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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 8 -Starting of the END 《魔女王の後継者》-
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 「ここまでの戦い! 何年ぶりかのう!」

 「裁定」


 レネと裁定者の打ち合い。

 当事者が神と謎の存在X、当然のことながら人智を越えた戦いに。

 戦最強を謳うレネの本気を初めて目にする。

 光も音も置き去りに、この空を縦横無尽に行き交う。


 (ぶっちゃけ半分くらいしか見えない……!)


 もう生物が追いつける次元を超えている。

 レネと同調しているだけあって行動パターンは流れてくる。

 ただ処理している時間は皆無。

 両者の戦いの半分見えてるか見えてないか、支援だけでも手一杯。


 「かっかっか! 強すぎるのう貴様!」

 「……」

 

 脳内越しに伝わる衝撃。

 ただ事じゃない、紙一重もない緊張感が支配する。

 それでもレネは喜んでいる。

 やはり人と神で感性が違うのか。


 『師匠、そっちの調子どうですか?』

 『芳しくないわね。元々奇襲する予定だったわけだし』

 『こっちも中々上手くいかないです』


 通信の魔法を行使。

 せめてもと師匠と現実的波長を合わせる。

 援護は若干投げやり、考えていては何もできない。

 思考の先にレネたちは居るのだから。


 「……仕方ない、夢幻魔法」


 あんまり使いたくはない無属性の魔法。

 日輪廻る九惑星ナイン・ドライブ・サンティカルに更なる負荷を。

 自らのDNAに夢を見せる。

 疑似的に種族を変更、人間という種を超越する。

 俺は人間じゃなくて脳筋、そう言った時があった。

 ただそれはあくまで気持ちの面、これは気合でも根性でも何でもない、確かな変化である。


 「変身(トレース)


 視覚に優れた魔鳥族、反射に優れた魔虫族、記憶にある情報を組み合わせる。

 身体的変化はない、しかし担う物は魔族と同義。


 (レネ、本格支援に入る)

 (ついてこれるのか!?)

 (出来る限りやるさ)


 9つの惑星を流転、今までの発射体制をより鋭利に。

 かの佐々木小次郎は不可能とされる燕斬りを達成した。

 俺が挑むのはもっと上、燕なんて生易しい動きじゃないのが相手だ。

 

 「————敵を穿つ廻りの法則、全発射(フル・バースト)


 同調で噛み合うからこそ、銀の神だけを避ける神業を。

 転輪する色彩、くうに至る。

 輪廻が六道を照らすほどの眩き魔法、現代言うところのレーザーが伸びていく。

 めまぐるしく動く銀眼、開いた瞳孔どうこう、そうこう言わせる間もなく穿っていく。


 「凄まじいの! ユウは人間を辞めておる!」

 「均衡を保つ、男」

 「ほほう! 貴様も我が友に興味を持ったか!」

 「……裁定」

 

 光が反射するように魔法線が駆け巡る。

 爆裂が、雷撃が、氷結が、残粒子を描きながら。

 ただ狙った奴の動きは、感覚的には光を軽く超えているのだから、そう簡単には当たらない。

 

 「だったら追い込む……!」


 追っていくのではなく囲い込み。

 なんせ主砲は9つ、角度、方向、反射を考え巧みに動かす。

 エイラみたいに力いっぱい殴るだけじゃない、俺の頭は飾りではなくそこそこ働く。

 感覚に委ねがらも何処かに知性を、魔法は芸術ではなく数学である。

 

 『大体準備は整ってきたわ』


 必至に魔法放つ中、師匠から連絡。

 気付けば大分距離が空いている。

 戦闘に集中しすぎて若干忘れていた。

 ただ距離的にはいい感じ、これもレネが頑張ってくれているお陰というとこか。

 俺の魔法はあくまで子供の手伝い程度、片眉ピクリと動かさせるくらいのレベルだ。

  

 『必殺兵器、あとどれくらいです……!?』

 『最低でも30分』

 『っげ! 全然じゃないですか!』

 『これでも頑張っている方よ。銀神にも伝えて』

 『了解です……』

 『あと、炎と光の魔法陣が歪になっているわ。直しなさい』

 『は、はい……』


 こんなの時まで指摘、確かに微妙に魔法式が崩れている。

 魔力量が膨大過ぎて傾いたのだろう。

 でもまさか本番の本番でそんなこと言われるとは、いやはや、俺は良い人を師匠に持ったな。


 (レネ、師匠があと30分は絶対に必要だとさ) 

 (魔女の奴、仕事がおっそいのう!)

