表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 8 -Starting of the END 《魔女王の後継者》-
136/188

109

 私の弟子、ユウ・ヨンミチは魔法の天才である。

 地球人でありながら魔法の扱いは抜群。

 魔力も天井を知らず、ひたすらに増えるのみ。

 天才というよりは怪物、センスの塊とも。


 「師匠師匠! 凍りました! 凍りましたよ!」

 「氷魔法も成功と、なら次は————」


 魔力基礎の構築を終え、魔法の修行に突入。

 それからはや数日、ユウは既に五大属性魔法を発現済み。

 四元魔法にもリーチをかけている。

 急いではいるが、とてつもない成長スピード。


 「そこ、第3プロセスの構築がいびつ。それじゃあ雷魔法は未完成よ」

 「え、でもここは、これが最適じゃないですか?」

 「最適……?」

 「放電を起こすのに4つも式は不要、むしろ無駄です。俺のやった2式で十分魔法は————」


 私が歪と言ったそれそのままに。

 魔力を通すと電撃が発生、まごうことなく雷魔法である。

 展開規模は練度不足で狭い、ただ質においては最高、煮詰めればもっと良くなろうだろう。


 (たった数日、それだけで魔法というものを理解している。恐ろしいわね)


 独自の理論が弟子の頭にはある。

 確かに魔法にはこれだと決まった、公式のようなものはない。

 ただこうも容易く新しきを確立するか。

 初めて数日の素人が導くことなど普通はあり得ない。


 「魔法ってのは面白いですね。やればやるだけ先がある」

 「その分だけ頂きは遠いわ」

 「それでもです。ただ、魔法に制約がないとは意外でした」

 「正確には紫色だけよ」


 私が使う力は魔法、魔族が使う力も魔法。

 ただし魔族というのは炎だったら炎、水だったら水と、同系の魔法しか使えない。

 平凡な人間の魔法使いも似たようなものだ。

 しかし、私が持つ魔力は特別、様々な色の魔力があるなかで、持ち得し紫が示すのは『万能』

 あらゆる魔法を放つことができる最強の系統、発現当時恐れられたのはこれ故。

 まあそれに付随してセンスもあったというところか。


 「ちなみに炎魔法と風魔法を合わせると……」

 「ストップ。複合魔法はまだ先よ」

 「やっぱり合体技があるんですね」

 「それなりにリスクが伴う、まずは1つ1つのレベルを上げてから」

 「中途半端に手を出すなと」


 魔法同士のかけ合わせは、これはある種魔法の醍醐味。

 その担い手によって様々な違いが生まれ、センスと感覚、経験が直結する。

 いわば魔法使いとしての真価の具現化。

 そんな大きいことやるには、まず基礎を固めてから。


 (予想以上の成長速度で時間的には余裕がある。その分は練度に注力を、少しでも単色魔法の底上げをするべきよね)


 同じことの繰り返し、リハーサルが一番の上達法、私はそうだった。

 新しいことへの挑戦をグッと堪えて今を。

 五大属性魔法と四元魔法を完全に掴むにはもう少し。


 「っくそ、なんか汚いなあ」

 「根底が甘いのよ。魔力を薄く広げるイメージで」

 「薄く、広く……」

 「魔法はそれぞれ特徴や性格がある。それに応じて魔力の形を変えていくの」

 「やってみます」


 こんなことは、普通今の段階で教えない。

 ユウの年代、学び舎ではまだ魔力構築の段階だろう。

 魔法の習得にすら入っていない。

 自分の過去を思い出す。

 

 (本当に懐かしい。私も上手くいかなくて悪戦苦闘してた)

 

 自分で言うのもなんだが、私は天才だった。

 周りと比べ魔法の範囲は無限、普通とは一線を駕した。

 田舎町だったこともあり、教えを乞うことは、誰かに頼ることは出来ず独学に。

 至るまでは相当な時間を懸けることになってしまう。

 

 (でもユウには私がいる。師匠たる私が彼を極致まで連れていく)


 世界を超えての復讐は近い。

 万全は期す、ただ絶対に成功するとは言い切れない。

 失敗は死を意味し、消えていくだろう意志、そして研鑽してきた魔法。

 途絶えるだけだとずっと思っていた。

 ただ、これも運命か、私は弟子と巡り合った。

 ほぼ0パーセントの己との魔力適合者、この星に唯一の私の紫を受け継いだ人間。


 「ししょー、やっぱできないっす……」

 「はあ、見本を見せるわ」

 「あざす!!」


 何度やったか魔力の造形。

 芸術にまで昇華する魔法の軌跡。

 

 「やっぱ凄い……!」

 「もっと踏み切ってやるの。形を整えるのは展開中でも出来る」

 「了解です!」


 やったことをすぐに読み取り。

 自分の中で最適化、自己処理で自分のものに。

 潰えぬ探求心、本当に良くできた弟子なこと。

 それに、自分で押し付けておいてなんだけど、私のことも真に師匠として慕ってくれている。

 信頼を感じている。

 この世界で初めて、私を魔女以外の存在として認めてくれているのだ。

 

 (大抵の魔王も恐れて近づいてこないけど、これがユウの気質なのかしらね)


 同調という稀有な能力故か。

 だからこそ魔法を使えるのかも。

 ギブアンドテイクという平坦な言葉ではない。

 正直、利益不利益はどうでもいい話。

 私はユウに魔法を教えたい、一緒に過ごしたい、ただそれだけ。

 ようは感情が思うままに、やりたいからやるのだ。


 「うお!」

 「出来たじゃない」

 「やった! 師匠の言う通りでした!」


 ただ遠くない内に戦いもある。

 もし私が万が一敗北を期したとき。

 私は潰える、今度こそ。

 ただし残るものも————


 「師匠! もっと魔法教えてください!」


 あくなき探求の心を持ち、教えを乞う。

 自分の中で既に決定、ユウ・ヨンミチこそが、魔女王たる私の唯一の後継者。

 この身滅びようとも、意志と魔法は彼に受けつがれると信じている。 

 ユウは私にとって、最初で最後の希望だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