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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 10 -The Last Battle 《脳筋は拳で語る》-
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 「————デカいの来るぞ!」

 「————俺に任せろ!」


 一列に仁王立、これはスポーツじゃなくて死合い。

 だから対峙した瞬間、裁定者から大規模攻撃がくるのも道理。

 呼称は不明、とりあえず無数のエネルギー弾的なのが襲い掛かってくるのは確か。

 だがこちらとて懐に特大の手榴弾、これを対処するのはクラークだけで十分だ。


 「エクスプロミッサアアアアアアアアアア!」

 

 歩く核弾頭が一歩前へ、その剛腕を赤い輝きと共に振るう。

 すると迫りくる真白き放射線上に、十字を刻む爆裂が炸裂。

 烈風を生む、平等を喰らう異端の猛烈なパワー、秒で攻撃を相殺する。

 鋼の陸に一発目の衝突が起こる。


 「歴史再現ページワン! 全砲門一声掃射(フル・ファイヤ)!」


 間髪入れずにベリンダがカウンターとなる追撃を。

 時空を割け無限にして無敵を象った大砲が放たれる。

 鉛玉より何倍も強力、違法改造した再現能力が際限なく閃光を生む。

 

 「……武器創造」

 「Ⅲ・(フライ)

 「強化ミラータ!」

 

 ただ砲撃の合間から感じる気の鋭さ、奴等は健在。

 こっちも特攻組がいよいよ剣を、翼を、力を滾らせる。

 戦況的には似非裁定者2体削って8対10の俺たちに有利な場面。

 反面よくあるような油断して、テンプレみたいな負けフラグは建てさせないつもり。

 多勢だが無勢じゃない、常に捨て身、命を懸けて首を落としに行く。


 「「「勝負!」」」

 

 すぐさまエイラたちが仕掛けに。

 フライングを取る必要はない、元々ラインなんてものはないのだから。

 そして裁定者たちのすぐ後ろには柱が、守っているつもりか向こうは動けない。

 分かりやすいことで、ならその状態を崩してやる。


 (ユウ! ビームっぽいの対処してくれ!)

 (了解)


 強化同調を通じてエイラからリクエストが。

 そんなことを言われるまでもない。

 既に敵から追追撃が放たれる、これを掻い潜らなくては拳での戦いに持っていけない。

 しかし、シルヴィとアイコンタクトは数秒前に。

 解決策は手中、突っ込んだ3人で前衛組は終了?

 いやいや俺たち全員が主役、拳は両の手合わせて20、すぐに俺たちも行くさ。


 「6秒後の世界に飛ばすぞ!」

 「おう!」 

 「四次元方向フォーディメンショナル、発動!」


 近接戦を起こす前に、邪魔な外発攻撃は片付ける。

 シルヴィは『方向』の能力を最大展開。

 見えないマス目が大地に広がるよう。

 そして俺たちはそんな方向世界にライドオン、目指すは最後の門。

 これで時空を超える、移動するはずだった過程6秒間(・・・・・)をスキップする。

 場面が一瞬にして切り換え、空いた距離を一気に詰める。

 そこは苛烈を極める戦火の真っただ中だ。


 「時を縛れ! チェーン!」

 

 遠距離にいた連中、まとめてシルヴィによって投げ込まれる。

 現場が渦中で超スピードを体感、光速の銃弾がすぐ横を通り過ぎるみたい。

 迫りくる似非レ―ザーを避け、いや、叩き落とす。

 肝を冷やすどころか、熱く燃えてくる。

 そして物理的に無理な対処も時間を縛るヨーゼフが可能に。

 これがノンフィクションのミスターインポッシブル、ドイツの狂化男の娘が主演を決める。


 「なら俺は————」


 コンマ数秒、ヨーゼフが止めたタイミングに同調(シンクロ)を展開する。

 バッシング、あらゆる力は決して俺から逃れられない。

 把握する仕方やり方、ミラーみたいに反射、味方に当てずに全てお返しする。

 灯った信号は全部赤色、だけど信号があるならここは道で間違いない。

 気にせず真っすぐ進めばいい、ダメなのは途中で曲がることだ。


 「これが今までの魔法の集大成! 日輪廻る九惑星ナイン・ドライブ・サンティカル!」


 染み込んだ魔法の基礎、魔力が声に応えてくれる。

 炎、水、風、土、雷、氷、光、闇、無、あらゆる属性をありったけ叩き込む。

 今日は魔力が尽きてもいい、その代わり手には魔法の種を溢れんばかりに持つ。

 影が影を成す間もなく移動して強制発芽、この身に潜った師匠からの魔力提供も相成って凄まじい連撃に。

 魔法のオンパレード、走る魔弾は大気と擦れ合い火花を生む。

 関係なくなる摩擦係数、必殺命中、打ち込む弾丸はストロング。


 「魔法が届くまでの過程を飛ばす! 流転スキップ!」

 

