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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 10 -The Last Battle 《脳筋は拳で語る》-
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 『————全員応答しろ』 


 時刻は6時を手前に。

 水平線上に真っ赤な太陽が昇る頃。

 耳に付けたインカムから隊長たるエイラから最後の確認が。


 『いよいよ裁定者を目視出来る距離に入る』

 『制空圏の交わりか』

 『ようやくだな』

 『初めはレーザーによる攻撃が予想されるが————』

 「任せてくれ」

 『頼むぞユウ』


 空中を航海するのは数百の巨大戦艦隊だ。

 その中に紛れる俺たち10人10隻。

 身体の調整も完璧に仕上げている。

 最高のコンデイション、カウンターの機会を覗う。


 (俺がミスったら全部終わりだからな)


 この後には幾つか策はあるものの、全てはここから。

 先頭を引き受けたからにはキッチリ決める。

 

 『ユウのカウンターが決まり次第、私たちも突撃だ』

 『さて変幻はどこまでやってくれるかね』

 『……期待』

 『まあ軽く3、4体は屠ってくれるだろうよ』

 「プレッシャー掛けるの止めてくれ」


 口にはそう出すが、ぶっちゃけ緊張は無い。

 なにせ友人たちの想いを聞いたから、背負ったから。

 既に魂に着火、静かに、だが激しく燻っている。

 

 「師匠、隠蔽頼みましたよ」

 「ええ」

 「レネもよろしく」

 「おうとも!」


 数多ある戦艦の中、俺が搭乗した艦は一番先頭に位置する。

 当然といえば当然。

 なにせ相手の一番槍を真向から返すつもり。

 隠れていては戦いにならない。


 『そんじゃあ陣形も変えてくよ!』


 ベリンダの命令が通り、艦隊たちはフォーメーションチェンジ。

 俺の背後には人を乗せた艦が集まり出す。

 これより後ろは絶対不可侵の領域に。

 つまりは一番の安全圏、ただ寄りすぎてもバラけた意味がないので程々に。

 そしてオリンポスの神々も慄く、不可視の盾が発動する。

 

 「ん?」

 

 本番を目前に一定を刻む電子音が。

 この状況で連絡とは、またトニーからと思いつつ、内容を確認する。

 果たして誰から、どんなことかと。


 「っふふ」

 「どうしたんじゃユウ?」

 「姫様からだ」

 「へえ、間に合ったの」

 「いや、もう少しかかるらしい」


 差出人は自由国のお姫様から。

 これも策の1つ、到着はギリギリになりそうだとか。

 ただ来てくれるだけでも有難い。

 感謝をしつつ、もう携帯の電源は落とす。


 『マイクチェック、マイクチェック、ヨンミチ様聞こえますでしょうか?』

 「聞こえます」

 『こちら国連本部観測室。作戦通り、これから————』

 「説明は要らないです。分かってるので」

 『了解しました。観測次第報告します』


 インカムには最強の脳筋アルティメット・パワーズ以外の声も。

 それは女の人の声、正体は国連の観測班だ。

 似非裁定者が放つレーザーは莫大な熱を持っている。

 あまりに巨大なエネルギー、観測する分には容易だ。

 向こうが発射準備に入った途端、俺に連絡がくる仕組み。

 そこがカウンターを合わせる最初で最後のタイミングになる。


 (そこまで熱いんなら体感で分かりそうなもんだけど、レネや師匠もいるし)


 師匠たちもそれぞれの能力を持って監視態勢に入っている。

 ただ科学が信用できるのも確か。

 保険があるに越したことはない。

 

 『さあ、時は来たぞ』

 『『『『『おう』』』』』


 剣は抜き、槍を創り、盾を構え、砲台は彼方を向く。

 髄にまで行き渡らせる能力の真髄。

 そして小さく、小さくだが、海に刺さる物体が見え始める。

 あれが裁定者たちが創り出した『柱』というやつだろう。


 (ルーン起動、神力チューニング、魔方陣固定)

 

 左半身に浮かび上がらせる刻印(ルーン)の形。

 そこを起点とし魔力、神力、魔風の形成を始める。

 臨界点のギリギリまで、最後はシンクロで包み込むように。


 『————超巨大な熱源を確認! 裁定者が迎撃態勢に入りました!』

 

 言われなくても気付くレベル。

 突然とてつもない熱風が来る。

 突風は身体を吹き抜け空に舞う、向こうが力をガンガン溜めているのを一瞬で察す。

 

 (だからって負ける更々無いけど……!)


 この身に熱気、でも剥がれるようなメッキは無い。

 俺の魂は一点物、マグマでも溶かせない最硬度のハート、あと脳筋でコーティング済みだ。

 意識をこれでもかと研ぎ澄ます。

 緊張の先、侵攻を打破、心情を具現化、己が真骨頂を今ここに。


 『っ熱レーザー来ます!』

 

 大気の震えを感じる、燃やされているのだ。

 眼には見えない絶対の攻撃が奴等から放たれる。

 インカムに音が届いた時には既に目前にまで迫るよう。

 それぐらいのハイスピード感。


 「疑似擬態魔法(エルザ・エフェクト)!」


 ただ遅れは取らない、師匠がこの空間一体に隠蔽の魔法を。

 これでこの一発に限り、箱は透明となるわけだ。

 ただ対するレーザーは圧倒的な威力、圧倒的なスピード、全てが一瞬で融解されるレべル。

  

 (————いくぜ)


 突き出す両手、刻印が眩しいほどの輝きを。

 かの女神の名を冠す、俺にとっての最高傑作がここに。

 これが人類最強、支配系能力者の頂。


 「禁じられた鍵を今こそ、森羅万象冥府に送る」


 歯車は噛み合い神域へ、紡いだ幾多の力が導き出す。

 天変地異、勝者と敗者を一撃で逆転、これは反転の現象を。

 突き出した両手を握り込む、それは完成を意味する。

 迫った力を全て返す、その全貌をついに現世へと。


 「開け! 秘密の箱(パンドラ・ボックス)————!」


 

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