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聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 6 -Disturbance of New York 《突風のアルマゲドン》-
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 「我が前を務めよう。ユウは周りに気を配れい」

 「やりすぎんなよ」

 「なあに加減は心得ておるよ」


 神降ろしを本当の意味で実践投入。

 銀刀を使うにはレネを一度実体化させ、そこから刀身へと変換しなければならない。

 ならばプロセスは途中遮断、実体化で終止符。

 変換の事象は断たれ、エレネーガという神として現実に確立する。

 そして目の前に居るのはたった2人、だが人質の数は相当。

 レネが戦闘をほぼほぼ請け負い、俺は支援をしつつ、メインは観客へと飛び火する障害を排除すると言ったところか。

 

 「そうじゃ小娘共」

 「は、は、はい!」

 「中々良い動きじゃった。これからも精進せよ」

 「「「「「い、イエッサー!」」」」」


 (やっぱレネの奴、シャーロット達のこと気にいってんじゃん)


 まあ特訓時、俺が吐く言葉の半分くらいはレネが脳内で言ってたことだし。

 彼女らが後輩気質なこともあってやり易いのだろう。

 

 (本来ここから遠ざけるべきなんだろうが、何処か離れた場所より一番近いこの場所が一番守りやすい)


 シャーロット隊はあくまで10歩後退。

 あえて俺たちに最も近く、最もシンクロが強く支配場所に留まらせる。

 もちろん守りやすいって理由が一番だが、何より今から起こる戦いの特等席。

 彼女らの進化にきっと大きなキッカケを与えるはず。


 (とりあえず俺は支援しつつ隠れたもう1人(・・・・)を探し出さねえと……)


 「首無し(ノー・ヘッド)は銀神を相手にして。私は変幻をメインに叩くわ」

 「まじかよ……、生きて帰れたら武勇伝確定だな」

 「行くわよ」

 「おう!」


 ブラックリストに載る能力者のランクってのはあくまで暫定。

 まさか悪党がバカ正直に身体検査を受けるはずも無し。

 ここまでの態度や身のこなし、風格を見た限りじゃ————


 (S級の中でも高位の部類、いや実力的にはSS級の可能性もあるぞ……!)


 「参ろうぞ!」

 

 ランクなんてものはアテにならない。

 所詮はアルファベット、真の実力ってのは戦いの時に垣間見える。

 既に敵は身を動かし凄まじいスピードで迫ってくる。

 だがレネが後れを取るはずも無し、真向からの衝突だ。


 「空間崩し(ダウン・フォール)!」

 「銀刀(エナ・シルバ―)!」


 レネの刀と首無しの拳が交じり合う。

 普通だったら人間たる首無しが負けるが道理。

 しかし拮抗、触れた瞬間に空間がグニャリと曲がる、いや崩れたという表現の方が相応しいか。

 レネと刀を除いてこの現実が歪み、そして弾ける。


 「小癪な! 空間を削り取る力か!」

 「かあ恐ろしい、これで崩れないって神様はレベルが違うねえ!」


 レネとて全力ではない。

 加減をミスれば一太刀で会場の人たちは消し飛ぶ。

 それどころか街を両断するかも。

 しかしだ、手加減されているとはいえ防ぐとは。

 手加減に加え能力の相性がいいってのもあるが、恐ろしく強いぞあの男。


 「————煙はいいわ。誰にも掴まれなくて、それでいてどんなものだって手にできる」


 レネの一方的な展開になると思いきや、そうともいかず。

 作戦は何処にいった? レネは首無しとの戦闘に夢中、スイッチが入ってしまっている。

 相手にされてない炎煙のお姉さんコッチに来たじゃんかよ。

 いや因果応報、俺はシャーロット達に本能の赴くままに、気合という見えないエネルギーで戦えとも言った。

 ここで実証、完全なる個人戦の確立だ。


 「大気同調、風よ切り裂け」


 なら先手必勝、躊躇なく不可視なる風の刃を生み出し発射。

 女だろうがなんだろうがお構いなし、敵の首をチョパッと()ねる。

 刎ねたはずだったんだが————


 「無体系の能力!? うっそだろ……」

 「残念ね。私に能力は効かないわ」 

 「めんどいなあ……」

 「レディーに対して酷いことを言うのね」


 俺は炎煙スチーミングという能力者は名前を聞いたことがあるかないかくらい。

 ならば当然、会い見える初の能力、それがまさか無体系とは。

 滅多にいない不死身を体現せし能力者、風で切り落とした頭部。

 しかし頭は地面に転がることなく霧散、いつの間にか元通り。

 

 (アメリカ代表に似たような能力者がいたが、この女は完全に不死身がメインだな……)