 (まあ気張ろうか)

 (我はなんだか楽しくなってきたぞ!)

 (はいはい)


 レネが楽しい、つまりは今はまだ実力差がハッキリ出ていないと言うこと。

 未覚醒の言葉が意味する度合い、それはレネとイコールかちょっと強いくらい。

 しかし可笑しい、俺はむしろ不気味で仕方ない。

 裁定者の表情は一貫して無、ただ表面などどうでもいい。

 見えないぐらい深い、深い、深い、そんな底知れぬナニカを感じるんだ。

 師匠やレネはメチャクチャ強いって割り切っているが、同調という能力故か、鉄仮面の裏が恐ろしいとビリビリ伝わってくる。


 (そもそも俺や師匠を攻撃しない時点で可笑しい。流石に1発や2発攻撃を打ち込むタイミングはあるだろうに)


 俺が魔法を放ち、レネが斬り込み、師匠は軽い支援と、必殺の方へ。

 この身には同調という能力を宿すが、裁定者に使うタイミングが一切ない。

 なんせヤツはここまで、1度たりとて(・・・・・・)力という力を振るっていない。

 剣は出したとも、レネと打ち合っているとも、俺の魔法も高速移動で避け、偶に弾いているとも。

 しかしそれらはあくまでで個人技、異能を垣間見てはいない。


 (こやつの能力が気になるのか?)


 段々と傷が増えていくレネが反応。

 この思考は同調によって共有しているからこそ。

 眼上では凄まじい動きを体現しているというに、会話をするとは流石。


 (そりゃな、まさか能無しってわけでもないだろ)

 (無論じゃ。幾つか能力はあるじゃろう)

 (剣や早さは一旦置いといてだ。これだっていう絶対の力があろうだろう?)

 (そうじゃろうな。単純にまだ使えんのではないのか)

 (覚醒前だからか? それにしても、俺と師匠に攻撃を仕掛けて来ないのは不自然すぎる)

 (我だけでは不足と言いたいか。まあそれもそうじゃな……)


 曰く詳しい能力はレネも知らないらしい。

 それは師匠も同様、まるで見えない門が立ちはだかっているような不気味さ。

 逆に俺たち程度では使うに至らないとか。

 

 (もしそうだったら絶望するしかないな)


 ただ悩んでばかりもいられない。

 あくまで俺の脳みそはそこそこ(・・・・)働くだけ、一線を越えたのなら繰り出すだけに。

 しかし撃ても撃っても効果は薄い、むしろダメージなんて負って無さそう。

 レネの動きも若干だが鈍ってきてる様子。

 裁定者はというと、変化なし。

 上昇も無いし下降も無い、一定にリズム刻むメトロームのような機械性。


 「しっかし、あと数十分は結構きついぞ……」


 なんせ島が射撃体勢に入ったところで、すぐタイミング合うとは限らない。

 スピードは相当、追いつけるの本当に神クラスじゃないと無理。

 惑星発動させている俺でさえ、たまに当たるかどうかって現状だし。


 (文句言っても仕方ない、狙われてない内に少しでも————)


 チャンスがあるうちに、そう思ったアクション。

 警戒をしていなかったわけではない、むしろこれでもかと防御線と神経を張っていた。

 ただそれこそ幻のよう、上空でレネと戦っていた裁定者が一瞬で消えた。

 もう光を超えるとか、そういう次元じゃなく、さらに上。

 速さではなく、時間を止めたんじゃないかという感覚だ。

 レネも相手を見失ってアタフタしてる、が————


 「ユウ!」

 「……っ!」


 レネが警告、だが全然間に合わない。

 まばたきする暇もなく、裁定者は俺の目の前に瞬間移動。

 それこそ眼と眼の距離30センチ。

 異常に近い距離、急すぎる来訪、ただ予期していなかったわけでない。

 魔法と同調で————


 「裁定」

 「っまじかよ……!」

 

 まず惑星が割れた。

 言葉で俺の魔法は彼方へと消えた、それこそ塵となって。

 ならば重力の同調、海に叩きつけようとした。

 しかし不可能、見えないなにかに叩き伏せられる感覚。

 青い粒子は右と左に分かれて消えていった。

 魔風もその風あたるように無視される。

 高鳴る心臓、死を目前に体感。

 もう走馬灯流れる時間も無い、ただ首が飛ぶ、そう思った。


 「……っ」

 

 情けない話、目をつぶってしまった。

 諦めというより、全てを消され通じぬと理解してしまったから。

 ジリジリと締まる心臓、呼吸すら忘れて死を待った。

 ただ一向に痛みは訪れない、風が吹きつけない。

 もう死んだのか? あの世に逝ったのか? 

