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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 2 -BURNING Rain on DUO 《ロシアの赤い悪魔》-
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14

 「――あれが」

 「――ようやく見えたな」


 1週間にも及んだ旅。

 吹雪荒れ狂う山を越え、ひたすら歩き。

 時にはイエティを食い、バカ話をし続けた日々。


 ここにきて、やっと1つ目の目的地についた。

 それは森での遭難に始まり、シンクロで微かな匂いを感じながらこぎつけた地。


 (……やっとこれで正確な場所が把握できるな)


 俺たちの旅は、東に進んでいただけ。

 最初は電子マップを頼ろうとしたが、山で接がるはずもない。

 極東目指してひたすら東に。

 

 小さくても一歩進んだ。 

 魔王討伐の足掛かり、とりあえずここで心身装備を改めたい。




 

 

 目の前に見えるのは町。

 村とまでは言わないが、やはり田舎で、町の規模は小さそうだ。


 歩み進んでいく。

 まず迫ってくるのは、町の入り口に構える門。

 木製だがガッチリとした造りで、巧の技を感じされる立派なモノだ。

 

 田舎かと少し侮ったが、入口を、それから中の建物チラチラ見る感じじゃ、生活も人口も結構充実しているのかもしれない。


 「門には『ムズカチェン』って書いてある」

 「それが、この町の名前か?」

 「ああ」


 門看板にはロシア語で『ムズカチェン』の文字。

 この町の名前だ。


 そしてさっきも言ったが意外と町は立派。

 誰が見ても『廃町』とは思わない。

 だけど――


 「この門構えじゃ、門番でもいそうなもんだが……」

 「町の中も、人ひとり影が見えんぞ」


 俺たちがいる町の入口。

 すぐあるのが大きめのスペース空く広場。

 きっとここで朝一や商売、イベントでもやってそうな雰囲気だ。


 ただ、エイラの言う通り、人ひとりいない。

 

 空虚な町。 

 

 時刻はまだ昼過ぎ、寝るには早いし、狩りに行くにしても子供や女の姿はあるはずだ。


 「人の気配は、する」

 「ユウもそう感じるか」

 「どこかに隠れてるんだろう」


 俺の能力も、そしてエイラの感覚も人の気配を感じ取っている。

 さらに言うならシンクロした風、寒さに反例するように、人の温かい息が混ざっている。

 

 「なぜ隠れる……」

 「恥ずかしいのではないか?」

 「それはないだろ」


 真昼間から隠れる。

 必ずなにかしら理由があるはずだ。

 今この状況に結びつくのは――


 1つ、俺たちという流れ者が訪れたから。

 2つ、町の行事か儀式をしている。

 3つ、1つ目に似てるが、外敵への回避行動。


 パッと思いつくのはこれぐらいか。

 出来ることならハッピーエンド的な意味も込めて、2つめの『町の行事で家に籠る』とかにして欲しい。

 流石にそれは無い気がするが、これ以上のトラブル面倒ごとは避けたい。


 避けたいんだが、どうやら、そういうわけにもいかないようだ――


 「3つ目だったか……」

 「ん?」

 「――西方向、後ろからモンスター接近、感じる限りじゃおそらく『魔族』だ」

 「ほう、 魔族か」

 「隠れているのは、アイツらの接近に気づいたからってことか……」


 感じたのは魔族の気配。

 モンスターではない、それより更に、更に格上の生物。

 魔族は、人の能力と似た能力、『魔法』という力を持っている。

 身体能力も人の比じゃない。

 知能もついてきてまさに強敵だ。


 (普通の能力者じゃ話にならないだろう。ただ相手が悪かったな――)


 背中についた翼を広げヤツらは近づいてくる。

 数は、5体か。

 十分応戦できる人数、中に貴族級が混ざってると面白くなるだろうが————


 「――エイラ、準備」

 「――いつでも戦闘可能だ」


 距離が詰まり、魔族のハッキリとした姿が確認できる。

 黒い翼に、黒い長尾、頭上鈍色の2本角、体形はヒト型。

 

 (爬虫類にも似たパーツ、いやドラゴン系の類か……)


 「――なんだ貴様ら」

 

 5体いる魔族の中央、最先に立っている男から声が発せられる。

 嫌悪を含んだ口調、人を見下した目をしている。


 「俺たちは、旅人だ」

 「……旅だと? この辺りは寒冷、人が生きていける環境ではあるまい」

 「デルカ、きっとこいつらは嘘をついている」

 

 確かにこの時期に旅するバカはいないよな。

 正論。 

 それと最初に喋った男はデルタという名らしい。

 横にいた仲間がそう呼んだ。


 「きっと政府から派遣されてきたのだ」

 「そういうことか、懲りずに再び来たというわけか」

 「……再び?」

 「ふ、貴様たちの仲間はすでに主の供物となったがな」

 

 話をザッと整理すると、この魔族を倒すために、ロシア政府が能力者を派遣したんだろう。

 だがあえなく負け、防衛は失敗。

 それからはコイツらの好き放題ってとこか。


 「所詮人間。我らの敵ではない」

 「しょせん、ね……」

 「無駄な時間を過ごす必要もない。殺れ――」


 デルタという男の指示で動きだす、左右にいた4人。

 動き単調。移動方向を見るにまずはエイラ狙いってとこか。

 

 5人とも身体パーツに違いはない、爬虫類系、同じ種族。

 態度も相成っての勝手な予想だが、コイツら魔族の中でも上位層の――


 「さあ! 我らドラゴンの威に砕け散れ!」


 ――やっぱドラゴン族か。

 『炎』に特化した魔族で、 その炎の魔法はすべてを灰と化す。

 

