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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 7 -School Festival and Ring 《幻の思い現実に》-
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 「じゃあ主席ちゃんとは知り合いでもなんでもないと?」

 「一言二言会話しただけだな」

 「なら一体何の用だったんだろうなあ」

 「俺が聞きたいよ」


 12時を振り切り午後へシフト。

 ふと思い出したと、トニーがアウラ・ルティーニ訪問のことを話す。

 何やら俺に会いに来たらしいが、あいにく席外し。

 内容は検討つかない、アポ無しだし。

 顔出しの帰国初日に、刀を見せてとお願いしたくらいの仲。

 冗談でも友達、何か話するような後輩と言える存在ではない。

 

 「にしてもアウラちゃん可愛かったなあ」

 「まーたその話っすか」

 「ザック、何言ってもコイツの思考は変わんないぞ」

 「知ってるっすよ。でも呆れるもんは呆れるっす」

 

 何時まで経っても煩悩まみれ、ケジメを忘れ抑制を取っ払い、すぐ言葉に変える。

 そんなんだから女子から変態扱いされるんだ。

 

 「若干冷たく気怠そうな瞳! それでいて淡泊な会話! そこに顔のコントラスト! 最高に良い!」

 「はいはい」

 「わかったっすよ」

 「……お前ら枯れてんなあ」

 「トニーは元気すぎっす。それと順番きたっぽいすね」


 今(おこな)っているのは短距離走。

 いわゆる体育の授業、能力を使うわけでもなく単純に走る。

 一定間隔を空け順番待ちの状態、昼食後というのもあってペースはノロノロと。

 軽く駄弁りながらカリキュラムをこなしていく。


 「ユウから見て今年の主席、そのルティーニさんとやらはどうすか?」

 「どうって言われてもなあ」

 「ほら能力的にとか、技術的にとかっす」

 「身のこなしは良さそうだった、あとは能力だけど、まあそこそこ良いと思う」

 「適当な物言いっすねえ」

 「いやホントホント、1年生(・・・)にしては強いと思うよ」


 電撃系と刀使うもんだから、周りからは『雷侍』なんて呼ばれているらしい。

 ただ外発系は全て同調で防げる。

 体内臓器の強化出来るらしいが、エイラに比べりゃお遊戯と同義。

 刀の扱いも国際戦であった奴等に比べりゃ甘いはず。

 後れを取るなんてことはない、と思う。

 

 (けど次席も含め、パッと見だが今年の1年生は有望な奴が多そうだ)


 「というかよ、ユウに勝てるのなんてフォード先輩ぐらいだろ」


 ペースは循環、会話にトニーも参加。

 辛口で適当らしい俺の評価にツッコミを入れてくる。


 「分かんないっすよ! ユウっち正直、今だったらフォード先輩に勝てる見込みあるんじゃないっすか?」

 「難しいところだな。絶対に勝てないとは言わないけど……」

 「なんだ下剋上か!?」

 「いや厳しい、相性的にもスタイル的にもな————」


 約半年前は否応なく半殺しにされた。

 ただその時とは違い、俺にはレネと、刻印の風がある。

 しかしそれを加味してもだ。

 1対1で戦って勝てる可能性は低いように思われる。


 「フォード先輩を同調してさ、動きを止めたら勝てるんじゃね?」

 「いや無理だな。あれはお互いの感情を合わせないと出来ない、拒否られれば不発に終わる」


 確かにエイラ自身と同調はできる。

 ただそれにはお互いの心を通わす必要がある。

 心は露わにするだろうが、タイマンとなればガッチリガード。

 壁があるなら身体に同調は行えない。


 「じゃあっすよ。銀神様の力とか、魔槍の方はどうなすか?」

 「そっちもなあ————」


 外発能力を封じる銀世界も、エイラの強化には意味をなさない。

 むしろシンクロや魔槍を封じる結果となり、逆に俺を不利にさせてしまう。

 ならば銀刀で聖剣を銀にし効力を失わせる、それも厳しい。

 レネぐらいの神力量だったら聖剣を銀に変えられるだろうが、俺如きの神力量では不可能だ。


 (戦闘においても、レネの経験を同調してやっと戦えるレベル。それにしたって神力量の消費が激しすぎる)

 

 巨大主砲たる刻印魔槍ルーン・テンペストもあるが、これには莫大な神力を使う。

 ただでさえ燃費悪いと言われているのにだ。

 もし撃てたとしても、エイラの本気の強化は、月との激突を可能にしてしまうレベル。

 そこにお得意の脳筋魂、気合の力が混ざれば、まさかアイツがワンパンで倒れるわけもない。


 「つまりは決定打がないと」

 「ないってわけでもないんだが……」

 「え!? あるんなら使えばいいじゃないっすか」

 「レネを召喚してレネに戦ってもらう、をか?」

 「確かに、タイマンでそれは情けねえなあ」

 「だろ? 銀の力を使うはともかく、まさか代わりに戦ってもらうってのも————」


 生命の危機ならまだしも、エイラとの戦いで使うべきではない。

 隣に立つという目標がある。

 あくまでレネは俺の一歩後ろで、主役は俺だ。


 「となると長期戦は必須っすね」

 「ああ。それが厄介なんだ」


 先手で決まれば良し。

 ただ決めきれなければ、ドロドロの泥沼戦。

 状況的には俺の不利は明らか、神力も魔力もゴリゴリ削られるし、その中でエイラの剣戟は止まらない。

 同調する力も周りに無いことだし、超短期戦でしか勝機は見いだせない。


 「何時かはユウに勝って欲しいもんだ」

 「そっすねえ」

 

 言われて思う、それは何時だろうか。

 漠然としている、果てなき砂漠が続く、何処に埋っているのかダイヤモンド。

 明日今度、そうやって追いかけた先に宝石は存在しているのか。

 俺はずっと探している、あるはずなんだ。


 (もし仮に無かったとしても、その時は————)


 「死ぬ気でやって、無理やりにでも結果を創り出すよ」

 

 かつてのフランスの英雄は言った『余の辞書に不可能の文字は無い』と。

 まさしくその通り、思考の無駄遣い、今は必死に走るのみだろう。

 

 「あ、順番きたっすね」

 「面倒くせえ」

 「止まってる暇ないぞ」

 「分かってるよー」


 感情だけじゃなく、足も動かす。

 単位だって落とすわけにはいかないのだ。


 「……トニー、ザック、勝負をしよう。負けたやつはジュース奢りで」

 「へえユウが吹っ掛けるなんて珍しい」

 「いっすよ! 能力ないなら勝てる見込みあるっすから!」

 

 勝負してなんぼの世界。

 挑まなきゃ勝利は絶対に訪れない。

 いや、訪れるなんて生易しくもなく、この手で掴み取らねばいけない。

 トニー達にエイラと戦って勝つのは厳しいと言った。

 その通り、言葉に嘘はない。

 だがもし次に戦う時があるのなら、俺は全力で、今までの全てをぶつけて勝利を取りに行く。

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