 いや、まだ生きている。

 恐る恐る目を開く、裁定者は表情そのまま、立ち姿そのままに、俺と同じ高さに視線を置いているだけだった。


 「あれ……?」

 「汝、名は何という?」

 「え……」

 「名だ」

 「よ、ヨンミチ・ユウ」

 「そうか」


 それだけだ。

 名前だけ聞いて停滞する。

 手に握る剣も振るわないし、ただ真っすぐ俺の眼を見ている。

 その現状に迂闊にレネも師匠も手を出せない。

 目を逸らすわけにもいかず、ひたすらに視線を交わす。

 男とも女ともとれる、美しすぎる顔立ちと対面し続ける。


 (い、命拾いしたのか……? でもなんでだ……?)

 

 いつまでこの状態を続けたらいい。

 バクバクと心臓が悲鳴を上げる、むしろ緊張だけでこっちが潰れる。

 なんなんだこの時間。

 あれか、何か聞いたほうがいいのか。

 

 (でも聞くことなんて、いや、もうあれぐらいしか————)


 「そ、そっちの名前は……?」

 「……」

 「い、いや無理には……」


 地雷を踏んだか、他2人も固唾を飲む。

 裁定者なんて無言だし。

 いや元々口数少ないけどさ。

 ただ俺の問いかけ、それは答えを導き出す。

 

 「名など無い」

 「え」

 「……」

 「……」


 なんでさっきまで戦々恐々してたのに、俺だけこんなネタ回を。

 そう思ってたがまさか名前なし。

 空気が重くなる。

 そういうものだと言わんばかり、まさに冷徹、その体現。

 状況は死と隣り合わせには変わりなし、むしろ一番きつい。

 余りに唐突な出来事、予想外の外の外。

 

 「我、裁定する者」

 「……」

 「我、主が命によりこの星に来た」

 「あ、主……?」

 

 急に語り出す。

 それも世間話にしちゃ重すぎる内容じゃないかそれ。

 空気は一変、表情は変わらなくとも、深さが違う。

 

 「汝、均衡を保つ者」

 「前も言ってたなそれ。俺がどうちゃらこうちゃら。まあ殺されかけたけど」

 「主、ヨンミチ・ユウに問う」

 「主? アンタじゃないのか?」


 特徴的な喋り口調、居や機械的なか。

 今度は謎の主とやらから。

 名前の次は何だ、出身地かそれとも好きな食べ物か、そんな訳はない。

 放たれる代弁の問いかけ、それは俺の謎を謎で埋めるものだった。

 

 「汝、裁定者になれ」

 「……は?」

 「この星は裁かれる。しかしヨンミチ・ユウ、汝は生かす価値がある」


 余りに常軌を逸した問、いや誘いだな。

 ようは自分みたいになれってことなんだろう。

 しかし何で俺にそんなことを。

 いや、主とやらが判断を下した、それだけか。


 「じゃあこっちからも1つ聞く。星が滅ぶ、つまりは俺以外死ぬってことでいいのか?」

 「死ぬのではなく裁かれる。無へと帰る」

 「良く分からない答えだけど、なるほどなるほど」

 「汝、裁定者に……」


 誘いはどうも。 

 なるほど生き残れると、そりゃ魅力的だ。

 裁定者の言葉は続く、だがそれ以上は語らせない。

 俺の思いは定まってる。


 「その話、断るよ」

 「……」

 「孤独で生きるくらないなら、俺は死んだほうがマシだ」

 「理解、不能」

 「というかそもそも死ぬ気も無い。だってお前とその主とやら、倒せばいいんだろ(・・・・・・・・)?」

 

 俺はこの空気になって何もできなかった。

 周りも手出しは出来なかった、手出し(・・・)はな。

 

 「————魔道砲、果ての島(エターナル・マーシュ)

 

 もう援助も何もしなくてよかった数分。

 孤独を選ばなかったのは仲間がいたから。

 色んな人と色んな関係を持った、そして俺が魔道の教えを受けた人物、師匠は天才だ。

 無言停滞の間に島を見事に変形、巨大な大砲に創り上げてしまった。


 「穿て」


 紫の輝き、どれくらいの規模化は分からない。

 ただ振り向く俺の視界に、紫以外の色は見当たらない。

 空の青も、ところどころある白も、レネの銀風も、なにもかもが紫で支配。

 生きていてこれが最も強い攻撃だと肌で感じる。

 超巨大魔法兵器が果ての島、その力を遂に顕した瞬間だった。

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