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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 9 -Dream to see on The Eve 《戦前夜に歌響く》-
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 太平洋上。

 ミッドウェー島が近くに艦隊はいた。

 

 「————以上! 本部からの伝達であります!」

 

 ハツラツとした声が響くのは旗艦が司令塔。

 アメリカ海軍が持つ最大勢力、新世代ベルテックス級原子力空母がここに。

 性能は数十年前のニミッツ級さえも凌駕、文字通りの最強だ。

 現在は国連の指示で監視警戒の任に、裁定者に備え最前線にいる。

 

 「ご苦労だった」

 「はい! 失礼します!」

 

 艦長を務めるのは中年、というには老け気味の男。

 名をアルヴィン・グランド。

 アメリカ海軍の中でも名将と呼ばれ、今回の監視の任につく国連艦隊の長に抜擢された。


 「……複数の熱源反応を確認、か」

 

 伝わったのは本部にいる観測班が観た不可思議な事象についてだ。

 曰く、今丁度見張るポイント付近、一瞬だが何かを捉えたそう。


 「レーダーに反応はあったか?」

 「いえ! 何も捉えていません!」

 「そうだろうな。なにせ目の前に何もない、当たり前だ」


 超強化素材に覆われた司令塔、透明な窓を通して海を観る。

 眼下には戦いを感じさせない、穏やかに揺れる水平線が。

 そこには裁定者どころか、魔族1体とて飛んではいない。

 海獣についても、わざわざ兵器を使うほどの大物は確認できない。

 つまるところ複数の熱源、その原因は分からないのだ。

 

 「あの(・・)観測室が凡ミス……」


 先行、そして後に続く他の艦からも伝達、やはり異常は見られないようだ。

 少し俯き思考する。

 国連の観測員は凄腕で有名、もはや変態と呼べるレベルで。

 仕事はここに居る一流を越えて超一流、無下には出来ない。

 

 「ならば————」


 念のためと、そう次の指示を出そうとした瞬間。

 とてつもない轟音が響き渡る。

 それは爆発、穏やかな海は去り、死海へと。

 真っ赤な戦火が突如として現われる。

 その原因は先行していた駆逐艦から、しかも1隻だけではない。

 2隻3隻4隻と、まるでドミノ倒しのように爆破、沈んでいく。


 「っきょ、巨大な空間変化値を観測!」

 「電子力場! レッドゾーンをマークです!」

 「上空で次元の崩壊を確認! 空が! 空が割れます!」

 

 先ほどまでの平和は雪崩の如く一瞬で無きものへ。

 甲高く、危険を知らせる音が艦内に響き渡る。

 変化していく世界、モニターに映るは空の崩壊、狭間に佇むは9つのナニカ。

 アルヴィンは瞬間で理解、これは敵だ。

 今すぐにでも対応しなければ死ぬと。

 

 「っ即座に迎撃! 出し惜しみは要らん! 全てぶつけろ!」

 「の、能力原子砲もですか!?」

 「当たり前だ!」

 「しかしあれには国連の許可が……」

 「全て私の責任で構わん! 死ぬよりはマシだろう!」


 長年の経験、そして軍人としての勘がアルヴィンを突き動かす。

 上空に浮く9つのナニカ、フォルムは人型、裁定者と同系統の服を着ている。

 すぐに映像を本部へ。

 ただこうしている間にも艦は面白いように沈んでいく。

 出現からたった数十秒だ、原因不明ながら艦の半数以上が海の藻屑とかした。


 『グランド、私たちが出よう』

 

 ただ一方的にやられる気はない。

 最悪の事態だけは避けれるよう、この艦にはS級が数十人、SS級が2人も乗っているのだから。

 分散せずに集中して配置していたのが唯一の救い。

 科学では限界がある相手、ここでなんとかしてもらうしかない。

 ただ予想では裁定者1体のはず、そのはずが似たようなものが9体も一気に現れた。

 実力は未知数、情報も無い、しかし数的には此方がまだ有利。

 飛翔する強能力者たち、目掛ける先は動かぬ謎の敵だ。

 しかし起こりうる現実は、なんとも非情なものだった。


 「————な、んだと」


 飛んだS級とSS級の集団、艦を離れてすぐ、殺された。

 まるで塵と化したよう、光が一閃、太陽光のように伸びた光が彼らを包み、そして消滅させたのだ。

 だから死んだというより、消え去ったという表現の方が正しい。

 目視で確認できないほどの分解、ミクロのサイズとなって海に散ってしまう。

 あの能力者たち、世界で名を馳せる彼らがだ、1秒もかからずに敗れた。

 

 「か、艦長……」

 「国連に今の映像は送れたか?」

 「は、はい」

 「そうか、ならば良い。それと皆すまないな」

 「それは……」

 「我々の負けだ」


 その言葉が届いたか届かなかったか、ただ世界最強と呼ばれる空母は破れる。

 人類にとっては悪の奇跡とも呼べるもの。

 手も足も出ず、ミサイル一発撃つ暇もなく。

 2118年1月、人類が誇る最強艦隊はただの鉄塊として海に沈んだ。
















 「————裁定完了」


 海より高く、雲より低い。

 硝子がらすのように割れた大気、狭間には裁定者の偽物(・・)が9体。

 いかせん宇宙規模で活動、1体では活動の限界が。

 そのために作られた裁定者の模造品。

 単純な強さ自体はオリジナルに劣るが、生命体を屠るには十分の力を持っている。

 しかし模造は模造、厳密に言えば艦隊沈めた9体は裁定者ではなく、裁定を下せる権限を持った存在にすぎない。


 「柱、設置」

 「「「「「了解」」」」」


 全てを裁き終わった後、原型となった、魔女王や銀神を打ち負かした裁定者が顕現。

 9体の模造品にプラスカウント。

 10まで増えた裁く者、そしてオリジナルの指示で特異能力を発動、『柱』を海に突き刺す。


 「主、この星の裁きも直ぐに」


 とてつもなく巨大な柱が9本、大海に刺さる。

 柱は点、点と点が繋がり描くは九角形だ。

 奇数ながらも究極的に美しい。

 そして中心点には裁定者が佇む。


 「————星裁定、開始」


 

 

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