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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 8 -Starting of the END 《魔女王の後継者》-
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 「まさか島ごと移動するとは————」


 サンタが駆け回る日。

 まだ日は高く、靴下を用意するのはまだ早い。

 

 「邪神のやつは失敗作、こっちが本命よ」


 俺たちは裁定者を倒すため海へと出た。

 標的が眠れる所は北太平洋、邪神率いる魔王連合と戦った場所とほぼ同じ座標。

 ただ方位磁石は放棄、必要ない、方法は魔法が解決。

 修行していた島ごと移動、地を船のように進ませる。

 傍から見たら不思議な図、ただ不可思議を起こすのが魔法という力なのだ。


 「でもこの島が1つの魔法具だったとは……」

 「船のついでに戦う時の足場にもなる。一石二鳥じゃな」

 「いいえ、これを破壊されるわけにはいかない。ある程度の距離で放置していくわ」

 「じゃあ結局は空での戦いっすね」


 裁定者ってのは空間の狭間にいる。

 今回はそこから奴を引きずり出すつもり。

 前衛がレネ、後衛が師匠、俺は全体のカバー。

 

 (こんなに豪華な面子もなかなか無い。足手まといになるのは勘弁だけど)


 なにせ神界でトップクラスの実力を持つ神、そして無限の魔法を使う魔女王。

 正直場違い感はある、ただ、俺は場面に応じて最適な行動を。

 師匠が必殺の一撃を放つまで、この身を架け橋とする。

 なんせ船のように動くこの島は特別性、たんなる土塊ではなく、1つの拳銃。

 魔法具としての機能、師匠の魔力を唯一受けきれる杖らしい。

 だからこそ、最高のタイミングまで隠しておくつもり。


 (魔王連合の時の謎の島も師匠が創ったらしいけど、あれはどうやら失敗、だからこそ邪神アガレスに投げうったらしいし)


 細かい設定、綿密な打ち合わせなどしていない。

 大まかなことを把握して、あとは感覚に従う。

 未覚醒とはいえ相手の実力は予測不可能、ならば戦況を予想出来るはずもない。

 兎に角、師匠が島を使っての必殺を決められるタイミングまで殴り合い。

 持ち得るすべての力をぶつけよう。


 「今回、我は我で戦う」

 「そりゃレネ単体の方がいいな」

 「神力のリンクは切れていない。ユウも使おうと思えば銀を放てるが……」

 「あんまり神力は使わない。レネの現界時間が減るからな」

 「すまんな。助かる」


 あくまでレネは俺と契約しているお陰で顕現できている。

 まだ独り立ちできる余裕はなし。

 この身が神力を提供しているからこそだ。

 

 (それでも同調、魔法、魔槍があるからな。バリエーションはそこそこある)

 

 手数は増やしてきた、デジャブが照らす。

 何度も道を描いてきたからこそ。

 海風が感覚器官を吹き抜ける。

 船で言う船首、島の先端に俺たちは立ち水平線を見つめる。

 相手は裁定者、なかなかの無理難題。

 ただタイタニック号のようなことにはさせない。

 世界を一周したマゼランより劇的、暴君ネロも歓喜する下剋上ストーリーをここに。


 「さてと、もうそろそろ飛行に移ろうかしら」

 「近いのか?」

 「そこまでは、ただ兵器たるこの島を破壊されるわけにはいかない」

 「保険をかけて距離は取ると、まあ仕方あるまいな」


 目標の潜伏座標は師匠しか分からない。

 ただここでと判断した、なら口出すはずもなし。

 そこそこ続いたプロローグに終止符を、身なり心持ち整えさあ飛ぼう。

 そう思った時だった————

 

 「っ震え! 銀刀!」


 レネが一瞬で刀を抜く、銀風烈風、彼方へと撃つ。

 それはコンマ数秒前まで目先臨んでいた水平線に。

 あまりに唐突、俺も師匠も驚くばかり、その行動の意味を理解できなかった。

 しかし抜刀した数秒後、レネの真意が嫌でも分かることになる。

 漂った静寂に衝撃音、強大過ぎる力と力がぶつかった証拠が目の前に。

 世界と脳天に衝撃破、海もブッ飛ばして海底を穴抜けにした。


 「レネ!」

 「ヤツじゃ! 向こうから仕掛けて来おったぞ!」

 

 攻撃を迎撃した銀刀の一迅。

 すると空が、空間が崩れていく。

 何もないそこから顕れるのは、散散噂をしていた裁定者。

 相変わらずの無表情、整いすぎたビジュアル、蠢く気味悪さ、間違いない。


 「まさか私たちが逆に不意打ちをされるとはね」

 「じゃが半覚醒、全力を出せぬことに変わりはない」


 睡眠中の敵から攻撃、こっちがビックリ。

 ただ俺も師匠も気づかなかったその究極領域をレネは打破。

 流石の反射、それとも経験か、どちらにせよ助かった。

 

 「ホントよく反応出来たな」

 「我はスーパー戦神じゃからな」

 「……スーパーって、幼稚なネーミングセンスね」

 「うっさいわ! ぬしこそ魔法名が痛々しいのばかりでないか!」

 「ストップストップ! もう敵いるって!」


 喧嘩しだしたところに仲裁を。

 ただ俺たちの襲撃はバレていた模様。

 空間の狭間に居るからこそ油断している、そう思っていたわけだが、甘く見ていた。


 「————我、裁定する者」

 

 初めて会った時と一字一句同じセリフ。

 初見でボコボコにされたのを思い出す。

 しかし鬼の修行を受けてきた、前回みたいにボロをボロボロ(こぼ)す気は皆無。

 それに隣には頼れる存在、なにも1人で立っているわけではないのだ。

 

 「汝ら、星を乱す」

 「だそうよ銀神」

 「我だけでなく魔女、貴様もだぞ」

 「まあまあ、全員で異端認定されときましょ」

 

 どうせ審判倒して記録消せばいいだけの話。

 なんとでも言わせりゃいい。

 

 「汝ら、裁定する」


 もうコントみたいに駄弁っている間もなし。

 まもなく雲行く空に飛ぶ、アトラス神に続くオリンポス級の戦いを巻き起こす。

 楔を外す、巻かれっぱなしだった鎖は海に捨てる。

 青の同調、銀の神風、紫の魔女、それぞれの武具と技を構え瞳を燃やす。


 「戦争を始めましょう」

 「「応」」


 異端者による異端者のための世界を目指して。

 俺にとってはリベンジマッチ。

 裁定者を滅殺すべく右足を前に進めた。

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