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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 9 -Dream to see on The Eve 《戦前夜に歌響く》-
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 「————これが昨日起こった」


 緊急招集の名目で連絡を受ける。

 指定されるはいつものホテルが会議室だ。

 どうせバックレる奴が出ると思いきや、家の前でゴツイ黒服が複数待ち構えてる始末。

 リアルで死角無し、来たのは刺客の如く威圧を放っていた。

 また他の連中も同じ出迎えを喰らったらしく、久し振りの全員集合が成り立つことに。


 (だけどこの内容なら焦るのも納得だな)


 座る円卓、モニターに映るのは数十秒の短い動画。

 ただそれは数時間を凝縮したかのような濃さ、恐怖と不条理が一気に伝わる。

 太平洋上に展開していた艦隊。

 突如起こる爆発、鉄が飛び、叫びが響き、入り乱れる終わりの連鎖。

 原因は謎の9つの存在、艦隊は困憊(こんぱい)する間もなく盛大に散る。

 

 「変幻、こいつらに見覚えはあるか?」

 「ありません」


 その問いかけは俺だけじゃなく、眼に座すレネと影に沈む師匠にも。

 だが2人とも全く覚え無し。

 裁定者の具体的な倒し方すら思いつかないのに、更なる未知が現れた、遭遇してしまった。


 「今回展開していた艦隊の質も数も、そして司令官も最高クラス、油断は無かった」

 「油断っつーか、想定外過ぎたねえこりゃ」

 「SS級含めS級を一気に消した……」

 「しかも艦に対する攻撃が見えないな。勝手に爆破しているように感じる」

 「分かった! 透明なレーザーとかどうだ!?」

 「どうだって言われてもねえ」


 これまた珍しい光景、無駄話は一切無し、ここにきて皆が真剣に意見を飛ばす。

 考察、そして思考、試行錯誤を仮定として語る。

 ただ必死に撮ったであろう動画、艦隊を沈ませた力の正体は究明できず。

 出来ないのならば打開策の案は進まない。

 プロの手品を初見で見破るようなもの、裁定者に通じている者がいれば少しは分かるかもしれないが————


 「太陽、はどうだ?」

 「「「「「太陽?」」」」」


 沈黙を貫いていた、考える人のポーズから脱却したのはイギリスのアーサー。

 謎の力の原因を太陽と仮定する。


 「艦が爆発する寸前、一瞬だが光が射しているように見えないか?」

 「言われてみれば……」

 「画質荒いし、たまたまじゃない?」

 「しかしだ、どの艦も爆発する寸前、瞬間だが光の筋が伸びているんだ」


 対する疑問は最も、ただ言われて気付く。

 改めて注視、それは筋というには曖昧すぎるもの。

 ただ確かに全てに当てはまる光景だった。 


 「俺は召喚系の能力だ。剣や盾、翼以外に天使(・・)も召喚出来る」

 「それが太陽説と何か関係あるのか?」

 「天使の召喚及び憑依には『天』の力が必要だ」

 「神話体系への接続ってやつか……」

 「私も聖剣使うときは上からパワーが来るぞ!」

 「……接続の過程で太陽の存在は大きい。繋いでる最中に熱で爆発(・・)を起こしそうになるからな」


 正直あまり理解は出来ない。

 ただレネに聞くところ、神や天使と交信する際は神界に意識を向けなければいけない。

 その中で豊穣や戦、聖を司る神は太陽の近くにいるそう。

 どうでもいい話、そして当たり前の話、力を借りる際太陽に近づく、だから若干熱い思いをしなければいけないようだ。

 直契約した俺やアホなエイラには鈍い感覚、憑依を実行するアーサーだからこその意見だ。


 「それにデータを見ると、この海域の磁場が相当乱れている」

 「乱れるのが太陽に関係あるのか?」

 「変化の値が大きすぎる。喰らった艦周辺の海も蒸発のフレアしているようで、この熱量は太陽磁場と同等だ」

 「さ、さっぱり分からんぞ。分かるかユウ?」

 「まあ大体、ようは超熱量の……」

 「レーザーだ」


 打ち出した仮定はソーラー砲。

 それなら当たった人や物が爆発、いや、消滅したことの説明はつく。

 圧倒的な熱量で消し去られた、燃やし尽くされた。

 これは今までで一番シックリは来る、ただ信頼に足るかどうかは別問題だ。

 決めつけてしまえば人間の視野は狭くなる、泣く泣く判断するには尚早。


