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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 10 -The Last Battle 《脳筋は拳で語る》-
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 明日には明日の風が吹く。

 風にまつわるそんな(ことわざ)、そして俺たちが打ち出した真風。

 光が舞い、炎が躍り、あらゆる能力と武器が狂喜乱舞した。

 5人だけだった面子も、ユリア先輩、アーサー、ベリンダも加わり8人体制に。

 何時もみたいに『気合』で押し切れると誰もが思っていた。

 しかし現実は甘くない、風は絶対の前に断たれる、結果から言えば俺たちはもう崖っぷちギリギリの所まで追いやられていた。


 「こりゃ本当に負け試合だったかねえ……」

 「冗談は、いや冗談でもないな」

 「そうだなって、次くるぞ!」


 もう追いつけないスピード、裁定者は宇宙級、文字通りスターダストとなって襲い掛かる。

 皆の振り絞って力を使う。

 相手交えて9人が交差、相手はたった1体、だが攻撃は強くヒットしない。

 これだけの面子、流石にダメージや傷は与えている。

 ただ倒すまでには、むしろスタミナ切れでこっちがやられている始末。


 「裁定」

 「っが!」


 気付けばクラークが吹っ飛ぶ。

 まるでゴム製の人形みたいに、既に限界も限界。

 クラークだけじゃない、全員が全員平等(・・)に叩きのめされる。


 (秘密の箱(パンドラ・ボックス)を決めるのは今じゃない……!)


 ここで苦し紛れの一発を出したところで勝利は掴みとれないだろう。

 俺たち的にも苦しすぎる展開、王道も何もあったもんじゃない。

 この戦いを見ている全ての者たち、きっと一連の戦いを泥試合のように思えているんじゃないか?

 グダグダと長く、やられっぱなしで爽快感が味わえない。

 そろそろ最後、最期に負の連鎖を断つような烈火のシーンを生み出してやらねば。

 

 『ユウ! 砲台の方の魔力充填が終わったわ!』

 「ようやく……!」

 

 折れた肋骨が臓器に刺さる、露骨なまでのタコ殴り。

 顔面はガードしていても首からしたはズタボロだ。

 だが————


 (エイラ! 砲台の準備が終わったぞ!)

 (真聖剣も準備万端だ!)

 (なら……)

 (うむ! 最後の作戦(・・・・・)を始めよう!)


 脳筋と世界に言われながらも、少ない脳みそで精一杯考えてきた。

 俺とエイラが気を引き締めたことが自然と伝わる。

 言葉もアイコンタクトも不必要なくらいの連携練度、というより絆の深さ。

 本当にこれが最後の策になる、破られたら文字通りエンド。

 

 「クラーク! アーサー! ユリア!」

 「「「ああ!」」」 


 団体より抜きんでる3人の姿。

 鋼の大地を疾風怒濤の勢いで、裁定者に立ち向かっていく。

 三面囲いで叩き込む、叩き込んでいく。


 「エイラ! 行くぞ!」

 「任せてくれ!」


 目の前に高すぎる壁があるとする。

 乗り越えるのはほぼ不可能、ならどうするか。

 地面を掘るか、はたまた翼を生やして何処までも飛ぶか、俺たちだったら————


 「拳で、語る!」

 

 初めから察してはいた、裁定者の攻略はたった1つしかないと。

 封印する術は無し、その身に魔法も異能も殆ど通じない。

 ならば極大まで威力に振った物理攻撃ならどうか。 

 むしろそれしか道は残されていない、人類最強の剛力の持ち主エイラ・X・フォードの剣にしか活路は見出せない。


 「クラーク達が最後の時間稼ぎをしていてくれる、今が絶好の機会だ」

 『魔力充填、及び変換に際しての過程も一発で飛ばせるわ』

 『無駄な放出も我が遮断しようぞ!』

 「それじゃエイラ頼む!」

 「ようやくだ!」


 ベリンダが創り出した鋼のフィールドには幾つも廃船がそこらじゅうに転がっている。

 ただフェーズ1からずっとそこには魂を吹き込んでいた。

 しかも1隻2隻じゃない。

 少しずつ、泥臭くダサい戦いをしてようやっと描く。

 魔力を孕んだ貯蓄庫艦が配置さ導き出すのは五芒星の形状、魔法における頂きの陣、やってきたことは全て意味がある。

 

 「————聖剣、解放」


 中心にてエイラが聖剣を天高く掲げる。

 太陽の真下、光神より賜りし武具が真の日の出を浴びる。

 そしてそこには魔が混じっていく。

 俺を媒介に隠してきた貯蓄から一気に魔力を引っ張り出し聖剣へとリンクさせる。


 「真なる輝きをこの手に!」


 師匠からの直経由は出来ないからこんな回りくどいつなぎ方に。

 ただあと数十秒あれば魔力を完璧に移動させることが、そして史上最強の聖剣が完成す————


 (っやばい!)


 同調が捉える空間の歪み。

 一撃振るう寸前、なんとエイラの目の前に裁定者が瞬間移動して現れる。

 皆が、特にヨーゼフが鎖で止めているはずだった。

 だがおそらく次元ごと割った、一気に距離をゼロにしたんだ。


 「っしま……!」

 「消えろ、聖剣使い」


 このままいけばエイラの胴体ど真ん中に剣が刺さる。

 裁定者の得物は大剣、マトモに真っすぐ喰ければ神だろうと死に至る。

 移行処理で反応が遅れた師匠とレネ、だが幸運なことに、俺だけは誰よりも早く気付くことが出来た。

 

 (俺はエイラを————)


 同調という力を持てたこと、俺は神と両親に感謝する。

 かけがいのない相棒のピンチ、この身は一番に反応することが出来たのだから。

 剣を掲げたまま硬直するエイラを横から強く押す。

 そんな泣きそうな表情はするなって。

 お前が死んじゃ人類の敗北だ、それを抜きにしても俺はお前を失いたくなんてくないんだから。


 (これは流石に死んだなあ)

 

 五臓六腑全てを貫く裁定の剣を代わりに受ける。

 肉が吹き飛び、血が舞う、痛みを越えた何かが身体を襲う。

 エイラの命を救うため、俺は己が命を差し出した。


 

次の投稿日を変更します。

10/13(金) → 10/15(日)

更新時間は当日の22時から24時頃、万が一1分でも日を跨いでしまうようなら、活動報告にすぐ進捗状況を記載します。


『聖剣を使う美少女(脳筋)が相棒です』は10/15(日)の投稿をもって完結します。

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