を向こうで過ごすだけさ」

 「3年は長いですよ」

 「学生の3年間なんてあっという間さ。 僕なんて能力者の学園で過ごし————」

 

 黒服さんはなんか昔のことを語りだしている。

 だけど3年、3年頑張れば帰ってこられる。

 

 (日本で通えなくなった時点で、あいつらには文句を言われるだろうな)


 「そうそう、イタリアにはかの有名な『ヴァチカンの聖剣使い』がいるよ」

 「確か『脳筋』でしたっけ?」

 「ああ。しかも君が編入する学園に在籍している」

 「ぜひとも関わりたくないですね」

 「それフラグだよ? でも学年も1つ上だし接点もないか」


 イタリアには聖剣を使う女騎士?がいる。 

 年齢は1つ上だが実態はチート人間だ。

 人が持てる能力は1人に1つだけ。

 人に脳は幾つ付いている? 

 答えは1つ。

 当たり前の話だ。

 

 それと同じ。 

 通常では有り得ない、能力を2つ持つダブルホルダー。

 詳しくは知らないが世界では『脳筋』で名が通っている。


 「政府もできる限りバックアップはする。困ったことがあれば言ってくれ」

 「はあここまで来たらやるしかないですね」

 「その通りだよ! 頑張れ!」

 「もう投げやりじゃないですか……」


 この人絶対めんどくさくなってるだろ。

 だけどやるしかない。

 目立つことなく、 ひっそりと、 静かに暮らせばいい。

 最終手段で不登校という手もある。


 (さすがに不登校にはなりたくなけど)


 「そういえばイタリアのなんちゃら学園? いつ編入するんですか?」

 「セント・テレーネ学園だよ」


 セント・テレーネ学園が正式名称らしい。

 やはり外国、正直名前がカッコいい。


 「編入は明後日。向こうには『明日』飛んでもらうよ」

 「たぶん1か月後ぐらいだと思うんですけど、準備をし……って、は?」

 「正確には明日になった瞬間、12時の出発だ」

 「いやいや無理でしょ!」

 「大丈夫!」


 大丈夫って計画性ゼロだろ。

 イタリアいくらなんでも急ぎすぎじゃないか?

 あいつらには電話で別れの挨拶ぐらいしかできないぞ。

 

 「予定組んだの僕なんだけどね」

 「あんたかよ!」


 この黒服もしかして無能か?

 無能だろほんとは。


 「今日の23時に迎えに来るよ」

 「はいはい。わかりました」

 「じゃあ5時間後に」

 

 黒服さんは去っていく。

 時計の針は午後6時を指し示している。

 そういえばイタリアとの時間差ってどれくらいあるんだ?

 

 

 わからない。

 わからないことだらけだ。

 これから俺はどんな道を進むのだろうか?

 これもわからない。


 環境。

 思考。

 方向。

 感情。


 新たに生まれ変わるだろう毎日。

 船は進路を変える。

 日が照り、海が荒れる。

 はたまた嵐とぶつかるか。


 

 四道 夕。

 新たな星は海を渡る。

 


 

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