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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 6 -Disturbance of New York 《突風のアルマゲドン》-
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 「しっかし本当に単騎でくるのか?」

 『赤の気質上そうじゃろうな。それに科学とやらもそう捉えておるのだ』

 「まあ信じとくしかないんだけども」

 『仮に集団で来ようなら羅刹の槍を放てばよいだけの話よ』


 10月初旬から中旬の微妙な狭間。

 もとは大事な案件と呼ばれていた今日、それは王様到来の日。

 シェルター起動、政府の避難誘導は急ピッチ。

 エリクソングループが仕入れたであろう迎撃兵器も発射体制へ。


 『ヨンミチ様、赤の王を確認しました』

 「到着時刻は?」

 『あと150秒後です。上空より巨大な熱源を伴って来る模様、警戒してください』

 「了解」


 俺が居るのはエリクソングループの本社、その屋上だ。

 身体に吹き付ける風もヒンヤリと、乾いた大気が唇を掠める。

 斜上に向ける視線、天気は青空に多少の白雲。

 無線で入った内容じゃ、ついに赤の王を確認、またそれ以外にもナニカでかい反応を得たそう。

 ただ生物ってスケールじゃないらしく、おそらく奴の能力によって生み出されたものだろう。


 「————いよいよね」


 此処に佇むのは俺だけじゃない。

 ここを城と構える主、そして今回彼女を守る新たな守護者複数。

 ニューヨークを見渡せる頂上の位置。

 

 「結局私の色式カラーは何も起こせなかったけど……」

 「気にすんなって。元々シャーロットに戦わせるつもりは無いし」

 

 原初兵器アトランティス召喚に至る糸口は見つからず。

 むしろ糸の細さどころか、穴があるかも怪しい。

 穴無しシワ無しの黒い紙、包装された中身を取り出すことは叶わなかった。

 ただその事象は俺自身に何も関与せず。

 相手に開けられない限りは、まったくもって問題無い。

 

 「気になるのは赤の王の強さだな」

 『そればかりは、我も会ったことないから分からんのう』

 「エルフ最強とされた統一王の息子、ちょっと楽しみだな」

 『かっかっか、期待しすぎてガッカリするかもしれんぞ?』

 

 レネ曰く期待しすぎだとのこと。

 でも滅多に見ないエルフの王様だ、弱いはずがない、少なくとも俺はそう思ってる。

 赤は力の象徴らしいが、果たして俺の相棒よりも重い一撃を持っているのだろうか。

 身体はスタンバイフェイズ、フェイクの仮面は取り外す。

 同調シンクロ刻印ルーン銀神レネ、全てのリミッターを解除。

 

 『来たようじゃ』

 「みたいだな」


 風が、レネが、赤い色を空に捉える。

 ここで巨大な熱源の正体が判明、なんとそれは————


 「い、隕石!?」

 「なかなか洒落たことするなあ」

 『そうじゃのう。色式特有の違和感、十中八九能力によるものじゃろう』

 

 なんと赤の王様は飛行機ではなく隕石に乗ってきた様子。

 メテオアタック、ゲートブレイク、男は真正面から門を飛び越えてきた。


 「ユウ! どうするのよ!」

 「慌てるなって、女王様は堂々と見てろ————」


 力づくで粉砕しようものなら、砕けた破片が街を潰すことに。

 これで事前に用意していた科学兵器は使えそうにない。

 破壊がだめなら次の手を、シャーロットの瞳、その青さは大海を知らせる。


 「そろそろシンクロ圏内か」

 『我も手伝おう、流石に重かろうしな』

 「助かるよ」


 顔も知らぬ王乗せたメテオが刻々と迫る。

 てかよくよく考えたら赤の王様は隕石をニューヨークに突っ込ませる気ってことだろ。

 許すまじ精神、与えるは鉄拳制裁、果てなき暴力と才能の塊だ。


 「————命名、隕石同調メテオ・シンクロ


 突き出す両手、視界の中、段々と大きくなる岩に青き粒子を放つ。

 なかなか濃い赤がかかっちゃいるが、構うことはない。

 ナメたやり方には、目を覚ます強烈な一発を。

 

