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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 9 -Dream to see on The Eve 《戦前夜に歌響く》-
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 「————そこの料理を取ってくれ」

 「————これいっただき」

 「————な! ぼ、ぼくのだよそれ!」

 「————またヨーゼフが泣いてる」 

 「————美味い! おかわりだ!」

 「————皆さんもう少し静かに食べてください!」


 地獄絵図、ではなく晩餐会、ではなくただの五月蝿い飯会。

 改善点や反省点、新たな着弾点と分析解析、作戦を練っていれば太陽は帰路に。

 せっかくなのでと全員で食事、一流ホテルだけあって出てくるものの質も高い。

 

 (ただこんなガサツに食う連中もいないだろうけど……)


 場所は移り、円卓も食事用に変化。

 白いランチョンマットの上には山積みの料理、満漢全席はグローバル化、和洋中から良く分からないものまで。

 色とりどりの品が眼下に並び立つ。


 「にしても、まさかあんな作戦を思い付くとはな」

 「ん? 普通に、すぐ閃い、たぞ?」

 「口にもの入れながら喋るなよ」

 「流石というより、やはり馬鹿なのだと再確認しました」

 「皆の頭が固すぎるだけだと思うぞ。可笑しなことを言うものだなあ」

 「「「「「可笑しいのはお前の頭だ」」」」」


 もはや溜息も胃に消化、そうかと開き直れないくらいのアイデア。

 ハイエナも思いつかないくらい馬鹿で画期的、それは数時間前にエイラが発案したとある作戦だ。

 そもそも作戦名を聞いて絶句、しかも中身もまあ酷いと誰もが思った。 

 

 (ただ的を比較的捉えているというか、エイラに言われると出来そうな気もするんだよなあ)


 それは周りも同じ。

 曲がりなりにも世界に十数人しかいないSSS級、この部隊の一応長を務める者、即座否定は出来ない。

 噛めば噛むほどバカバカしい味、ザックリとしていて計画の骨組みガタガタ、華々しくもない。

 更々可笑しいと一刀両断、は出来なかった。

 根拠なんてないはずなのに、どうにかなるんじゃないかと思えたのだ。

 想像を超えて奇跡を起こす、偶然さえも必然に、結果オーライ至上主義。

 細かいテコ入れをすれば形は見えてくる。


 「ところで変幻、作戦の要はお前のわけだが……」

 「アレ(・・)だろ? まあ初っ端は何とかする」

 「いやあ頼りになるねえ」

 「いやいやべリンダ、お前も始め相当重要なポジションだろ?」

 「私は何時だって準備万端さ。はーはっはっはっは!」

 「大丈夫かこれ……」

 

 お察し、つまるところ作戦は色々話合った挙句、結局はエイラの案を採用することに。

 もちろん大事な戦い、内容はもっと綿密にする。

 ただ絶対に決まった役割、揺ぎ無いシーンも存在。

 例として、そして最初の難関が初手の攻防、高熱レーザーと仮定したものをどう掻い潜るかだ。

 エイラ曰くそこで要を務めるのは俺、そしてべリンダ・ドレイクである。

 現代海賊は発案者と同じくらい自信満々、俺からしてみれば失敗フラグがバンバン、テンプレ通りのオチが来そうで恐怖へと換算。

 

 (でもべリンダの能力は必須だし、ここまで来たら信じるしかない)


 ナイフは面倒と両手で肉を鷲掴みする彼女を信用、か。

 相棒がバカでなかったら耐性が無くて、嫌だと泣いていたところだ。


 「ユウ、口元にソース付いてるぞ」

 「え————」

 「動くな」

 

 席順は相変わらず、左がヨーゼフ、右がシルヴィだ。

 そこでメイドの癖だとかなんだとか、シルヴィが結構世話を焼いてくる。

 今だって身を乗り出して、口元をハンカチでゴシゴシ。

 有難い話だが中々くるものもある、ただシルヴィは穏やかな表情、要らんと断るのも(はばか)れる。


 「うひょー変幻がメイドさんに甘えてるー」

 「っい、いや、これは……」

 「いいや、ユウは別に甘えていない」

 「し、シルヴィ」

 

