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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 7 -School Festival and Ring 《幻の思い現実に》-
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 「流石に緊張するなあ……」

 「そうか? 私は何とも思わんが」

 「そりゃ自分の親だからだろ」

 「それもそうか」


 学校が帰路、普段だったら進路は寮へ。

 しかし今回は別。

 隣にはエイラ、足は市街地に降りていき、そのまま数刻。

 周りには住宅が見え始め、着々と目的地へと近づいていた。


 「しっかしエイラの親か……」

 「なんだ、思うとこでもあるのか?」

 「ストレートの言って悪いが、変人だろうなと」

 「……何度も言うが普通だぞ」

 「お前の普通は信頼できない」

 「むむ、私は本当の事しか言わないぞ!」


 (お前にとっての普通は普通じゃない)


 確かに正直に言っているかもしれない。

 ただ尺度が違う。

 その角度は傾きすぎ、常人ではアウトな世界も平常に感覚。

 錯覚が俺とエイラの価値観に生じている。


 「着いたぞ」

 「ここかって、うおぉ……」


 エイラの家に到着。

 挨拶で来ました今日この日、ただ会う前にもう外観でビックリ。

 

 「家、デカすぎないか……?」

 「そうか? よく分からんな」


 そこそこ高そうな家が並んでいるこの通り。

 特にデカいエイラの自宅。

 俺の実家も一軒家だが、その軽く4、5倍はありそう。

 いくら欧米系の家が広いとしても、これは————


 (エイラも政府の依頼を結構受けてるし、やっぱ経済的には潤ってるってことかね)


 しかし娘の報酬でデカい家を建てるだろうか。

 単純に親がいい稼ぎをしているのかも。

 良く分からないが、今日そのことは重要じゃない。

 果たしてどんな人たちなのか、告白の時とまではいかないが、ドンドンと鼓動が鳴る。

 なんせ彼女の両親、初の体面と挨拶。


 (もしかしたら、とんでもなくお父さんが怖かったりして……)

 

 フラグ大当たりの俺の人生。

 十分に可能性はある。


 「行くぞ」

 「あ、ああ!」


 立派な門を手慣れた動きで開ける。

 重厚な鉄もエイラにかかればおちゃのこさいさい。

 進んだ先で電子キーを認証、心臓に緊張が。

 高負荷に耐え、思い切って前へ踏み出す。


 「帰りましたー!」

  

 エイラが家に入った途端に上げる快活声。

 コンディションのせいか隣に居てちょっとビビった。

 ただこれが通常運転なんだろう。

 

 (にしても玄関広いなあ)


 ただ金持ちにありがちな、骨董品や絵画の類は見当たらない。

 そう言う趣味は無いのか。

 それともエイラがぶっ壊すもんだから置かないのか。

 どちらにせよ広さに見合わぬ質素なインテリア。

 

 「————あらあら」


 そこに現れたのは美しい金髪を持つ女性。

 長い髪は一括りに、顔はエイラにかなり似ている。

 そのプロポーションも凄まじい。

 モデルと言われても納得できるほど。

 年齢的には俺たちの5、6個上だろうか。


 「お帰りなさいエイラ、そしてあなたが……」

 「初めまして。ユウ・ヨンミチです」

 「ご丁寧にどうも。エイラがお世話になっています」

 「い、いえいえ」

 「立ち話は申し訳ないし、さあ上がって」


 その女性はエイラに似てはいるが物腰は随分と柔らかだ。

 フワフワしているというか、おっとりしているというか。

 兎に角優しそうな人、まさに絵に描いた美人。

 

 「そう言えば名乗っていませんでした。私はソフィア、ソフィア・X・フォードです」

 「ど、どうも」

 「名前で結構ですよ。私もユウ君と呼ぶので」

 「はい。よろしくお願いしますソフィアさん」

 

 今まで出会ってきた女性陣が過激すぎたのか。

 こんなにマトモそうな人と関係持ったのは初めてかも。

 なんだか何時もの調子が出にくい。

 

 「なんだか緊張してます?」

 「……まあ正直、それにこんな美人なお姉さんが居るとは聞いてなかったので」

 「あらあらあら」

 

 エイラは家族構成を両親と妹1人だけと言っていたが、なんのその。

 ここに来てからビックリ仰天ばかり。


 「嬉しいこと言ってくれますね」

 「ユウはお世辞が得意なん……」

 「余計なことは言わない」

 「は、はい」


 待て待て、どういうことだ?

