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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 6 -Disturbance of New York 《突風のアルマゲドン》-
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 大会途中放棄でこの身を走らせる。 

 タクシー捕まえる精神的余裕は今持ち合わせていない。

 西遊記に倣い風を筋斗雲の如く。

 シャーロットを引き寄せ向かうのは、エリクソングループ本社ビル。

 

 (このあときっと事情聴取されるんだろうけど————)


 なんせ新人戦をぶっ潰し、レネを召喚、謎のテロリスト集団と戦闘を繰り広げた。

 しかも相手は国際指名手配される首無し(ノー・ヘッド)炎煙スチーミング、そして正体現した赤エルフ。

 数時間後に政府の役人に拘束されようとも、俺は突き進まなきゃいけない。

 ホームズみたいな美しい謎解きの手管は持ち合わせ無し、ただ真実を求めようとする姿勢は一緒。

 武骨に、されど真っすぐに、俺たちは推理を始める。


 「あ、ここよ!」

 「了解」


 シャーロットの案内に従い飛行、そして到着、地面へと降下する。

 まるでUMAが飛行船から飛来か、そんな周りからの視線が集まってくる。

 だが気には留めず、なんせ秘密が知りたくて知りたくて仕方ないから。

 正面進出するエントランス、そこはスーツ姿が行きかうある意味大通り。

 垂直に並ぶ受付、共に一方通行、群衆の中から突出する。


 「いらっしゃいませ。本日は……」

 「シャーロット・エリクソンの急務だ。チャールズ・エリクソンに会わせてくれ」


 受付に見せるシャーロットの学生証。

 これで本物の娘だということは理解したはず。

 

 「……社長は今大事な商談中でして、終わるまでお待ち頂いてよろしいでしょうか?」

 「どれくらい待てばいいの?」

 「そうですね、あと1時間といったところでしょうか」

 

 どうもまだまだ絶賛会議中とのこと。

 シャーロットが命の危機ぐらいだったら、会議を抜けて会いにきそうもんだが、いかせんシャーロットは元気ビンビン。

 それに俺もそこそこ顔の知れた能力者、そいつが隣に居て今がピンチだとは到底思えないのだろう。

 まあピンチといっても、事実俺たちは別に死にかけてるってわけでもない。


 (ただ政府連中に動かれる前に真実だけは聞いときたい)


 どれほどの期間拘束されるかはわからない。

 しかし俺は良くも悪くも目につくことは理解している。

 例として挙げれば、吸血王の時の事情聴取は本当にしんどかった。

 そうなる前に辿り着かなくては。

 

 「取り次ぎもできないのかしら?」

 「申し訳ありません。緊急のこと以外は職務中連絡するなとのことで」

 「これは緊急なんだけど……!」

 「で、ですが————」


 そりゃ俺たちは話を聞きたいだけだ。

 これは一方通行の感情、受け付けられないのも無理はない。

 やはり常識という鎖が俺たちの侵攻を食い止める。


 「なあ受付さん、これだけは聞かせてくれ。社長は最上階にいるのか?」

 「えっと……」

 「教えてくれれば、もうこれ以上の抗議しないと約束する。だから教えてくれ」

 「ちょっとユウ!」

 

 教えてくれれば言葉で盾つかないと約束する。

 台詞に妥協と限定の意味を持たせたとき、人は揺らぐ。

 赤の他人なら兎も角、チャールズの愛娘、それならばと。


 「社長は、100階の会議室にいらっしゃいます」

 「なるほど100階ね」

 「では約束通りフロント奥の待機室で……」

 

 社長の娘という立場あって、待つ場所を提供してくれるようだ。

 此方が大人しくなるということで、受付のお姉さんの表情は一層ニコニコしてる。

 だが申し訳ない、その笑顔はすぐに凍り付くことになるぞ。


 「よし、会いに行くぞシャーロット」

 「お、お待ちください! 教えれば待つと……」

 「待つとは言ってない。抗議しない(・・・・・)と言ったんだ」

 