 弁明代弁、まさに窮地に降り立つ天使のよう。

 冷やかしはべリンダから。

 姿勢を直しバチっと決める、そうだ言ってやれ。

 

 「これはあくまで自分の意思でやっている」

 「ん? つまりは……」

 「私がユウに甘えたいからこそ世話をする、そういう意味だ」

 「「「「「おおー」」」」」

 

 天使じゃなくて悪魔、あくまで戦う爆撃機、落とす爆弾、派手に着火し発火、誤解は(ほど)くのではなく爆破する。

 ハッとするが時は既に二周遅れ。

 円卓に並ぶ者たちがこれまたいいリアクション。

 冷やかしのべリンダも堂々としたシルヴィに気持ちを一歩引く、がすぐにリザレクション。

 隣にいるエイラへと赤信号を送る。

 

 「やばいエイラ! このままじゃ変幻獲られるぞ!」

 「……」

 「おいおい飯食ってる場合じゃねえ! メイドの奴は本気だ!」

 「……ん、何か言ったか? 食事に夢中で聞いていなかった」


 ただ全員が全員が反応したわけではない。

 俺の相棒、この部隊の隊長殿は食事に一点集中、注意散漫だ。

 だがその姿にもべリンダは憤らず。

 むしろ激励の太鼓を何故か鳴らし始める。


 「私は友! お前の味方だ!」

 「よ、良く分からないが、そうだな。そういうことだ!」

 「「はっはっはっは」」


 もともと俺にその気はないものの、傍からみりゃそう思うわな。

 シルヴィも分かっている、でも敢えて踏み込んできている。

 居いるとしても射る、そういうスタンス、俺が言葉を突き付けるのも躊躇われる。


 (まあ俺が優柔不断、チキンなだけなんだけど……)


 人としてはダメかもしれない。

 だがダメだとしても、今の俺にはどれが最善で最適か分からないのだ。

 お断りのセリフは食べ物と一緒に仕舞っておく。

 その後も、やはりいつも通り騒がしい。

 笑う奴もいれば、無く奴も、叱る奴もいる。

 

 (負けたら終わり、こんな風に過ごすことは出来なくなる、か)


 ただ相手が、少なくとも裁定者が魔王や神より強いってことは分かってる。

 新技探求を急がなくては、策をもっと練らなくては。

 残り多くて3ヵ月、時間ないくせにやることは山積み。


 (人生で一番やらなきゃいけない時、それが今だ)


 あんだけボイコット連発で団結力無かったくせに。

 適当に飯を囲んだだけで、仲良くとは言いすぎかもしれないが、特有の間合いでお互いを理解する。

 視界良好、感度良し、新魔王連合戦以来の良い空気だ。

 

 (これなら最初から飯会にしとけば良かったかもな)

 

 意識向上、この円卓はアーサー王物語すらも超える。

 青にも銀にも赤にも輝く瞳、見据えるは冥土から出でる死よりも絶望的なもの。

 モノクロの世界を核爆発、敵は鎖で縛って祓う。

 神を崇めるも、自分信じて船での大航海も、結局はパワー勝負。

 なにせ戦の申し子、なにせ筋肉が脳ミソ。


 「よし! えいえいおーするぞ!」

 「え?」

 

 急に立ち上がるエイラ、ラララと歌う一本調子。

 調子乗って音頭を取るらしい。

 殆どの連中が、いや、案外やりたそうな顔してるのがそこそこ。

 

 「私たちが勝つ! 絶対勝つ! えいえいおー!」

 「「「「「お、おー!」」」」


 グダグダでマイペース、全然合ってない。

 それでも声は確かに、曖昧は立ち去り、揃うは足並み。

 個人的な敗退も、未来の大敗も糧と消える。

 長いようで短い残された時間、機関は始動、瞳孔はフルオープン。

 感覚的には戦前夜、騒ぎの声が天に響いた。

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