 潜ったレネから神眼開眼、祈願せずに起こす神がかり。

 脳はフル稼働、エイミングもタイミングも正確無比。

 俺が捉えてすぐにシルヴィが過程を飛ばし、敵への時間的距離を縮めてくれる。

 ただ—————


 「裁定」


 裁定者本体による剣の一振り。

 それだけで魔弾も砲撃も捻じ伏せられる。

 相変わらず凄まじいパワー、無機質な表情も何も語らず。

 確かに語ってはいない、されど勝ったとも、奴から前ほどの余裕を感じ得ない。

 それもそのはず、叩き落としたはいいがその目前にはアイツが迫っているのだから。


 「聖剣カリヴァーン!」

 「裁定、する」


 激動激突、クールぶる相手にひたすらホットなエイラの殴り込み。

 聖剣が裁定者の両手剣と遂に鍔競り合う。

 強化同調からはひたすらに強化の詠唱が聞こえてくる。

 狂うほどにエイラはその身に数百数千と強さを重ねていく。

 

 「はっはっは! とてつもないパワーだ!」

 「……」


 激しく打ち合う、剣を片手にエイラと裁定者が躍る、されど進まず。

 拮抗しているのだ、両者一歩も引かない。

 高速下で異次元のバトル、さとる天才、優秀な凡人を置いていく極みの世界だ。

 ただ似非裁定者も黙っているわけじゃない。

 本体に促されるように加担、2体が死角からエイラを狙いに行くが————


 「……私が相手」

 「忘れてもらっては困る!」


 ユリア先輩とアーサーがすかさずフォロー。

 エイラの大雑把プレー、ボロが出ても仲間が拾う。

 他の数体の似非裁定者についても同様。


 「今日はどれだけ爆破しても許されるからな!」

 「仕事は早く終わらせる」

 「祖国に恥ずかしい姿は見せられないよ」

 「まだまだ砲弾はあるからねえ!」


 各々のスタイルで勝負をかけに。

 俺の目の前にも裁定者と似たような顔の奴が立ちふさがる。

 感じる気は本体程じゃないにしても圧倒的なオーラ。

 似非だ似非だと揶揄してはいたが、普通に反則級の強さを持っているように感じる。


 「走れ銀刀!」

 「裁定」


 生み出した神刀が此処に舞う。

 銀風が吹き抜け、鋼の大地に彩りを持たせる。

 体内においてレネとは同調済み、奴等と渡り合うまでに昇華してある。

 ただこれは1対1、サシの勝負じゃない。

 

 「後転バック!」

 

 入り乱れる多数戦。

 隙を見ては敵という敵と襲いに行く。

 今も瞬間の合間を縫ってシルヴィの方向能力が作用。

 裁定者の動きが数秒前に巻き戻しされ、隙が生まれる。

 そこに刀は入るもののだいぶ浅い、向こうの対処も相当の速さだ。


 「一発大きいの行くぞ! エクス————」

 「っおい!」

 「ダメだ聞いてない!」

 「プロオオオジョオオオオオオオオオオオオオン!」


 団体戦だけあってこういうことも。

 クラークの大爆破は仲間のスキルを信じきった行動。

 なんとかして全員がそれに合わせる。

 

 「「「裁定」」」 


 敵も1体というわけではない。

 油断を見せれば複数の刃が飛んでくる。

 その中でも一番の山場を背負ったのがエイラだ。

 間を見ては裁定者本体に俺たちも攻撃を仕掛けるが、いかせん奴が強すぎる。

 そんな絶対の相手をエイラがメインで請け負っている。


 (といってもアイツは笑ってるけど)


 「ほらほらもっとだ! もっと私は強くなる! はーっはっはっは!」


 もはや戦神まで到達したと思えるほどの狂気。

 凶器と化した聖剣片手に勢いよく、剣以外にも拳、脚、頭突きなど、本能に従い攻めていく。

 同調を介して流れる情報もだいぶバグってるし。


 「裁定」

 「別に忘れてねーよ!」


 これが感情ある相手だったら、『戦闘中に考え事とは余裕だな』なんて台詞を言われそう。

 一度は言われてみたいもんだ。

 だが相手は造り物、片言でも一言二言喋すだけまだマシだ。

 お礼に技もマシマシで返してやる、マシーンみたいなお前たちには勿体ないくらい。

 だが抜かりなし、一度痛い目を見ているからこそ。

 あの時首はギリギリまで斬り裂かれた、だが骨までは断たれちゃいない。

 芯はぶっとく、今度は相手の脳天をふっ飛ばす。


 (あとは————)


 乱闘とも呼べる展開、今までだったらひたすらに殴打するだけだった。

 しかし脳筋の中にも理性がある者も確かに。

 上げるとするなら星之宮、そして李である。

 裁定者たちに比べて有利な状況、なら策略を巡らせてもっと優位に立とうじゃないか。

 

 (科学が測れなかった謎の柱、だが神をもってすれば————)


 奴等がマントルまで差し込んだ柱9本。

 もともと星之宮は回復役、李も近接戦向きではない能力だ。

 戦いに参加しつつも星之宮はスサノオを用い、バレない範囲で柱の解析を。

 李の役割はその護衛に近しい。

 俺たちは何も考え無しで挑みに来たわけではない。

 諸葛孔明より暴力的ではある、しかし人とは考える生き物だ。

 殴って沈めるもアリ、ただあり得ない事態に備えあらゆる手を回す。

 どんな種族よりしぶとく、ずる賢く、それでいて欲深い、これが————


 「人間ってやつなんだよ!」


 

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