117
「「鎖門魔法」」
バトル突入、来たる拘束。
師匠と同時に拘束の魔法を発動、裁定者の次元転移を封じにかかる。
逃がしはしない、つまりは雁字搦め。
定めを刻める魔法を見極め、的確かつ最速で行使する。
「————まずは我から」
先行はレネから、閃光弾みたいに弾ける動き。
目が覚めるくらい凄惨に、姿は残像となり風と躍る。
「戦神、裁定」
「結べ! 銀刀!」
振るう刀、大気を震わせる。
ただ裁定者は真向から、その手に双刃の巨大剣を召喚。
世界を掌握するじゃなかって圧倒的なオーラを放っているソレ。
それぞれの持ち味千差万別関係なし、銀刀と鍔競り合い、一歩たりとて引くことはない。
(レネの本気の一刀を片腕で止めるって、やっぱとんでもねえな)
別に一撃で倒せるなんて誰も思っちゃいない。
むしろこれから、根を張る性に気合注入、つまりは根競べ。
別格相手に地力から送るニトロ爆弾。
「極炎魔法、天獄烈火」
レネの初撃を見るや間髪入れず。
爆裂炸裂、アクセルを踏み切った灼熱の魔法。
師匠の卓越した技術の1つが天災のように放たれる。
「————同調」
爆の魔法に通す青い光、自身に伝播し一体化。
限界領域の目一杯で操作を付け加え改変で実体化。
「強化魔法!」
魔法の初歩が初歩、強化の魔法式を発動。
今日この時に、刻み込んだ初心が火を噴く。
それは文字通りの爆発、ありったけ強化して裁定者に送り付ける。
「まずは真っ赤なプレゼントってな……!」
赤はクリスマスのサンタを想起、燃やし尽くすヘルフレイム。
入り混じるレネも巻き込むくらいの超規模攻撃。
「転移魔法!」
しかし喰らうのは裁定者だけ。
絶妙なタイミングで師匠が転移魔法を行使、レネを中間点に呼び戻す。
酸素を奪う炎の息吹、かの英雄カルナも超える疑似太陽が裁定者を飲み込んだ。
「っ危ない危ない」
「お帰りレネ」
「はあ、強すぎるぞアヤツ」
「見りゃわかるよ」
なんせ目の前にある太陽はすぐに砕け散ったから。
上から下で真っ二つ、それこそ公平に、芸術的なまでの左右均等。
狭間からは剣握る鉄仮面が何ともないように。
(しかも汗ひとつ流してない。物理的に堅いだけじゃなく、状態異常系にも耐性が相当あると)
体面はフルスロットル、ただ中心の中心だけは冷静に。
勢いだけで勝てる相手でないのは重々承知。
必死に解析観察している、これでもかって脳をグルグル行使。
「裁定」
轟。
スルリと振り下ろされる双刃の剣。
それだけ大気がギリギリと軋む。
炎は完全に晴れ何事もなかったように。
「ユウ」
「あいよ」
レネに同調を発動。
身体と身体、思考と思考、ピッタシと接続。
エイラ以外で唯一可能となるシンクロ、契約したからこその神がかり。
この瞳を神力で深く濁す、意識を共有しレネの補助にあたる。
(とっておきがある、数秒くれ)
(あい分かった。期待しておこう)
颯の如く疾走するレネのムーブ。
追いつくことは無理でも行動は分かる。
まるで見開いたサードアイ、不思議なまでにさっと合う。
援助分野は全部十八番、無限の手法をしまった玉手箱。
惜しみなくすべて吐こう。
「太陽を廻る9つの属性、絶を穿ちて天に座す」
対裁定者用に編み出したもう1つの道。
後ろ居る師匠は島の守護とその放つタイミングを図ってる。
ここは俺とレネで打ち合う、そのために昇華、更なる高みへ。
(魔力基礎を構築、魔法式の組み合わせ、固定も完了。全解除)
炎、水、風、土、無、氷、雷、光、闇。
習得したすべての属性を巨大魔法陣として出現、俺を中心にして惑星のように廻りだす。
それは惑う星、ならば俺は太陽。
常に魔法陣が身体に纏う、これが魔道の新たなる境地。
「————日輪廻る九惑星」
心臓爆発するぐらい魔力を解き放つ。
紫の粒子が天上高くまで。
天上天下に風穴を空ける。
「全射撃!」
九つの陣からそれぞれの魔法を発射。
色彩豊かなキャノンレーザー、超スピードで屈折しながら敵へと。
(レネ! 魔法の軌道をそっちの動きに合わせる!)
(我に当てるなよ!)
脳はリンク、レネだけを紙一重で避け、空間を捻じ曲げながら進んでく。
網羅網羅網羅、羅列する魔力の一本道。
生み出すボルケーノ、勢いそれトルネード、怒涛に浸り夢を実現させる。
「裁定」
ただ夢は儚く散るもの。
その2単語で魔法は粉々にさせられる。
硝子割る感覚、簡単に飛び散った。
「っ! ホント化物だな!」
ただその間にもレネは向こうさんの懐へ。
流石の間合い取り、絶好のチャンス。
ただそれも裁定者の無表情を崩すこと叶いはしない。
必殺の一刀も不思議と防がれる、まるで自動で動く機械のような精密性とスピードだ。
「汝ら、裁定」
「氷! 風! 光!」
展開した日輪廻る九惑星は何も攻撃を手伝うだけではない。
「壁天魔法!」
矛と盾の両方を備えた矛盾の魔法。
キツイ燃費を代償に近中遠を制覇する最強の補助魔法がこれ。
腕を突き出すだけで魔力は槍となり、払えば壁となるのだ。
この時ばかり、魔法の展開スピードは師匠をも凌駕する。
「てか攻撃重すぎだろ……!」
展開した壁もすぐさま粉砕される。
レネ脱却の道を拓けただけまだマシか。
(ただ裁定者、思った以上に行動が遅い)
攻撃や防御の動き自体は最速だ。
しかし自ら行動を起こすというのが少ない、もしくはそこに至るまでの思考が遅いと言える。
未覚醒ゆえか、それとも他に理由があるのか。
「なんにせよ、ホントに大変なのはこっからだな……」
レネの刀弾かれ銀が飛ぶ冬の空。
魔法も彩る戦いはこれから烈火の色となっていく。