 悪い一休さん、とんちはペンチに握り変える。

 話しても埒あかない以上、力ずくで押し通るのみ。

 反旗を示し、乱立するエレベーターへと突き進む。


 「潰れろ」


 カードパスのゲートが申し訳程度に構えちゃいるが意味はない。

 重量に同調かけ上から押しつぶす。

 下へ下へ圧縮、金属が曲がる音、内部が割れる音、お得意の脳筋かぶれプレーである。


 「ユウ、犯罪よそれ」

 「シャーロットがいるし何とかなるだろ、それともこういうスタイルは嫌いか?」

 「ふふ。なら損害代は給料からマイナスね。それと、強引なのは私も好きよ」

 「そうか、なら良かった————」


 ペしゃんこになった一部機械の上を跨ぐ。

 よく考えれば機械同調で済んだのだが、まあ勢いだ勢い、なにより壊す方が手っ取り早いし。

 だが飛び散った機械片、ビジネス不相応の破砕音と光景は注目を一点に集める結果になる。

 当然のことながら警備員らしき人が続々と向かってくるわけだ。


 「重力同調グラビティ・シンクロ


 またしても重力を操り下降させる。

 マントルまで伸びる線を勢いよく、警備員たちは環状を描き地に伏す惨状。

 脳筋探偵ここに参上、事件は乱暴に解き明かす。


 「さあて、真実を話してもらおうか————」















 エレベーター降りた先に続く道と道。

 案内無しにはキツそうだが、シンクロで大気同調すれば問題無し。

 操る風で熱源を探す。

 しかしこんなだだっ広い階層で見つけたのは、たった1つのみ。

 チャールズ・エリクソンが会議中ということだったが、果たしてどうしてか。

 

 (もしかして罠か? いや、あの腹黒じゃあえて1人で待ってる方が可能性として高い)


 例え前者であったとしても、迎撃態勢は整い済み。

 シャーロットを連れていても十分戦える。

 段々と歩みを進め、1つ扉の前に辿り着く。

 

 「開けるぞ」


 まさかと思うが開けた瞬間に何かあるかもしれない。

 そういうところは脳筋探偵だろうと配慮する。

 脳すべてが熱いわけではなく、一部にはクールな場所も生きている。

 取っ手を掴み一気にムーブ、やはり目的の人物は1人でそこに。

 中央奥にて座していた。


 「結構重要な会議だったんだけどね」

 「あんた1人しかいないみたいだが」

 「ああ、相手方には帰ってもらったよ。なんせ秘密の話をするからね」

 「お父様……」

 「シャーロット、僕は君に隠していたことがある。だが時は来たようだ」


 口ぶりからして大方の事情は把握していたように聞こえる。

 事実そうなのだろう、何時かシャーロットが強き者に襲われることは予期していた。

 でなければわざわざ俺みたいな能力者を雇いはしない。


 「では、語ろうか————」


 どうやら俺が居ても話は続ける。

 ダメと言われりゃ引き下がる気持ちもあったが、良いというなら同じく聞こう。

 チャールズ・エリクソン、彼は昔話をするように言葉を綴り始めた。
















 100年前、地球には転換期が訪れた。

 おとぎ話でしか語られないような存在が多数確認されたのである。

 神、魔王、魔族、精霊、他にもいくつか。

 そしてその中にはエルフという種もいた。


 そのエルフには3つの派閥があり、色式カラーによって分けられる。

 赤の色式に特化した真紅族。

 緑の色式に特化した深緑族。

 青の色式に特化した紺青族。

 

 それぞれに王が存在し、王政統治によって生活は保たれていた。

 正直に言って部族間の関係は良くない、いや、最悪だったとも言える。

 絶えず戦いが起こり、毎日誰かが死んでいた。

 

