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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 10 -The Last Battle 《脳筋は拳で語る》-
182/188

146.5 with Shaken off the meter

 裁定者たちとの戦闘は最高潮へと。

 あらゆる所に剣や異能が飛び交い、一瞬の油断でも命を落とす極限状態の空間。

 言い訳のようだが自分は巫女姫、他の人たちのような攻撃手管は持ち合わせていない。

 李さんやスサノオの助けがなければ今頃首は飛んでいるはずだ。

 だが、こと解析においてはこの集団で随一の腕だと自負している。


 『こいつはやべーな!』

 「はい、パターンからして地球のものではありません」

 

 細心の注意を払いながら『柱』の解析を行う。

 現時点で分かったのは地球外物質、謎の硬度を持つ素材で出来ていること。

 どんな兵器や能力を用いても、残念ながら破壊することは叶いそうにない。

 ただ少しずつだが、この物体の構造なり構築式が見え始める。


 「物理的な破壊はまず無理でしょう、しかし————」

 『内側からの干渉は出来るな』

 「ええ。内部から操作して機能を止めます」

 『つっても、その方法でも可能性は1パーセント以下だぜ姫さんよ?』

 

 スサノオを介して解析をしている。

 彼が苦い顔をするのも仕方ない。

 いくら内からでもそう易々と動かせるほど、これは簡単に創られていないのだ。

 唯一の道というだけで、成功する確率は0に近しい。

 少なくともこの状況で具体的にどう内部を弄ればいいのか、まったく見えていない状況だ。


 「問題は、ありません」

 『というと?』

 「気合いで行きます!」

 『……な』

 「これでも最強の脳筋の一員ですから」


 皆さんは私より最前線、命をギリギリまで削って戦っていてくれる。

 ここまでしてもらって、私が投げだすことなんて絶対にあり得ない。

 根拠のない自信だが、私は自分自身を誰よりも信じている。

 やり遂げて見せる、これが自分に託された一番の仕事なのだ。


 「今日は神力を使い切ります!」

 『余力を残して万が一に備えるのがポリシーじゃなかったか?』 

 「今がその万が一です」


 冷静な思考を保つべき場面、私がこのチームの理性でなければいけない。

 だけど相反するように、身体の芯は熱く滾っていく。

 これは一筆書きのストーリー、失敗は滅亡へと直結する。

 だが鋼鉄と化したメンタル、即決で可能だと宣言を。

 回転する右脳左脳、右往左往(うおうさおう)する間もなく目前に当たる。


 「まずは基盤の制御からです! 神界へのアクセスを————」

 『……』

 「スサノオ?」


 回想に浸ったり、頭の中で御託を並べている場合ではない。

 この手にはメスは、既に腹の肉は裂き本番に突入している。

 

 『ようやく本性が出てきたな、姫』

 「なんですか今更?」

 『昔はもっと堅苦しかったんだよ。自分の表情にも気付いてねえだろ』

 「はい?」

 『口元、笑ってるぜ』

 「————え」


 スサノオから言われて初めて気づく。

 確かに私は笑っていた。

 それも華やかな笑い方じゃない、欲望に塗れた下衆の仕方。

 口角は急角度の三日月を描き、心臓は興奮しているかのように高鳴っている。

 渦巻く感情は緊張じゃない。

 私はこの危機的状況、圧倒的な逆境を楽しんでいるんだ。

 地球の存亡が掛かっている、笑みを浮かべて良い場面ではないはずなのに。


 「……」

 『アイツらに毒されすぎたな』

 「私は、皆さんと出会えて良かったと思っています」

 『そうかい』


 スサノオのよく分からない話を聞きながらも、能力は柱を侵していく。

 この無理難題を解いた時、きっと想像を絶する達成感を味わえるはずなのだ。

 しかして気付く、確かに私は人類のため、仲間たちのために挑もうとしている。

 だが最もな理由は自分自身のためで間違いない。

 だって死にたくない、だって成功という快楽を味わいたい、だって周りから誉め称えられたい。


 「っふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふ」

 『姫……』

 「私は、私は! 誰よりも名誉が欲しい!」

 『……』


 私を汚い人間というか? それで結構。

 私は巫女姫に相応しくない? それで結構。

 私が清楚系美少女? それは周りが勝手に言っているだけでしょう。

 刮目(かつもく)すべき、これが自己顕示欲の体現者、私という人間だ。


 「さあスサノオ! 私のためだけ(・・・・・・)に力を貸しなさい!」

 『はあ、あの大和撫子はどこに行ったのか、おじさん悲しいぜ』

 「陳腐ちんぷ御託ごたくはいいんですよ!」


 幼い頃から分かっていた、だけど気付かないフリをしていた。

 スサノオは星之宮 伊吹という人間の本質を理解していたのだろう。

 そしてようやく自分も認める。

 自分は外面ばかりで、内には歪な闇を抱えていると。

 なにせ何時まで経っても口は三日月を、糸で縫われたように固定されている。

 これを達成した時に得られる周りからの称賛、その快楽感を想像すれば笑わずにはいられない。


 『ま、俺はどっちの姫も好きだけどな』

 「この状況でまだ言います? いい加減クドイです。スサノオって馬鹿なんですか?』

 『ったく、真の馬鹿はお前さんの方だよ』

 「ふふふ、まあフォードさんたちには敵いませんけど」


 綺麗ごとは上から下まで取っ払う。

 隠してきた本能を鮮明に全面に。

 障害も策略も結局のところは私の踏み台に。

 さあ難攻不落の柱たち、その存在を必ずや名誉のいしずえに変えてあげましょう。

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