表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 8 -Starting of the END 《魔女王の後継者》-
132/188

106

 与えられた当初は微々たるものだった。

 元の持ち主が強すぎたこともある。

 それでも時間をかけ段々と。

 授けられた者もまた天才、その紫を一層多く血流に流す。

 奥底に眠っていた力は覚醒。

 時は来た————














 「……ここは」


 目を覚ます。

 ゴチャゴチャと荒れた思考回路に真っ白な天井。

 ただ病院のような冷たさは何故か感じない。

 傾ける五感、何処からか暖かい風。

 季節を忘却する居心地の良さ、まさに人が生きるに最も適した空間だ。


 「————起きたわね」


 指と指を伸縮拡張、動作は確認。

 横になった身体、神経を呼び覚ます。

 そんな俺を迎え入れたのは————


 「師匠……」

 「傷は全て治しておいたわ。身体の方は十分動くでしょ?」

 

 半身をウェイクアップ、ハーフのスタンドアップ。

 記憶を巡る、俺は裁定者なる者に死地まで追い込まれた。

 ただ危機一髪、師匠の介入でなんとか難を逃れ、そして————


 「ここは私の島(・・・)よ」

 「それって地球にあります?」

 「当たり前じゃない。天国だとでも言うのかしら?」

 「いや、まあ……」


 露わになる上半身、左は師匠によって刻まれた刻印ルーンの浮世絵。

 その色は師匠の魔力と同じ紫、美しさも伝播する。

 腹部についてはそんな浮いた世を断罪するような、一迅の剣痕。

 エイラとの戦いで生まれた傷、なるほど、確かに俺は生きているようだ。

 あとは、そう、俺と一緒にいた————


 「先輩は!? ユリア・クライネは!?」

 「赤眼の少女のこと? 生きてるわよ」

 「……よ、良かった、ちなみに何処にいるんです?」

 「国連本部に転移魔法で送っておいたわ」

 「は?」

 「ここに連れて来たかったのは弟子たる貴方だけ。部外者は退場よ」

 

 整理つかない思考も段々と現実を受け入れていく。

 ノーマルモードに移行、しかしイマイチこの状況だけは飲み込めない。


 「約束、忘れたのかしら?」

 「や、約束……」

 「貴方の方からお願いしたのよ」


 呼び起こす数か月前の激闘を。

 あの時は師匠と一騎打ち、見事に粉砕された。

 最もな起因は、魔法の質と量。

 あまりにも多彩、同調の及ばぬ超広範囲でなすすべなかった。

 それで最後の最後、別れ際、師匠と呼ぶまでになった彼女に願ったこと。


 「————魔法を、教えてくれるんですか?」


 回復魔法、転移魔法、攻撃魔法に防御魔法。

 師匠の魔力が俺に流れてから、それらを影ながら見据えていた。

 独学では無理、師匠に会うことも出来ないと思っていたが。

 廻り廻って今ここに。

 形としては歪かもしれない、しかし彼女は再び俺の前に現れた。

 

 (もしかしたら俺は、もう最強に手が届くところに居るのかもしれない)


 目の前に差し出されたのチケット。

 それを掴みとる以外に選択肢はあろうか。

 いや、ないな。


 「貴方も味わったはずよ、裁定者の力を」

 「それです、裁定者ってのは一体……」

 「まあアレのことはおいおい話ましょう。まずは意思を問おうかしら」

  

 こうなったのは全てあの自称審判によるところ。

 師匠が来て九死に一生を得たが、あのままだったら今頃あの世行き。


 「私の弟子、ユウ・ヨンミチ。力は欲しい?」

 「……欲しい、欲しいです!」

 「行くのは魔道よ。覚悟はある?」

 「もちろん!」 

 

 元々強くなるために受けた依頼。

 出会ったのは文字通り最強の敵、根っこから上まで全部撃ち抜かれた気分。

 ただそのお陰で、こうして師匠と再会。

 同調と魔槍、神力を超える————


 「って、レネの反応がない!?」


 まさか俺だけ助かってレネは。

 いやそんな。

 あり得ないという表情を向けるが、師匠は反面大したことはなさそうな。

 ため息ついたようなかんじ。


 「エレネーガはたぶん寝ているのよ」

 「ね、寝てる?」

 「神力を酷使しすぎたせい、今は回復中ってところかしら」

 「なるほど……」


 フィンランド来た時点で結構調子は悪そうだった。

 脳内に居てもフラフラしてるイメージ。

 師匠の話じゃ冬眠のような状態、意思の疎通は当分出来ないようだ。


 「それと観てたわよ、聖剣使いとの戦い」

 「え、エイラとの試合ですか……」

 「魔力が常に暴走気味、観ているだけでヒヤヒヤしたわ」

 「す、すいません……」

 「それに負けちゃったし」

 「ごもっともです……」


 説教というか呆れを連発、精神的に結構ダメージが。

 ぐうの音も出ないとはこのこと。


 「でもこの私が教えるからには、もう聖剣使いに後れは取らせない」

 「……!」

 「最終目標は裁定者、人間界でトップ獲るのは当たり前よ」

 「裁定者、ですか」

 「怖気づく? でも、惚れた女の子は守りたいでしょう?」

 「……はい!」


 そうとも、俺はまだ死んじゃいない。

 この身は確かに三次元上、生を謳歌しているんだ。

 諦めるのは尚早。

 むしろ諦めは足枷あしかせ明日あしたへ通ずる未来のためそこらに捨てよう。

 

 「ただゆっくりもしていられない。2か月で仕上げるわよ」

 「に、2か月!?」

 「むしろ最短よ。本来だったら10年はかかるもの」

 「うおぉ……」


 師匠は1日が24時間で、1年は365日あると知っているのだろうか?

 最初は長くないかと驚いたが、10年を2ヵ月に凝縮って————


 (一体どんな鬼修行になるんだ……?)


 恐れたところでだ。

 むしろ裁定者を考えた方が身震いする。

 もう一度アレと出会った時、もう師匠が助けてくれるとは限らない。

 そしてエイラを、相棒を守れるのも相棒だけだ。


 「————さあ愛弟子! 共に魔法を極めましょうか!」


 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