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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 8 -Starting of the END 《魔女王の後継者》-
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 「————同調シンクロ使いてえな」


 頭上に太陽、足本は氷河の大地。

 超マイナスの気温とは裏腹に、氷で光が強反射。

 時期は真冬だと言うのに、この照りつけだけは夏の様なかんじ。


 (気温なんかも魔法で対処できるけど、やっぱ同調の方が楽っちゃ楽なんだよなあ)


 生きていくための多面的な魔法は習得してる。

 ただ使い続けてきたシンクロの方がスムーズなのは間違いない。

 しかしそういうのも含めて修行。

 同調禁止、レネ冬眠、師匠不在の1人遠征である。


 「でもまさか北極に来ることになるとは」


 今まで過ごしていた謎の島からトリップ。

 師匠の転移魔法によって飛ばされてきた。

 

 (南極には観測基地があるみたいだけど、ホントに北極には何もないな)


 生半可な知識だが、南極と違い、北極の足場は殆ど氷によって形成されている。

 その関係で観測基地は造れないとか。

 兎にも角にも、この北極圏上に俺以外の人間はいないというわけ。

 しかし人間が居ないとなれば、逆に住み着く存在もいる、それは魔族だ。

 

 (魔法だけで魔王倒してこいって、結構な無茶ぶりだぞ)


 なんでも師匠によれば、北極に最近住み着いた魔王がいるとか。

 曰く実力についてはそこそこ。

 魔女王にとっちゃ大したことないんだろうけど。

 そんな奴を倒しに俺は来たわけだ。

 それでも人間がまさかの単騎勝負、エイラと創った伝説を今度は1人で創りに。


 「お、アイツかな」


 千里眼の魔法を発動、両目に宿る五芒星が標的の姿を捉える。

 

 (魔熊族(ベア)系か、熊なら熊で冬眠してればいいのに)


 特徴としては強い腕力と耐久力。

 ガッチガチのインファイターだ。

 使う魔法も強化の類だった気がする。

 現状把握、おそらく魔王と思われる巨大な1体を中心に、下級の熊たちもくっ付いている。

 結構な数、しかしその殆どが超劣化エイラだ。


 (魔法使いには分が悪い相手、普通ならな)


 俺は異端のスタイル、むしろ練習になっていい。

 せいぜい糧となってもらうとしよう。

 まるで無差別殺害か、だが魔族と人間ってのは相容れない。

 強い奴が勝ち、弱い奴が負ける。

 恐れることなく歩んでく、向こうさんも勿論気付く。

 不意打ちじゃ意味を成さず、真向から魔法でぶつかるつもり。


 「どうもこんにちは」

 「……」

 「あれ、言葉分からないかんじか」

 「……殺されに来たのか?」

 「喋れんじゃん。てか直球で言ってくれるな」


 (いや、常識的に考えれば、1人で魔王居る群れに突っ込むのは自殺行為か)


 群れる魔族の鋭い眼光がこの身に注ぐ。

 人では持ち得ない獣の眼。

 ボスたる魔王の迫力もなかなか、熊に似てるだけあってその体格は俺の5、6倍は軽くある。


 「今日は力試しに来たんだ」

 「力試し、だと?」

 「ああ。師匠の命令でな」

 「バカか人間。我は魔王、勝てるはずもない」

 「それはやってみないと分かんないぜ————」


 心臓を加速、秘めた魔力を全身から放出させる。

 それは魔力の噴火、辺り一帯は紫は覆われる。

 

 「な! 魔力だと!?」


 師匠だけと過ごした1ヵ月半。

 誰かとの手合わせは久しぶり、若干の歓喜で感情高ぶる。

 どれだけ俺は強くなったか、試させてもらおう。


 「人間! 貴様何者だ!?」


 俺の膨大な魔力に驚きを隠せない。

 無理もない、そりゃ本来使えないはずの代物。

 そんなものを毎日毎日練習してきた。

 単色しか放てない魔王に後れを取るつもりは無い。

 そして何者と聞かれるなら答えてやろう、ここでは魔法ということを加味して————


 「魔女王が一番弟子、ヨンミチ・ユウだ」

 