 しかしそんな中、ある1人のエルフが立ち上がる。

 赤い髪を持ち、右目は青色、左目は緑色という、3種族すべての特徴を持つ男。

 彼は部族間の真ん中に立ち、先頭を歩き、そして不戦条約を結ばせたのである。

 これによりエルフ同士の戦いは無くなり、平和が訪れることになった。


 その最もな要因は、彼の使う能力、つまりは『色式』の強さにあった。

 赤の強い攻撃力を持ち、緑並みの持続性を持ち、青の柔軟性を持つ。

 彼の絶大な力もつ色式はこう呼ばれる。

 あらゆる秘密を暴く真実の大砲『原初兵器アトランティス』と。


 しかし運命とは悪戯なもの、そんな強大な王は突如病にてこの世を去ってしまったのだ。


 残されたのは3人の子供、そして王という歯止めを失ったエルフの群衆である。

 奇しくも王の子供、3人は父のように色を兼ね備えていなく、単色のみを宿していた。


 そこからはまさに黄金方程式。

 他色を排除しようとする動きが再発した。

 握り合っていた手は離し、その手にナイフを握り替えた。


 神輿にされるは幼き子供。

 兄弟姉妹は引き離され、なされるがままに単色の王として即位させられた。

 長男は赤い特徴故、赤の王と。

 次男は緑の特徴故、緑の王と。

 そして長女は青の特徴故、青の女王と呼ばれた。


 人目に触れることはなく、何十年という歳月で種族間の戦争が始まった。

 一番劣勢だったのは青のエルフ族。

 形勢は押されるばかり、ついには絶滅の危機にも瀕し、独り逃がされるは青の女王のみ。

 彼女は絶望の波に攫われる。

 食料尽き、もう死ぬのだと悟ったとき、たまたま居合わせた1人の人間と出会う。


 警戒をした、犯されると考えた、殺されると思った。

 しかし男は優しく女王を迎えた。

 まるで隣人を相手にするように、まるで普通のことのように、その姿はどことなく亡き父に似ていたという。


 人間界に姿を隠しながらも月日は流れ、男と女王は結ばれた。

 そして授かるのは女王と同じサファイヤの瞳を持つ女の子。


 ただ運命は祝福を与えなかった、子供を出産してすぐ、女王も病に伏したのだ。

 父と同じ、色式も異能も科学も効かぬ不治の病である。

 

 まもなく亡くなる青い瞳のエルフ。

 残されたのは悲しみに浸る男と、そして唯一青を受け継いだ子供だけ。

 ただ時は止まらない、前に進むしかない。

 男は必死に働き、苦い水を飲み、涙を流して心身を削った。

 手にする多少のは金、だがそれでもいい。

 最愛の彼女が残した唯一の忘れ形見、愛娘を守れる手段が増えるのだから。

 

 母親のことを子に話すつもりはなかった。

 無知は罪というが、果たしてそうだろうか?

 例え真実を知らなかろうと生きることはできる。

 傷つかず、平穏に毎日を暮らせる、これほど幸せなことはない————















 

 「じゃあシャーロットは……」

 「エルフが青の女王の娘、この世界で唯一紺青族の血をひく者だ」

 

 明かされる真実は波乱万丈、言っちゃ悪いがまるで劇のよう。

 激動の日々、苦悩したチャールズ、だが必死で生きてきた。

 その集大成が会社をここまで育て上げたとも言える。

 多少の金と謳ったが、このビルはまさに彼の努力と執念の具現化である。


 「確かに、お母様の写真は帽子をかぶったものしか無かった。それって……」

 「少しでも身バレを防ぐためさ。なんせエルフの耳は目立つからね」

  

 シャーロット曰く、母親の写真は何故か2、3枚しか残っていない。

 チャールズは恥ずかしがり屋と語っていたそうだが、真相は別にあった。

 

 「シャーロット、君は青のエルフ最後の生き残りだ」

 「それは、それは分かったわ。でもなんで? 教えてくれたって私は……」

 「誰にも言わない、だろう? 一番の問題は自我についてじゃないんだ。かなめ原初兵器アトランティスにある」


 どうやらシャーロットの意思には関係無い様子。

 一番は統一王が使用した力に原因があるそう。


 「かの銀神様なら聞いたことはあるでしょう? むしろ僕より詳しいかもしれない」

 

 その言葉にレネも反応、身体を具現化せずとも声は顕す。


 「知っておるわ。3色の最奥、黒の大砲であろう」

 「大砲?」

 「簡単に言えばな。だがその実内容は恐ろしい、バハムートの一撃より威力は高いぞ」

 「ば、バハムート以上!?」

 「我とて喰らえば、耐えることは不可能じゃろう」


 あのバハムートの滅びの炎より威力が高いとなると、もはや地球最高火力じゃないか?

