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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 7 -School Festival and Ring 《幻の思い現実に》-
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 世界を照らす青き光。

 銀は道と成り修羅へと通ず。

 待ち受けるのは相棒、そして己自身。

 根拠ない自信で駆けあがる。

 以心伝心の仲に今日は落雷、地震も起こして日常破壊。


 「とうとう来たな」


 身体に走る神力の廻り。

 高まる濃度、速度上昇、心の臓は数段先へ。

 心は矛先の如き鋭さ、背後に広がるのは岬。 

 荒れ狂う大観衆が大海となり、この身を前へと推し進める。


 「レネ!」

 『応とも!』


 試合はまだ始まっていない。

 ただレネは顕現させる、狂気を描くこの銀眼に力を注ぐ。

 フォーディメンション、3次元に超上が姿を現す。


 「エレネーガ様……」

 「我はユウの味方なのでな」

 「知っていますとも」

 「ならば良し。全力で叩き潰してやろう」


 俺の右隣にはレネが威風堂々と。

 また特注された試合服は何故か左手左足が露骨に露出。

 魔力を通したせい、左半身の刻印は紫に輝き、魔方陣を浮かび上がらせる。

 試合前、発動は一歩手前で静止する。

 瞬間で発動できるよう最高のスタンバイフェイズ。


 「————聖剣カリヴァーン


 それはエイラも同じこと。

 両手握りの聖剣、切先をこちらへ、殺気を滾らせ相対してくる。

 ギリギリ声の通ずる距離、ただ心は伝心。

 もう言葉は要らない、後は共にゴングを鳴らすのみ。


 『それでは! エキシビションマッチ、最終試合を行います!』


 膨れ上がる熱気と歓声。

 最初のパフォーマンスで大分盛り上げられたようだ。

 バリア越しでもそれが伝わってくる。

 

 「「「「「10! 9! 8————!」」」」」


 にしても生徒会長には感謝しなければ。

 なんせこの勝負に相応しい最高の舞台を用意してくれたのだから。

 見上げる上層階、お偉いさんが観戦するその席には、あの『聖女』がいる。

 雷槍や賢者の書と並ぶあの英雄がだ。

 彼女によって展開される障壁バリアは人類で最高クラス。

 心置きなく戦えるというものだ。


 「「「「「5! 4! 3!」」」」」


 時は近づき、姿勢は前のめり。

 構える両手、握りと開きの狭間で拳を向ける。

 エイラが剛だというのなら、俺は柔。

 森羅万象を体現する、変幻自在の性質だ。


 「「「「「2! 1!」」」」」」

 

 あとコンマ数秒。 

 エイラのこと、開始早々仕掛けてくるのは目に見えている。

 ならばまずは出鼻を挫こう。

 この学園誰しもが叶わなかった、拮抗というものを見せてやろう。

 俺の力にみんな脳みそぶっ飛びな。


 『————試合開始です!!』


 落ちきった10カウントの砂時計。

 そんな時間の砂を蹴散らす異次元スピードで、エイラはやってくる。

 踏み切ったその足は既に俺との中間点に到達する。

 早々に淘汰するか、やはりスピードに分があるのはエイラ。

 

 (でもよ! 中長距離戦において、負けるわけにはいかねえんだわ!)


 「押し返せ! 大地同調アース・シンクロ!」


 負けじとシンクロを刹那で発動する。

 足元領域に同調をかけ、会場を創り出している人工素材を変形、直径1メートル以上、長さは無限、円柱型の武骨なる鋼鉄棒。

 まるで大樹の根を操るが如く、円柱状の鉄槌を無際限にエイラに放つ。

 地中から生き物のように這い出て伸びていく、どれだけ粉砕されようとも、これは大地に立つ限り尽きることは無い。


 「レネ! 武装変幻!」

 「うむ! 今こそ天を穿とうぞ!」

 「「神刀・銀!」」


 エイラにぶつける鉄槌の嵐。

 ただ同調で伝わる感触は、粉砕されているの一言。

 しかしだ、数秒でも与えたならばレネを刀に変えるは容易だ。

 

 「刻印ルーンも起動! 力貸してくれよ師匠の魔力! 」


 右手に銀刀を、左手に紫の魔法陣を。

 身体を彩るのは青の粒子。

 漲る神力魔力、ランクというくらいを真向から喰らいつくす、空飛ぶつまりフライの感覚、最高の高潮感。

  

 『ユウ、来るぞ!』

 「そう簡単に近づけさせねえよ!」


 最終的に殴り合いになるのは必須。

 それまでに削って削って削って、出来ることならそのまま消し飛ばす。

 