 名乗りと共に更に魔力爆発。

 死への手向(たむ)けは送った。

 後は技で語るのみ————















 「これで終わりかな」


 佇む氷の大地に死の花を咲かす。

 あれだけ居た魔族は全て滅殺した。

 炎で焼き、風で首を飛ばし、落雷で脳みそ焦がし、凍り漬けのオブジェにも。

 俺と師匠の魔法は無限、北極この地で蹂躙を終える。

 蹂躙と称したのは他でもない、大したことなかったからだ。


 (師匠も言ってたけど、普通に勝てたわ)


 ただ魔王的には低ランク階。

 ぶっちゃけエイラが1人で挑んでも勝てるだろう。

 だが慣らしにはなった

 実戦でしか培えないものもあるということだ。


 (通信の魔法を発動っと)


 地球上の何処かにあるという島、師匠へと連絡をする。

 コール音は鳴らないが電話みたいなもの。

 数拍置いてそれは繋がる。


 「もしもし」

 『お、終わったようね』

 「まあなんとか」

 『アレ(・・)は使ったの?』

 「いや、普通の魔法だけです」

 『そ、そう、分かったわ』


 なんだか歯切れがわるいような、魔法の繋がりが悪いのだろうか。

 とりあえず簡単に一連のことを報告する。


 『なら帰還ね。転移魔法をかけるから動かないで』

 「了解です」


 途端に足本に現れる魔法陣。

 来た時と同じ瞬間移動だ。

 魔王自体が微妙だったために大勝したように思われそうだが、全然そんなこと。

 強い奴と、裁定者と戦ったの時にはどうなるか。

 気を抜くことなんで絶対無理、まだまだ修行線上を俺は歩いている。















 「よし! よしよし! そこよユウ!」


 目の前の空間に映し出すのは、弟子の修行姿。

 北極にいる魔王を倒してこいと送り込んだのだ。

 

 (忙しいから見れないって言ったけど、やっぱり心配だもの……)


 魔法を使えると言っても、やはり人間は人間。

 縛りも与えてるし、厳しい面もあるかと思ったがそんなことも無い。

 魔熊を相手に善戦しているのだ。


 「流石は私の弟子ね」


 ユウ自身も最初に、私の一番弟子だと言ってくれた。

 その時は恥ずかしかったが、今となっては嬉しさに変換される。


 「勝負も、これで着いたわね」


 奥の手たる九惑星も使わずに勝利、完封だ。

 細かい魔法の習得は兎も角、正直欠点という欠点は見つからない。

 ちゃんと自分自身を、最善手を理解してる動きだった。

 

 (あとはそれぞれの練度を上げるくらい)


 欠点は無いが練度はまだまだ。

 鍛えるとしたらそれぐらいだろう。


 『———ッ』

 「っひ!」


 映るユウの姿をぼやぼやと見ていた途端だ。

 急に目の前、小さな魔法陣が現れる。 

 伝達用のもの、終わったということでの連絡だろう。


 (す、すっかり気が抜けてた。ビックリして変な声が出たし……)


 数回息を吸って心を整える。

 クールに、格好良く行こう。

 もともと忙しくて見てあげれないと言った身、今更どうこう言えない。

 

 (いつも通り、いつも通り話せばいいだけよ)


 『もしもし』

 「お、終わったようね」


 (か、()んだ……)


 出鼻は転んだ、ただこれ以上は崩れるな。

 ユウは特に何もツッコンで来ないし、行けるはず。

 ここで戦闘開始から終わりまでの報告を受ける。

 全部見ていたから知っているのだけども。

 とりあえず、奥の手を使わなかったのかと、それっぽいこと聞いておく。

 

 (今更一部始終見てましたとか、恥ずかしくて言えないわ……)


 「なら帰還ね。転移魔法をかけるわ」

 『了解です』


 北極とここをリンク、魔法で繋げる。

 機会があればユウにも転移魔法を教えたいが、時間が足りない。

 魔法の中でも特に難しい部類。

 それこそ裁定者を生きて倒せたら教えてあげよう。

 

 「転移、発動」


 呟くマジックワード。

 陣は輝きを発動し、弟子をここに召喚する。

 

 (あ、帰って来た時なんて言えばいいのかしら!?)


 もう半分くらい魔法が完成して気づく。

 出迎えの言葉をなんて言おうかと。

 今までずっと付きっきり、離れてから会うのは久しぶりで緊張だ。

 

 (お帰り? お疲れ様? それとも反省点を聞くとか? ど、どど、どうしよう……)


 ユウの両脚は既に現出。

 結局あたふたする思考が導き出したのは、『まだまだね』という我ながら素直じゃない言葉だった。

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