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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 7 -School Festival and Ring 《幻の思い現実に》-
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 時はネクスト。

 留学終了の報告を終え、エイラと久しぶりの再会。

 折角だからと飯を奢るが、いやはや、稼いだ金が面白いように消えていった。

 まあエイラも喜んでいたし、後悔はない。

 それを昨晩とし、日は回って新たな1日。

 今日から本格的に真面目な学校生活の始まりだ。


 (皆と会うのは久しぶりだ、若干緊張する……)


 クラスは1年生からの持ち上がりで面子に変化は無し。

 ただ、やはり顔を合わせてないだけあって少し気まずい。

 1つ上の階へ、すれ違う生徒は振り返る、そんなに俺が居るのが珍しいのか。

 視界に入る2年A組の教室、時間的には大体皆いるだろう。


 (ふう……)


 つい扉の前で突っ立ってしまう。

 別におののいても臆してもいない。

 そういう意味じゃなくてだ。

 エイラで最実感したがここでも、俺は帰って来たんだと再々確認。

 

 (よし、行くか)


 脳から電流発信、神経を通り腕へと行動指示。

 行くなら行く。

 躊躇うことなく一気に扉を開ける。


 「おはよう」


 開口一番はあいさつでスタート。

 先ほどまで、外からでも聞こえていた喧噪は止み視線は集中。

 注意する先生が現れたかのように一瞬空気が固まる、が————


 「おっユウじゃん」

 「久しぶりっすね」

 「お土産は!? お土産ある!?」

 「そんながっつくとすぐ太るわよアリーナ」

 「ルチア説教うるさい、そんなんだから何時までもペチャパイ……」

 「今なんて言ったかしら!?」

 

 固まった空気は直ぐに融解、友人たちは愉快そうに軽口叩く。

 もっと驚かれると思っていたが、予想外だ。

 しかもトニーやザックだけではなく、他の連中もたいして反応示さない。

 

 「……あ、あれ?」

 「なんだよ気の抜けた顔して」

 「いや、意外と反応薄いなあと……」


 驚かれなさすぎて、逆に俺が驚いてしまう。

 サプライズってわけじゃないが、多少のプレゼン魂はあったのだが。

 

 「実はユウ君帰って来てたの皆知ってるんだよ」

 「そうなのか?」

 「ついでに何で居なかったのかもね」

 「そうだぜ留年野郎!」

 「っぐ……」

 「これからは俺! トニー・モーガスのように真面目に授業を……」

 「同調シンクロ

 「ぎゃああああああああああああああああああ」


 トニーが調子に乗り始め、それにイラっとしたので空気弾をぶつけとく。

 ただ真面目に取り組むという点は心底理解させられた。

 これからは心入れ替えて勉強するつもり、たぶん。


 「ただ俺は昨日学校来たけど、知り合いには殆ど会ってないぞ?」

 

 留年留学の話は兎も角、友人に会った覚えはない。

 知り合いで会ったのはエイガー先生くらい。

 いや待てわかった、普通に考えて当然の推理————


 「エイガー先生が俺のことを皆に言ったわけか」

 「まあ、それもあるっすけど……」

 「?」

 「俺っちだけじゃなくて学園中の人間みんな知ってるっす。理由は————」


 どうやら秘密を晒したのは先生だけじゃないようだ。

 ザックはおもむろにカバンをゴソゴソと漁る。

 一体何を取り出そうというのか。


 「じゃじゃん! これっす!」

 「これは……」

 「学園新聞っすね。昨日の特別速報刊っす」

 「まじかよ……」


 曰く昨日の午後、新聞部なる連中が緊急速報と銘打って新聞を発行。

 どうやら俺が1ヵ月半ぶりに学園に帰って来たことを特集しているようだ。

 ただ名目なんてものはどうでもいい。

 問題はその見出しと写真だ。


 「着くと同時にエイラ・X・フォードと熱い抱擁、手を繋ぎ街へと消えていく、ってなんだこりゃ!?」

 