 レネ自身も耐えるのは不可能だって言ってるし。

 確かにそんなものあれば、普通は畏怖、口答えすることもなく言うこと聞くわな。

 エルフを統一した男は王政を敷いたそうだが、見方を帰れば恐怖政治とも捉えられる。


 「でも、なんで死んだ奴の能力にそこまで縋る?」

 

 気になるのは持ち主が死んでいるのにだ。

 話は大体脳回路を周り、卓越に理解。

 要はそんなバカげた大砲撃つにはエネルギーとして赤、緑、青の3色の力がいる。

 青の血族は暫定シャーロットしか受け継いでいないし、狙われる理由も分かった。

 しかし持ち主はとうにあの世、燃料あったところで肝心の砲台があるまい。


 「原初大砲アトランティスは、今も存在するんだ」

 「なんと、やはり残っておるのか……」

 「いやいや待てって。召喚系の能力でも主が死ねば消えるだろ」

 「普通はそうだね。だけど、その常識を破るくらいの代物なんだよあれは」


 今は亡き女王はチャールズさんに言った、統一王は大砲を残して死んだと。

 王の娘が言うのだ、確証あってだろう。

 しかしまさか世界にそこまで干渉する能力とは、正直信じられない。

 だが、身近な人物に常識を何食わぬ顔で壊す奴がいる。

 そう思えばこそ、全否定するほど脳は納得出来ていないのだ。

 

 「なら、その大砲は何処にあるんだ?」

 「何処にもないよ」

 「はい……?」

 「彼女曰く、世界の裏側で待っているそうだ」

 「なるほどのう、隠し場所は第三世界じゃったか」

 「待て待て、もう話が分からなくなってきたぞ」

  

 シャーロットが狙われる理由は分かった。

 しかし全てに理解は及ばない。

 だがエリクソンは言葉を続ける。


 「原初兵器は意識に呼応して顕れる。王としての自覚があればあるほど、その確率は高まる」

 「つまりは、新たな王に譲渡されると」

 「でもだ、自分が王の血筋と知らなければ、王の自覚もくそもないだろう? 無知であれば選定されずに済む」

 「じゃあ私が今知ってしまったってことは……」

 「そういうことじゃ小娘、ぬしは渦中に降り立ってしまった」

 「だから僕は何も、彼女のことも教えなかった、守るために」


 トーナメントに不参加のはずが強制参加。

 詐欺みたいにすんなりと、ただ払い戻しは効かない。

 ただエリクソンはどこか悟った表情、勝手な読みだがこういう日がくると分かっていたのだろう。


 「もう少し後に大事な案件があると言ったんだが、あれはある意味嘘だね」

 「嘘……?」

 「赤の王が、ニューヨークを訪れるんだ」

 「なんと!? それは真か!?」

 「うちの情報網は世界最高レベルだ、この日のために会社を大きくしたともいえる。間違いはないね」

 「じゃが訪問という生易しいものではあるまい?」

 「ああ。確実に攫いに来てる。今までのは序章だったってことだ」

 

 契約の最終日、つまりは大事な案件とやらは商談でもなんでもない。

 人さらい、隠れていたエルフ、その王が御目見えということ。

 