 だがそれも、相手が弱かったらの話だけど――


 「――――強化ミラータ


 エイラの能力が瞬時に発動する。

 応戦態勢。

 そして、消える。

 強化されたエイラのスピードは魔族だろうと雑魚では見えぬまい。


 「……き、消えただと?」

 「どこにいった!?」

 「っは、どうせ逃げたのだ。変更まずは男の方から殺すぞ」

 

 エイラを見失ったから、魔法を中途半端な状態で止めちゃって、止めるひまあったらすぐ俺に打てばいいモノを。

 はあ、バカバカバカバカ、バカばっか。

 お前ら後ろだよ――


 「―――ーまずは私だろうに!」

 「な、うし――」


 斬。

 轟。

 破。


 「ア、アルバ!」

 「一体、どこから……!」

 

 ひと斬りだ。

 エイラの斬撃でアルバという男は死んだ。

 斬れ口は真っ二つ。言葉通り、腹を右から左へ引き裂いた。

 その圧倒的な力と剣で。 


 大量の血液が流れる。

 赤い血が雪を染めていく。


 「っく! よくも!」

 「今度は俺のこと忘れてるぞ」

 「し、しまっ……」

 「————シンクロ」


 シンクロするのは『大気』

 この大気同調、普段は索敵や体温を調節するために使う。

 ようは支援、後方型。

 ただ、こういう使い方もできる。


 「か……顔が、捻じれ……て………」

 「風よ、殺せ」

 

 大気は風を含む。

 俺の操作した風は敵の頭をあり得ない方向へと捩じる。

 いわゆる『雑巾しぼり』

 小学生の時、腕とかでやらなかっただろうか?

 あれをすんごい強い力で行う、頭バージョンというわけだ。


 魔族の顔は風力に耐えることができず、擦りつぶされる。

 ミンチ状態。

 頭を潰して死なない奴もいるらしいが、ドラゴン族にそんな属性あるまい。


 「エイラ、あとの敵は――」

 「終わったぞ」

 「……相変わらず早いな」

 「弱すぎるのだ」


 敵の動きもチャンチャラ、呆気ないオチだ。

 いつものことっちゃいつものことだけど。


 (これじゃイエティと戦ってるときと変わらないな……)


 相手が5人だけあって、少し小隊戦を意識出来るかと思ったけど、すぐに戦いは終わった。


 「話聞くためにも、リーダーっぽい奴は残しときゃよかったのに」

 「気付いたら死んでたぞ」

 「エイラすぐ周り見失うからな」

 「ユウは見えていた。安心してくれ」

 「……はいはい」


 何度かこうして一緒に戦うがエイラが圧倒的過ぎて。

 イエティも魔族も瞬殺だし。

 

 (俺を意識出来てるだけでも進歩した方かー……)


 初めのころは俺も斬られそうだったし、だいぶマシになった。

 少しずつ連携?っぽいこともできるようになった、気がする。


 ――――ん


 「……これを、止めるか」

 「ぬ! 死んだリーダー的なやつ!!」

 「まだ生きてたのか」


 5人の死体と思っていたが、リーダー的なやつ、デルタて言ったか?

 即死のケガだが、さすが魔族タフな身体してる。

 

 そして死んだフリしてたこいつは、俺たちに炎の不意打ちを仕掛けた。

 なかなかいいタイミングだったけど。


 「……なぜ我が炎が動かん」

 「相手が悪かったな」

 

 魔法といえど俺のシンクロ対象の例外ではない。

 操作することなど容易。


 「折角だ。お前らこの町で何をしてるんだ?」

 「……」

 「ユウ、こういうときは拷問か?」

 「やったことあるのか?」

 「ない」

 「ならやめとけ。たぶん加減ミスって一発で殺すだろお前」

 

 エイラは手加減するの無理だろうに。


 「――貴様ら、一体何者だ?」

 「言ってるだろ、俺たちは旅人だ」

 「……旅人がこんなに強いわけもないだろうに」

 「私たちは魔王を討伐しに来たのだ!!」

 

 いや言っちゃうんかい。

 せっかく旅旅で通してたのに。


 「……魔王討伐だと? ……たった2人でか?」

 「そうだ!」 

 「……それこそ嘘というものだ」

 「事実だ魔族。俺たちは吸血王を殺しに行く」

 「極東の魔王ヴァンダル、そちらか……」


 (そちら? 引っかかる言葉だな)


 そういやこいつらの『王』はいるのか?

 それともハグレで属してないか。

 どちらにせよ数少ないドラゴンの魔王に遭遇するなんてあり得ないか。


 「それで一体目的は――」

 「ユウ、死んだぞ」

 「え! タイミング悪すぎだろ!!」 

 「仕方あるまい。あの傷では……」

 「お前がやったんだけどな」


 目的は聞きそれびれたが、まあ被害者であろう町の人間に聞けばわかることだ。

 それよりもドラゴンの魔王、一言もそんなことは言わなかったが、さすがに出会うことはないか。

 

 「しかし手応えがない相手だった」

 「まあな」

 「もっと強いのと戦いたいぞ!」 


 そんなら吸血王行く前にホントにドラゴン族の魔王探してこいや。


 「それとユウ、町の人間が出てきたぞ」

 「そうか」


 コッソリとみていたのか、戦いが終わり少しずつ人の影が増えていく。

 さてさて、どんな事情があるんだか。


 「――ユウ、そういえば」

 「――どうした?」


 急に真剣な表情。

 なにかあったのか?

 と少し前までは感じたが――


 「「お腹空いた」」

 

 「だろ?」

 「そうだ」

 「まずは飯だな――」


 町に着いたことだし、ちゃんとした食事があるだろう。

 とりあえず、イエティ肉はもうコリゴリだ。


 




 

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