 「幾戦の槍(ロッド・テンペスト)!」


 空に描かれる魔法陣。

 魔力とテンペストが混合、天上より風槍の豪雨を降らせる。

 エイラにめがけ殺す気で、地盤を揺るがし地を粉砕。

 躊躇なしで息継ぎの暇も与えない。

 お前から学んだ、圧倒的物量で勝利する脳筋プレーの1つ。

 決してまぬ風雨、決して止めぬ攻撃、決して俺は止まらない。


 「神力一発撃つぞ!」

 『溜めは十分じゃ』


 エイラが聖剣で極太の光レーザーを放ったが似たようなこと。

 俺の場合は銀に変換する前、単純な神力を弾丸として刀に内包。

 右腕には竜巻状に銀粒子が、一気に解放、放つのは銀の衝撃波。


 「————飛べや」


 エイラが居るであろう、風槍が降り注ぐ中心点に神刀を。

 槍を突き刺すが如く、刀は大気に風穴を開け世界を破壊する。

 パワーオブパワー。

 轟と音を立て直進、放った先に超爆発を巻き起こす。

 たち込む爆風、塵となったコンクリが肌に飛んでくる。

 若干目を細め、霧の中に真実を見出そうと————


 「強化ミラータ


 風を通じ俺の鼓膜にはアイツの声が届く。

 そして同時に歩む音。

 ゆっくり、ゆっくりだが、着実に強くなって近づいて————


 「強化強化強化強化強化強化強化、強化だ!」


 踏み鳴らす足音は金剛力士に匹敵。

 敵なし、適材適所を超えた強制適応性、全てに耐えうるように自力で進化する。

 俺みたいな神頼みとは違う。

 神がかりと形容できる程の独り修羅道。


 「開闢強化カルマ・ミラータ!!」


 爆風を一声、一気に晴らす。

 俺が先行していたはずの空気が一瞬で持ってかれる。

 敵として味合う本気のオーラ、つい一歩後ずさる。

 ただそこで踏みとどまる。

 立ち向かうしかないのだ、負けるわけにはいかないのだ。


 「全然効いてないじゃんかよ……」

 「そうか? 少し掠り傷は出来たぞ?」

 「それをダメージとは言わない」

 「まあいい。次は私の番だな」

 

 (あんだけ撃って掠り傷だけとは、予想はしてたけど、やっぱ心にくるもんがあるな)

 

 『ユウ』

 「戦闘は任せる」

 『かっかっか! ようやっと我が全力で剣戟できるのう!』

 「経験同調エクス・シンクロ


 レネの経験を流入。

 戦神たる技術が俺に宿る。

 その技、我流にして隙は無し。

 レネ曰く、レネだけが使える最強の武、極みまで辿り着いた絶対の領域。


 「「勝負!」」


 風に同調、エイラの神速に後れを取らないよう神力も回す。

 すぐに衝突する。

 どんなに距離が空いていようとも、身体も心もすぐ埋る。

 互いが互いを熟知、剣戟と決めたなら即実行。


 「破!」

 

 エイラの聖剣はとてつもない大振り、しかしその動作のまあ早いこと。

 気付いた時には頭上を通過していた。

 俺の反応では間に合わない。

 レネの経験がなければ今ので首が飛んでいた。


 「まだまだ私は強くなる! 神だって越えていく!」

 「っ大気同調!」


 空を描く剣と刀、風圧だけで身体が持ってかれそう。

 少しでも気を抜けば、死ぬ。

 凝縮されたような時間の感覚、間髪入れずカウンターにカウンター。

 紙一重なんて幅もなく薄皮1枚。

 閃光し交差し意思を咬ませ合う。

 聖剣を受けるごとにジリジリと腕に衝撃、まともに打ち合っていればこっちが潰れる。


 「重力同調グラビティ・シンクロ!」

 「っむ!」


 重力をピンポイントで同調。

 意識を研ぎ澄まし、持ち得る最高の技術を。

 エイラに加重をかけ、少しでも動きを鈍らせる。


 「気合い強化!」


 だがそんなことはくだらないとばかり、エイラは気合いだけで元通りの動きに。

 むしろもっと加速しているような。

 なんて不合理。

 俺に神様がついていて、魔力があって、同調があって、それで反則?

 いやいや、コイツの方が————


 「チート過ぎだっつの!」


 あらゆる経験を活かし、誰にも到達しえない極みを疑似再現。

 かわした聖剣に肝を冷やしつつも、凍ることは決して無い。

 目の前に対峙するエイラの眼は輝き始めたばかり。

 その楽しそうな、嬉しそうな笑みを見ているとこっちも笑ってしまう。

 笑い納めはまだまだ早い。


 「私が最強だ!」

 「じゃあ俺がその看板降ろさせてやるよ!」


 狂喜乱舞。

 頬を聖剣が掠り鮮血が舞う。

 口の中にも塵やら血やらが唾液と混じる。

 混じったところでなんのその。

 ビリビリ回る脳の回転数、痛みは何処かへおいてきた。

 

 「私の名は、エイラ・X・フォード!」


 千剣千刀、加速していく削り合いの中でエイラは名乗る。

 なんの真似か、そんな情報とうに知っている。


 「私は名乗った! 次は、お前の番だ!」


 思い出す、最初の出会いを。

 不法侵入というだけで殺されそうになったあの時。

 あの月夜もエイラは俺に尋ねた。

 この問いかけに悩む暇はない、直感で感じる。

 ずっと一緒に歩んだエイラ、俺に飛び越えるチャンスをくれたんだと思う。

 原点回帰、今までの勝敗はチャラに、戦いは振り出し、もう先輩後輩隣人もあったもんじゃない。


 「俺はユウ! ユウ・ヨンミチだ!」


 俺の名乗りにエイラも笑みと剣で応える。

 感謝する、ここまで連れてきてくれて。

 ただ今度先に行くのは俺。

 烈火の如きこの戦い、それはまだ始まったばかりだ。

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