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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 7 -School Festival and Ring 《幻の思い現実に》-
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 「サリーはガムテープを調達して、アリエルは教務課にこれの許可を、あなたは————」


 学園祭まであと4日と迫り、準備も大詰め。

 ルチアの指示が教室を駆け巡り、皆テキパキと動く。

 やっぱり彼女は上に立つ才能というか、気質というか、そういうものが備わっていると感じる。


 「ちょっとトニー! 作業ペースが遅いわよ!」

 「これでも頑張ってるっつの!」

 「どの口が……! さっきからお喋りしてるからじゃない」

 「だってよユウ、気を付けろ」

 「俺に振るのは止めてくれ」


 俺とトニーに与えられた仕事は飾り作りという地味なもの。

 紙で輪っかを作って鎖状に、はたまたラミネート作業であったりと。

 ちなみにさっきまで一緒にいたザックは、ルチアのめいれ、お願いで買い出しをしに行っている。

 溜息つきながらルチアは次の現場へ。

 残る俺たちは駄弁りながらのちょこちょこ業務だ。


 「そういやエキシビションマッチのこと聞いたか?」

 「ああ確か……」

 「フォード先輩と特別に戦えるってやつだ」

 「……エイラと試合ねえ。参加資格はあるのか?」

 「いいや無いぜ。1人だけでも、小隊5人でも、勇気があればどんな奴でも参加出来る」

 

 曰く生徒会がメインに執り行うビックイベント。

 若手で最強とされるエイラ・X・フォードと試合をさせてもらえるというもの。

 目にすることはあっても、戦える機会は滅多にない。

 ただ1人で挑むバカはいない、みな小隊単位で挑むはず。

 

 (つまりは1対5、まあ去年の会長の小隊レベルじゃなきゃ瞬殺されるだろうけど)


 前会長のカルロは既に大学へと、今の生徒会長はカルロ会長の元小隊メンバーだった人だ。

 そんなギリギリ張り合えるかの対抗馬もいない。

 エイラの強さ知っている2、3年は参加しないだろう、なんせ一方的にボコられるだけだし。

 ただ今年の1年なら、挑む輩がいるかもしれない。

 いやいるのだろう。

 でなければ企画がそもそも成り立たない。


 「俺は誘われなかったんだが……」

 「そりゃフォード先輩にユウが加わったら無理ゲーじゃんか」

 「エイラ単体でも勝ち目無いと思うんだが」

 「まあな。でもよユウがいないんなら、ほんの少しの希望があるってもんだぜ」

 「そういうもんかねえ……」


 確かに俺とエイラで世界は獲った。

 ただエイラ単体だろうと、俺が加わっていようとも結果は変わらないはず。

 それなら経験させるという意味で、俺を混ぜてもいいと思うんだが。

 いや愚痴言ってもしょうがない。

 普段そんな学校に貢献しているわけでもなし、こういう時だけ文句言うのもあれか。

 黙って生徒会の裁量に任せるとしよう。


 「いっそユウが参加すればいいんじゃね」

 「チャレンジャーとしてってことか?」

 「おうよ。むしろ勝ち目あるのお前くらいだし」

 「冗談よしてくれ————」


 トニーは軽く冗談、つまりはジョーク。

 俺がエイラと試合だなんて今更だろう。

 いや、本当に今更か?

 嫌ならば忘れる、しかしあの色彩豊かな戦いはしっかり脳裏に、思い返せば半年も前のこと。

 そこから手合わせ兎も角、本気の戦いはやってない。


 (ただ俺はいつもエイラと一緒に居るし、今回はお遊びみたいなもの。それこそ誰も参加者いなかったら、出る考えてもいいところだ)


 この試合はオールスター戦みたいな遊戯物、中途半端に俺が出るのはお門違い。

 挑戦者皆無なら出てもいいが、しかしトニーの話をより聞いてみれば、1年生の上位陣は既に参加を決めたそう。

 ならば俺に役目は無し、静かに見守るのみだろう。

 