 「最初は太陽と言ったが、正確には太陽に匹敵する熱量(・・・・・・・・・)、そういう意味だ」

 「ほら! 私の言った通りだ! レーザーだぞレーザー!」

 「はいはい黙っとけ脳筋」

 「そうですね。もしこれが事実なのだとすれば……」


 色彩的には何も見えず、速さは光以上。

 しかも天使との交信で感覚が感じる熱、現実で喰らえば圧倒的熱量で燃やし尽くされることは必然。

 更に戦う際に殆ど感知出来ない、勘で避けるしか術がなくなる。

 そもそも軌道も規模も未知数なのだ。

 しかも相手は裁定者のそっくりさんが9体、もし仮に全員がこの仮称太陽レーザーを使えるとするならば————


 「まあ人類、というか地球の破壊も出来るね」

 「私は押し返せる自信がある!」

 「しかしレーザーの軌道、どこから飛んでくるかも分からんぞ? 速さも光を越えている」

 「気合いだ!」

 「はあ、無茶言わないでよ」

 「それが出来るの脳筋だけ……」


 皆さんの仰る通り、ただ本当にエイラなら根性で何とかしてしまうかも。

 冗談になってない冗談もそこまで。

 派手に陰りが生じたのは他にもある。


 「あと不可思議なのはこの柱だな」

 「海にぶっ刺さっている」

 

 撮影された動画とは別に、その後で確認取ると柱を9本確認。

 ジャスミンの花のよう、つまりは神からの贈り物。

 奇数ながらそれぐらい美しい九角形を結んでいるのだ。


 「神降ろしに若干似ています。おそらく儀式系に似たものかと」

 「不気味だよなあ」

 「これはあれだな、フリーメイ……」

 「それは秘密結社だ」

 「いや形が……」

 「あれは三角形だ」

 「だがこれは、って仕置きは勘弁してく————」


 エイラにお灸を添えて茶番は終了。

 なんせ奴等は隠れてなんかいなく堂々と。

 とうとう目に見えることをやってきた。

 

 「報道規制もそろそろ危ないんじゃないですか?」

 「ああ、フリーの連中も大分動き出している」

 「むしろさっさと言えばいいのに」

 「世界が滅びますってか? 笑えないジョークだ」

 「混乱に乗じてよからぬ事を仕出かす人もいますからね」


 雷槍曰く既に不審な動きもあるよう。

 昨日の出来事は小さいことじゃない、数少ないベルテックス級原子力空母の喪失だ。

 世間に隠し通せるのも時間の問題だろう。


 (もう周りはこの際どうでもいい。問題なのはどう攻撃を掻い潜って、どうあいつらを倒すかってことだ)

 

 ひたすらに強かった裁定者に加え似たような奴らがプラス。

 フラスコ振っても色は変わらず、ラスコーの壁画にも描けない。

 再び流れる三点リーダーの嵐。

 それぞれが脳をフルスロットル、取るに足らない頭を俺も回す。

 仮定を一番の仮定とし対策を巡らせる。

 答えは簡単に出ない、普通はそうだ。

 しかし今いる面子は最強の脳筋、リーダーは最高の脳筋、それらが導き出すものは————


 「っふっふっふ」

 「……何が可笑しい脳筋?」

 「私はな、閃いたぞ!」

 「「「「「————!?」」」」」


 沈黙の中でビックリとクエスチョンマーク。

 悪戦苦闘する俺らがバカみたい、いや、バカはコイツ。

 ドイツの科学力でも解明できないエイラの脳みそが躍動する。

 スルーは不可、エイラに集まる視線、円卓のはずが中心は定まった。

 常識は捨て、方式は逆さ読み、読みを捨てた黄泉を伴ったハイウェイを創り出す。

 

 (この流れ、何度も見たことあるんだよなあ)


 ロシアの赤い悪魔の時然り。

 国際戦の予選然り。

 新魔王連合との戦い然り。

 理解を超えた視界を持ち、そこからの見解を露骨なまでに発露する。

 

 「一応で言っておくが、レーザーらしき何かを掻い潜って、裁定者含む10体を倒すんだぞ?」

 「分かっているとも。抜かりはない」

 

 再確認をするが心配無用と自信満々、簡単とでも言いそうな表情。

 事前に裁定者の強さは表現できる限りでは伝えてある、流石に忘れてはいない様子だ。

 皆が固唾を飲んで言葉を待つ。

 計れず進航、流れる緊張、上がれる心臓、任せる心情。

 溜めに溜めて言うエイラの笑みは本気、笑いは一切含まれない。

 

 「裁定者を倒す究極の作戦、その名も————」


 放たれた命名のそれに一同絶句、聞いても同じ、やはりエイラだけが笑っていた。

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