 「同調完了、完全掌握」

 『かますぞユウ!』

 

 全身漲るパワー、ぶっ飛ぶ狂気の頭、進化するこの身体。

 神様働く永久機関を乗せた心臓がシンクロをさらに高める。

 隕石の解析は済み、加速するそれは既に俺の手中。

 

 「メラメラ赤く燃えてるしな! まずは海にでも入って来い!」


 アルゼンチンバックブリーカー並みの担ぎあげ。

 進行方向、進行速度が乱れ始める、そのまま場外へ。

 俺の背中の先、バミューダ諸島臨む大西洋へと叩きつける。

 バックブリッジ、神力も相成ってパワー勝ち。

 加速度とか慣性とか摩擦とか、物理理論を拳でたたき割る。

 

 「————酷い出迎えだな」


 だがメテオの持ち主は海水浴へは向かわず。

 赤い色を纏い空中へと留まる。

 

 (なるほど、軽い飛行ぐらいは出来るってかんじか)


 「お初にお目にかかる。真紅族が王、グレン・アクスキアである」


 でっかい声、こんなに距離があるってのに、一体どういう声帯してんだか。

 見た目は20代後半の印象、名乗った通り髪も眼も真紅に染まっている。

 ここで俺が名乗り返してもいいが、やっぱここは大将からが常。

 流石にシャーロットの声だけでは届くまい、シンクロの風を使い人為的に声量を増加させる。


 「私はシャーロット、シャーロット・エリクソンよ!」

 「一目で分かった。その青眼、ラフィールの娘に違いあるまい」

 

 家系図的には叔父と姪の構図、しかしそんな生温い常識は此処で通じるか。

 そんなことあるわけもない。

 なんせ初見で隕石をニューヨークに落とそうとするイカレタ男。

 何が人前に出ない種族だよ、こんなに出しゃばる奴もそうそういないぞ。


 「単刀直入に言うわ。大人しく退きなさい」

 「たかが小娘が、生意気な口を叩くものだな」

 「何時までも年齢に囚われてる方がバカらしいと思うけれど? それとも穴グラに居すぎて脳みそ小さくなってるのかしら?」

 「っな……!」

 「世界に出られないお山の大将。赤の王、その器じゃコーラのSも入らないわね」

 「貴様! こちらが————」


 シャーロット節が炸裂、爆裂はグレンに触れんとする。

 実際接触した、導火線には火がついた。

 挑発に乗ったどこぞの大将さん、その手に赤い粒子が集まる。 

 ただ蓄積も束の間、思いのほか早い速度で弾丸が放たれる。


 「能力同調アビリティ・シンクロ

 

 大気に泳いだ弾丸を捕まえる。

 まさに真っ赤な金目鯛を釣り上げる、新世界に魅せられる。

 赤の王、その色式を体験しつつ反射、持ち主へとお返しする。


 「変幻……!」

 「嬉しいねえ。俺のこと知ってもらえてるとは」

 「貴様が居なければ楽に済んだんだがな!」

 「そりゃ申し訳ない。なら頑張ってくれ、俺は負ける気全然ないからさ」

 

 リミッターは全て外した。

 相手は人外にして障害、つまりは殺す気しかない。

 全身全霊で全力全開、全部が全部全力投球。

 俺の投げる球、1球1球に魂の塊が籠ってる。

 

 「ソロ戦は久しぶりだ。見せてくれよお前の実力を」

 

 既にシャーロットの声を拡散する風は解いた。

 いくら説いたところで話は通じるわけもない、殴って分からせるが最善手。

 脳みそグチャグチャになるくらい溢れる狂気のパワーマインド。

 そんなに赤が好きなら真っ赤に染めてやる。

 一生起き上がれないよう血の海に沈めてやる。

 滾った滾った、それこそ煮えたつくらいに。

 

 「この前の秘密男の借り、ここで返させてもらうぜ————」

  

 

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