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「————日輪廻る九惑星」
頂きの紫鎧を改良しだして1週間強。
こう言っちゃなんだが、進化形は意外と早く出来た。
放つ輝きが体現を知らせる、辺りに色彩を持たせる。
「気を抜かない。まだ形を成しただけ、中身はスッカラカンよ」
「ひ、酷い言いようですね……」
「まあそれでも、短期間でこれを創り出せただけ凄まじいけど」
俺は独自に進化、あの時みたいな力任せの技じゃない。
エイラの姿、師匠教え、俺の感覚と理論、全てが合わさった完成体。
ただ師匠の言う通り見かけだけ、展開した状態で動かすのは厳しい。
未だ完成は理論の上で踊っているのみだ。
つまりはハリボテ外装、こっから骨組みの中にコンクリートぶち込んでいく。
「見た目もホントに派手、そこからやろうとしていることもだけど」
「大胆不敵ってやつです」
「ただのバカよ」
「そ、そすか……」
「でも、これならきっと通用する」
「完成すれば、ですかね?」
「分かってるじゃない」
生み出したのは魔法の新たな姿。
俺の身体を9つの魔法陣が、それぞれの色彩放って廻ってる。
例えるなら俺が太陽、渦巻く陣は惑星の如し。
コペルニクスが唱えた地動説の現実版。
それは武装系魔法の頂き、全距離を制覇する革命の塊だ。
「————スタートラインぐらいは切れたかな」
「もっと! もっとよぉ……」
「ちょ、飲みすぎですって」
「お祝いお祝い。新魔法の成功にばんざーい!」
「いや完全に習得するまで喜ぶなってさっき……」
「っへっへっへ」
「ダメだこりゃ……」
遅くまで修行した後は夕食、というよりか飲み会。
何時も酷いが今日は特に。
ベロンベロンで顔真っ赤、呂律も怪しい。
(服もグダグダだし、出来ればもう少し隠してほしい……)
オッパイが、オッパイが大変なことになっている。
別に変な気は起こさい、絶対に起こさないとも。
なんせ俺にはエイラがいるし、相手は師匠だし。
(でも気になるもんは気になるんだよなあ……)
それが気が起きてるってことだ、そういうツッコミは来ない。
なんせここでのボケ担当は完全に師匠だし。
ただ安心して欲しい、俺の理性はオッパイを見て同じように揺れるが、折れることだけは決してないんだ。
「創造魔法、酒」
「あ、また創ってる! ししょー!」
「怒っちゃやーよ」
「そのネタ古いっす」
「えへへへへ」
(クールな顔が一変して酔っ払いのヘラヘラ顔に、酒ってのは恐ろしいな)
クールビューティー姉さんからオヤジ、いや、ちょっと悪乗り多いサバッサバお姉さんへと。
何時もは『ふふふ』とか高貴な笑い方なのに、今は『へっへっへ』とか『けっけっけ』とか。
しかもこの記憶は酔い覚めると忘却してる。
俺が何を言っても信じてくれない。
(今度録画して見せてやろうかな)
「弟子!」
「は、はい」
「お前最近調子乗ってるだろぅ?」
「全然全然! 師匠流石だなってずっと思ってます!」
「そうかそうか。良し良しをしたろう」
「し、したろう……?」
イメージ崩壊がすごい。
したろうって何その言い方。
丁度始めた頭良し良しもだいぶ雑だし。
そんなやり方じゃ頭が禿てしまう。
(まあ俺に止められるわけもないんだけど……)
なされるがまま。
ただそんな乱雑な仕方でも、特に悪い気はしない。
ずっと感じてる、師匠は普段精神を張り詰めているのだ、異常なまでに。
こういうところで発散しなければやってられないのかも。
しかしこれらはあくまで俺の想像上、そういう訳がなくても付き合うのは全然構わない。
(酔ってる時の師匠もグット、いわゆるギャップ萌えってやつかな?)
「……お前はぁ、死ぬなよ」
「え?」
急にテンション下げての深刻言葉。
もしかして酔いが覚めたのだろうか?
「くぅぅ……」
「って寝てるし」
「みんなの仇は……、私が……」
「……」
何度聞いたか意味深な台詞を。
酔っている時の記憶は忘れるため、こうして呟いていることも師匠は覚えていない。
その弱音の真実、大体察してる。
前聞いたおとぎ話が実話、それが体験談だってこと。
復讐に燃えた少女の正体を。
「俺は死にませんし、師匠も死なせません」
あの話を聞いた時から、俺は使命を背負った。
それは師匠自身が建てまくった死亡フラグ、それを叩き壊すってことを。
感じる鼓動、レネの復活も間近に。
強さの先に求めるのはハッピーエンド。
ただそれだけ。
(なんだかんだ、意外と世話が焼ける人なんだよな)
魔法については何枚も上手、教わることが多い。
ただ過去についてを明確には、本人が語るまで俺も表に出すことはしないつもり。
ソファーでだらしなく眠った師匠を担ぐ。
日課になったベットへの運び込み。
寝言を呟く口は酒臭い、ただ、満足そうに笑っていた。