 「にしても全然減らねえなあ……」

 「文句言うとルチアに怒られるぞ」

 「へいへい、てかアイツはカルシウムが足りなすぎ。だからオッパイも成長しないんだ」

 「……」

 「オッパイの大きさは心の広さの表れってな」

 「……トニー」

 「ん?」

 「後ろ……」

 「後ろって、うお!?」


 君の後ろで真っ赤に燃えた般若がいるんだよ。

 忠告は間に合わない。

 メラメラと熱気が、頑張って作ったペラペラ紙飾りが燃えてしまう。

 漂う焦げ臭さ、これはマジ怒りだ。


 「胸がそんなに重要かしら?」

 「ま、待て待てルチア! 国によってはお前のペチャパイも逆にモテるぞ!」

 「……最期に残す言葉はそれだけかしら?」

 「ちょ、ちょっと! ユウ助けてくれ!」

 「俺、飾り作るのに忙しいんで」

 「お前裏切っ、ぎゃああああああああああああああああああ!」


 トニーはよく燃えるなあ。

 裏切りというが、俺はルチアの胸を貶したことはない、本当に本当にだ。

 プスプスと音を立て目の前に焦げ臭い男が。

 短めの金髪も見事に焼けている、まさしくウェルダン。


 「たのもおおおおおう!」


 恒例の光景に衝撃を忘れつつ、今度は黄金の嵐が到来。

 あらゆる観衆の眼を惹きつける美しさ、腹から轟く高い音色。

 扉は勢いよく開け放たれ、ある種の静寂を生む。

 ただこのエイラ襲来にクラスは忙しさ故一瞥、そして何事も無かったように作業に戻る。


 「来たぞ!」

 「いや、そもそも呼んでないんだが」

 「寂しいことを言ってくれる……」


 トニーと喋っていて、こう言うのもなんだが、今は当日まで間に合うかの瀬戸際。

 忙しさはマックスゲージ。

 これは魔物退治ではなく文化創造、わざわざエイラを呼ぶはずも無い。


 「フォード先輩はクラスの手伝いとかないんすか?」

 「いやな、私も手伝おうと思ったんだ。しかし、みながユウのところに遊びに行ってきなと言うのだ」


 (((押し付けられた……)))


 忙しい中で遊んできな、その理由はだいたい察しつく。

 俺を口実にしちゃいるが、なんだかんだエイラ不器用だし、どうせ力加減誤って色々破壊したんだろう。

 ただ本人に悪気はなく、頑張ってやろうとしていることは分かる。

 だから邪魔とも言えず、こうして我がクラスへと追いやったというわけだ。


 「ヨンミチ、仕事変更よ」

 「なにするんだ?」

 「フォード先輩と買い出し行ってきて」

 「買い出し? ああ、なるほど」


 言い方悪いが此処で何かを壊されてもたまらない。

 買い出しついでに外に行けというわけか。

 しかしそれは俺にとって好都合。

 地味な作業にも飽きてきたし、いい気分転換になりそうだ。


 「あのー、ルチアさんによって飾りが幾つか燃えてしまったんですがー……」

 「あんたは死ぬ気で作り直しなさい!」

 「そんなあ……」

 「私は器が小さい(・・・)の、仕方ないでしょ?」

 「は、はい……」


 どうやらルチアの怒りはトニーがなんとかしてくれそう。

 巻き込まれない内に街へと出ることにしよう。


 「さて俺たちは買い出しに行くか」

 「うむ!」


 暗黙の了承、今日一杯は外で時間潰してオッケー。

 外見れば、日の出具合もまだ余裕ある様子。

 街ではそこそこの時間過ごせるだろう。


 「アイス!」

 「もう秋なんだが……」

 「なら温かい食べ物!」

 「はいはい」


 買い出し名目に、学園を飛び出す。

 学園が城なら街は城下町。

 脳筋姫と共に刹那の旅に出る。

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