 なんだか雲行きが怪しいような————


 「私は姉ではなく、お母さんです」

 「お、お母さん?」

 「そうだぞ。何を勘違いしようか、母様は立派な四十路……」

 「あら、今日は夕飯無しかしらねえ」

 「っひ! ね、年齢は忘れろ! だが母様なのは本当だぞ!」


 (この人が40……、もう何が何だか分からないな……)


 確かに殆どのパーツはエイラに酷似。

 なんだかエイラの最終形態とも感じられる出立。

 しかしまさかこの見た目で母親とは。

 姉に見える母親とか、ホントにあり得るんだなと改めて思い知る。


 「とりあえず、リビングでゆっくりしましょうか」


 そう言って来たリビングもなかなか。

 豪奢とまでは言わないが、立派も立派。

 露骨な物はなく、清潔感があって大変好印象。

 ただソファーに座ると、やっぱり良い物揃えているなと実感する。


 「母様!」

 「冷蔵庫にケーキがあるわよ」

 「おおー!」

 

 ゆっくり、そんな言葉は道に捨ててきたとばかり。

 甘いものあると聞いて冷蔵庫に直行していく。


 「ほんとうにもう、食べ物のことばかり……」

 「まあエイラですから」

 「やっぱり学校でもこんな感じなのね。迷惑かけられてるでしょ?」

 「め、迷惑は、かけられ……」

 「いいのよフォローしなくて」

 「滅茶苦茶かけられてます」

 「ふふ、そうよね。正直でよろしい」


 エイラが理性働いていたら、こんな感じだったのかと思う。

 大変落ち着いてらっしゃる。

 

 (まあ俺は、やっぱり脳筋のエイラの方が好きだけど)


 「かあさまー!」

 

 軽く会話も弾み始めたかと思ったとき、ドタドタと駆ける音が聞こえる。

 ついにはこの部屋の扉を開き現る。

 小さい身長に高い声、だがエイラやソフィアさんに似た容貌。

 母と呼んだソフィアさんへと寄ってくる。


 「あ! エイラ姉さまと仲良しの人だ!」

 「ど、どうも」

 「次女のリリアナです。ほらご挨拶」

 「リリアナです! 12歳です! 算数が得意です!」

 「初めまして、ユウです。呼び方は、リリアナちゃんでいいかな?」

 「リリーでいいよ! よろしくねお兄ちゃん!」

 「お、お兄ちゃん……」


 (妹には馴れているはずなのに、正直ときめいてしまった……)


 実際に妹が居るのに、何故かときめき。

 年齢が年齢だからか、なんて純粋な微笑み。

 天使と表現してもなんら問題ない、いや天使であるのは間違いない。

 一体ここの家はどうなってる?

 神様が特別に加護してたりするんですかね。


 「それにしても算数が得意なんて、リリーちゃんは偉いね」

 「えへへ」

 

 (エイラの妹なのに算数が好き? 嘘をついてるようには見えない、信じがたいが事実なんだろう)

 

 エイラは普通と言っていたが、まさに一般的。

 むしろ異端ではなく最高。

 お母さんが美人で、妹は天使、こんな家庭が存在しようとは。

 その現実に浸っているとリリーちゃんは、打って変わってモジモジと。

 見ればその後ろに組んだ手には1冊の冊子が垣間見える。


 「お、お兄ちゃん」

 「ん?」

 「きょ、今日学校で英語の宿題が出て……」


 (なるほど英語の課題か。分からなくてソフィアさんに聞きにきたのかも。でも俺が居て場を濁したわけか、なら————)

 

 「俺でよければ教えるけど」

 「……え」

 「一通りの勉強は出来る。折角だし一緒にやるかい?」

 「うん!」


 なんてキラキラした瞳よ、眩しくてコッチの眼が潰れそうだ。

 

 「ユウ君、無理には……」

 「全然全然、お安い御用です」

 「ふふ、ありがとうございます」

  

 教えるとなって、リリアナは隣に寄ってくる

 初見だと言うのに躊躇わず来るとは。

 案外懐かれているのかも。


 「おおリリー、居たのか」

 「あ、姉さま!」

 「エイラ、口元にクリームついてるぞ」

 「む、そうか」

 

 おそらく冷蔵庫遠征が終わったのだろう脳筋長女の帰還。

 見た目はそっくりなんだが、ホントに中身が違いすぎる。

 中身というのは性格というか勉強に対しての姿勢だが。


 「まーた宿題をやってるのか」

 「や、やるよ!」

 「そんなに勉強するとバカになるぞ」

 「な、ならないもん! お姉ちゃんみたいなアホにはなりたくないもん!」

 「っな! アホだと!?」

 「お兄ちゃん勉強に教えてもらうから邪魔しないで!」

 「なにをぉ……」

 「喧嘩しないの2人とも」

 「「……はい」」


 やはり母は強し。

 それから案外エイラとリリアナは似ているのかも。

 勉強の姿勢は兎も角、なんだか通ずるところがある。

 