 どこの週刊誌だよ、写真もハグしてるやつだから誤報には感じさせない。

 しかも滅茶苦茶いい角度、シンクロでも気付けないパパラッチがこの学園にはいるというのか。


 「ニヤニヤですねえ」

 「ニヤニヤっす」

 「ニヤニヤだなユウ」

 「同調シンクロ

 「ぎゃああああああああああ! なんで俺だけええええええ!?」

 「……なるほど、これが昨日の内に出回ってると」


 トニーに軽く攻撃仕掛けつつも、なんて記事だよホント。

 ここに来るまでの生徒の視線が若干異質だったのはこれのせいか。

 生活に大して支障は出ないだろうが、この写真には少し照れる。


 「あー諸君おはよう、今日もいい天気だなあ」

 「エイガー先生……」

 「おうヨンミチ。早く席に座れ、じゃないとニヤニヤしちまう」

 「アンタもか……」

  

 気付かず間にこのクラスは俺にアタリが強くなったと感じる。

 まあ大人しく座りますとも、なんせ真面目になるんで。

 当分はサボる気も無いし、トニーにこれ以上バカにされるのは御免だ。


 「バレンデッリ、学園祭の方は進んでるか?」

 「大体問題ないです」

 「何かあったら言ってくれ。その時は手伝う」


 学園祭についてはルチアが仕切っているらしい。

 彼女の性格なら適任だろう。

 しかし思えばだ、学園祭がある以上このクラスもナニカやる、はてさて何をやる?


 「トニー」

 「なんだよ」

 「うちって何をするんだ?」

 「ふっふっふっふ」

 「な、なんだよ急に……」

 「ズバリ! メイド喫茶だ!」

 「……またテンプレな、日本の高校生かよ」


 しかしメイド喫茶か、メイドを考えるとシルヴィがどうしても浮かんでくる。

 彼女には魔王連合戦の時に新しいメイド服を買うと約束した。

 なんせエイラが酷い恰好だったもんで、無理言って借りた。

 当分学校はサボれないが、場所的にはそう遠いわけでもない。

 休みに余裕あればフランスにも向かわねば。


 「クラスの女子が着るんだぜ! メイド最高!」

 「炎細剣グレムリン

 「あっちいいいいいいいい」 

 「五月蝿いわモーガス、一体誰のせいで……」


 後に知ることになるが、このメイド案はトニー筆頭に男子勢が押し切ったらしい。

 ただ女子もあまり嫌がってる素振りもなく、アリーナなんかは寧ろ着たいそう。

 まあルチアは抵抗あるみたいだけど。

 そんなルチアの熱い仕打ちを受け、少し焦げ臭いトニーがキラリと目を輝かせこちらを向く。

 きっと良からぬ事を思い付いたのだろう。


 「なあユウ、俺たち友達だよな?」

 「エイラはメイド服着ないぞ」

 「いやいや、今回はフォード先輩じゃない」

 「ならなんだよ」

 「そ、その、エレネーガ様にメイド服着てもらいたいなあ、なんて?」 

 「「「「「————————」」」」」


 すまない、本当に言葉を失った。

 ツッコムどころか、もはやリアクション1つ取れない。

 こんなに衝撃的でショッキングなお願いを俺は聞いたことがない。

 それは周りも一緒、流石の男子連中も恐れ慄く。

 女子に至っては真顔のドン引きだ。


 「モーガス、お前は良い奴だったと先生思っているぞ」

 「ええ!? なんすかその別れの言葉みたいな台詞!」

 「さらばっすトニー」

 「ザックまで!? なんだよお前らエレネーガ様のメイド服姿見たくないのかよ!?」

 「「「「「…………」」」」」

 

 ここで否定できないあたり、男共はやはり見たいのだ。

 それは俺も例外じゃない。

 エイラのメイド姿は一度見てるし、レネが着たら面白そうだ。

 今までの会話は脳の神へと筒抜け、もちろん返事が返ってくる。


 「興が乗ったら、だって」

 「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお」」」」」

 「見たか! まだ可能性はある! お前ら俺についてこい!」

 「「「「「アイアイアサー」」」」」


 (なんかバカが増えてる気がする)


 意外と前向きな返答きたもんだから皆大盛り上がり。

 トニーの英断を褒めたたえる。

 まあ女子は一層冷たい眼を向けているが。

 そんな極熱極寒になった教室には平等たるチャイムが鳴り響く。

 懐かしい、授業の始まりを告げる、この学園の音だ。


 「ホームルームはグダグダになったが仕方なし、授業を始めるとするか」

 

 ちょっと怠そうにエイガー先生は開口し出す。

 これも馴れた風景、受けるのは本当に久しぶり。

 秋風吹く空の下、セント・テレーネ学園での日常が再び始まった。

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