 「チャールズさん……」

 「来るものは仕方ない。僕は守る(・・)だけだよ」

 「戦争する気なのかアンタ」

 「なんでも赤の王はほぼ単身で来るらしいから、そんな大規模なものにはならないはずさ」


 曰く鍵のためとはいえ、エルフはやはり集団では来ないとのこと。

 派手に動けば動くほど晒すものは多くなるからだ。

 ここまでの赤エルフの襲撃は全て防いだ、ならばこそ、今度こそ確実に成功させるために、王自らの出陣に行きついたそう。

 しかしそこまで把握できているとは、この会社は一体どこまで手が伸びているのか。

 まさにブラック会社、底が闇で埋め尽くされているかの様。


 「お父様、私は、その赤い王様と話してみたい」

 「ダメだ! 話を聞いてくれるような相手じゃない」

 「でも……」 

 「お願いだシャーロット。口を開きたいのは分かる、動きたいのも分かる、でも————」


 珍しく、いや初めてポーカーフェイスが割れた。

 それは怒り、焦燥、人間味の連打だ。

 俺を呼んだ理由も察し、万が一に備えた最高の予防線ってとこだろう。

 戦いの飛び火を払うためだけに。

 だが、なんともモヤモヤした、晴れぬ感情。

 ここまで第三者たちは難しく考えすぎている、エイラは言うだろうくだらないと。

 だって俺がそう思うんだから。


 「なあチャールズさん、この問題を解決する簡単な方法がある」

 「簡単な方法だって?」

 「結局だ、その赤の王を真正面からぶっ倒せば(・・・・・)収まりつくんだろう?」

 「ま、まあ……」

 「原初兵器についてもそう。持ち主があやふやだってんならシャーロットが奪っちまえばいい。そんで敵を殲滅、もしくは————」


 チラリとシャーロットを見る。

 ここまでの話は簡単に、俺たちにとって障害となる赤い王はぶっ倒す。

 燃料足らずの砲台についても、撃てようが撃てなかろうがとりあえず奪えばいい、自分自身が王として所持してしまえ。

 そこからは殺すもアリ、脅すもアリ、それから————


 「お母様はきっと仲良しが好きよ。争いの無い平和な世界が」

 「……」

 「話したことも、声も覚えてない、だけど————」


 シャーロットは自分の瞳を瞼から撫でる。

 意思は宿っているのだ、記憶としてなくともその身体奥深くに。


 「私が、平和を取り戻すわ!」

  

 立ち上がった、既に王としての気質は彼女に見えていた。

 それが今初めて形を成す、肉声として世界に轟く。

 ハーフエルフ、しかしその気概は統一王に負けんとす。


 「大事な案件(・・・・・)までが契約期間よねユウ?」

 「もちろん。それまではこき使ってくれお嬢様」

 

 その通り、案件終わって初めて契約は完了する。

 そこにどんな障害立ちふさがろうとも、彼女を守るのが俺の役目だ。

 しかしシャーロットもだいぶ脳筋な脳になったな、一体だれの影響なのか。

 これは将来が楽しみである。

 

 「シャーロット……」

 「お父様、今まで独りで背負わせてごめんなさい」

 「そんな、そんなことはない」

 「私は今野望を持ったわ。こーんなに大きなものよ」

 

 チャールズさんの鉄仮面は既に剥がれ、そこには父の姿が。

 良かったなこんなに立派な娘がいて、あんたほど恵まれた親もそうそういない。

 シャーロットは腕を大きく円描き、野望の大きさを表す。

 なるほど、これは巨大で大変そう、だが人生を懸けて挑む価値はありそうだ。


 「最前線は私が立つ」

 「まあ一番働くのは王様じゃなくて俺みたいな雑兵なんだが」

 「ふふ、しっかり働いてね」

 「おうとも。それこそ死ぬ気でやるよ」


 忠義はないが信頼はある。

 建前も無い平等な立ち位置。

 立場逆転現象、青の血統は今狼煙を上げる。

 伴うは銀と紫を内包した青き暴風。

 数日先の未来をこの目で見つめる。


 「この気の強さ、シャーロットはやはり君の子だよラフィール————」


 ガラガラの会議室でのとんとん拍子。

 心臓のドアはドンドンと叩かれ、その気一本。

 先頭をきるは、チャールズさん曰く親譲りの気の強さを持つ愛娘。

 青い瞳を真っすぐ構えたシャーロット・エリクソンであった。

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