 (やっぱり姉妹ってことか)


 右側に座ったリリアナに対抗するようにエイラは俺の左側に。

 ここからは勉強を教えつつ、ソフィアさんと世間話、エイラの天然ボケにツッコムという時間。

 なんともカオスだが、なんとも家族らしい。

 初めて訪れたこの家の空気、それはとてもホットで、胸に染み入るものがあった。
















 「いやあ、ユウ君が相手で本当に良かったよ」

 「ははは……」

 「エイラは頭が弱いのに力だけは強い、結婚は無理だと正直思ってたんだ」

 「そ、そうなんですか」

 「うん。孫を見ることは当分ないと思ってたけど、運命ってのは分からないねえ」


 饒舌に俺の目の前で語るのは、ダリオ・X・フォードさん。

 つまりはエイラの父親である。

 夕飯を御馳走となり、その後。

 今は酒が入り酔っ払い気味のダリオさんと男語りである。


 (ホントに普通の人、考え方も性格も。エイラの言ってたことは真実だったんだな)


 エイラとリリアナの親だけあって、ダリオさんも超美形。

 年齢を感じさせないザ・イタリア男といったかんじ。

 ただ性格は非常に温厚、酒が入ったからと言って暴走なんてこともなく。

 ちょっと口が達者になり、今はエイラが心配だったと話している。

 話していて良い父親だということはすぐに理解した。


 「前々から話だけは聞いてたんだ。ユウ君は最高の相棒だって」

 「アイツ、随分と評判上げてくれたんですね」

 「うん。しかもあのエイラが凄く、本当に楽しそうに語るんだ。始めは催眠でもかけられてるのかと思ったよ」

 「エイラに催眠ですか、そりゃ凄い」

 「はっはっは、その通りだね。ただテレビの報道とか映像を見て、事実なんだと思ったよ」


 以前から俺とエイラのことはテレビでよく報道されていた。

 そしてなんとまあ恐ろしいことに、俺のエイラへの告白。

 それは数日にして世界へと拡散された。

 その内広がるとは思っていたが、異常な早さで。

 翌日には学園に大量のマスコミが居てリアルに大変だった。

 

 「話してみて分かった。君ならもうオッケーだ」

 「あ、ありがとうございます」

 「で、挙式はいつだい?」 

 「いやまあ、籍を入れるのは当分先にします」

 「なんだ、もう指輪も渡したのに?」

 「ええ。最低でもお互い高校を卒業してからに」

 「そうかー。でもしっかりした君の事、任せるとしよう」

 

 年齢的には俺は来年で18歳。

 正直国際結婚の仕組みは良く分からない。

 ただ適年齢になったとしても、学生という身分は脱したい。

 指輪もつけ、やることもやったが、それとこれは話が別。

 

 「今度ユウ君の親御さんにも会いたいね」

 「うちの家族もイタリアに来たいらしいで、遠くない内に会えると思います」

 「ほほう、その時は是非案内させてくれ」

 「分かりました、よろしくお願いします」

 

 観光目的の俺の親にも目的は追加。

 テレビで俺とエイラの進展は知っていると思う。

 現に妹からはすぐ連絡きたし。

 

 「っと、もうこんな時間か」

 「だいぶ話しましたね」

 「この家は僕しか男いないからね、久しぶりに盛り上がっちゃったよ」

 「ぶっちゃけ、女一強ですよねこの家」

 「そうそう、特に母さんが怖いんだ」

 「……お察しします」

 「だが君が来た。いやあ仲間が増えた気分、正確には息子ができたかな」

 

 ソフィアさんも偶に謎のゴゴゴゴゴっていうオーラ出す。

 エイラは片手で大体のものぶっ壊すし。

 リリアナちゃんには、このまま純粋天使系で育って欲しいと切に願う。


 「そろそろ寝るとしようか。客室は分かるかい?」

 「はい。さっき教えてもらいました」

 「そうかい、まあエイラと同じ部屋じゃなくて申し訳ないけど」

 「ははは……」

 「自分の家だと思って、ゆっくりしてくれ」


 いい笑みで言うなダリオさん。

 ホントに信頼してくれてる感じ。

 有難いことだ。

 

 「じゃあお休み」

 「お休みです」

 

 フォード家の人たちは皆いい人。

 エイラが真っすぐ育った理由も分かった気がする。

 秋の夜の邂逅は万々歳。

 また1つ、大きく、そして温かい関係が生まれた日だった。

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