 首無しの方が厄介かと思ったが、てんでそんなことは無い、コイツの方がハズレくじ。

 今も半身が煙となって地を這う、まさに煙の衣を纏ったが如し。

 しかし無体系といっても人間、必ず弱点は存在するは————


 「そんなものかのう!」

 「っがあああああああああああああ!」

 

 整ったはずのスタートラインに先発者たちが帰ってくる。

 それもロケットかっていう猛スピードで。

 首無しに至っては炎煙の真横に頭から地面にぶっ刺さる。

 レネもコンマ数秒の間をあけ俺の隣へ舞い戻った。


 「さっきからもの凄い音だったが……」

 「なに我が力を削ろうとするのでな、一気に叩いた」

 「なるほど。ちなみに女の方はなんちゃって不死身人間だ」

 「ほほう、厄介じゃな」


 なんでもウォーミングアップだったらしく、身体はある程度ホットになったらしい。

 俺が突撃する寸でには原点回帰、個人戦の確立などと格好良く謳っておきながら、二人制に仕切り直しである。


 「っぐあ! 死ぬかと思った……」

 「なにふざけてるのよ」

 「ふざけてねえよ! こちとら死ぬ気で戦ってたんだぜ!?」

 「はいはい。それで?」

 「銀神やっぱ滅茶苦茶強え、この調子じゃ10分持つかどうかって話だ」


 (やっぱり時間を気にしている? やっぱ何か待ってんのか?)


 何処にっても強い奴ってのは一筋縄ではいかないもの。

 結局隠し玉あるから嫌なんだよ。

 かくいう俺も1つや2つは能力を出し惜しんでいるわけなので、人の事を言えたものではないが。


 「ユウ」

 「俺は防衛しつつ表面を叩く、レネが今回のエイラ枠ってとこだろ?」

 「ふふ、良くわかっておるのう」

 「んじゃ早速行きますか————」


 既に大気に同調したこの身、この中心点からあまり遠くに離れるわけもいかないので、そこそこの接近。

 超接近になりすぎない絶妙な間合いを取る。

 0から100まで一気に持ってく、テクノロジー要らずの瞬間最高時速マッハの単位。

 ハイウェイ乗る感覚で脚は躍動する。

 銀のライト光らせるモンスターマシンが2体始動する。

 

 「来たぜえ炎煙!」

 「相殺させる! 煙よ散りなさい!」


 光を奪うのは熱を纏った煙、ホワイトアウト、目くらまし、行く手を阻む。

 突入する前に隠させる現実、相手はここを霧の国にでもする気か。

 いやいや僭主はレネがバシッと斬り、自分の国を創り出すなら俺の方が得意だね。


 「視界を開けよ!」

 「はいはい! 能力同調アビリティ・シンクロ!」

 

 天はこの身に支配の力を授けたり。

 蒸気を塗り上げる青い光。

 ペイントというオシャレなものではなく、侵略で征服、無断に展開されし障害を引き下げる。

 しかしそれは強引に、シェードの紐を無視した本体鷲掴みの引きちぎり感覚。


 「強引すぎるわよ!」

 「文句言っても仕方ねえ! 能力崩し(ア・ダウン・フォール)

 

 上書きに上書き、支配に謀反する新たな僭主の登場。

 青く染まった煙を空間ごと崩し、ど真ん中に不格好な縦穴を空ける。

 

 「煙よ剣を描きなさい!」

 「刻印ルーン!」

 

 案の定、炎煙は標的を変更。

 高温の煙にて数千数万に近しい剣を作成し観客席に発射する。

 レネは絶賛首無しをイジメている中、人を守るは俺の役目。

 瞬発的に身体にビッシリ張り付いた刻印へ魔力と神力を回す。

 展開される紫の魔法陣、そこより出づるのは神をも殺す風の断片、吹き荒れる嵐が煙剣を上から飲み込む。


 「魔法陣ですって……、変幻あなた……」

 「俺は魔族じゃねえよ。ただ縁を持ってるだけだ」

 「私の記憶では、紫の色を持つ魔法使いは1人しかいないのだけれど」

 「ならそいつだろうな、俺に力を与えたのは」

 「天は二物を与えずというけれど、魔女がなんて、末恐ろしいものね————!」


 風に身を任せ宙を躍る。

 一歩も退かず、レネのやりすぎた火花を消し、相手が行う能力を無力化し。

 やらせ無し、力で力で力で叩いていく。

 ぶっちゃけレネは盛り上がって首無しをほぼ半殺し。

 やっぱ神の強さってのは常識を超越、SS級に近いであろう能力者を軽くなぶっている。


 (てか銀刀の振りと衝撃が強すぎて、気を抜くと俺まで斬られちまう……!)

 

 炎煙や首無しの攻撃から観衆守るよりも、正直言うとレネの飛び火を消火するほうが大変だ。

 というかもはやワンマンショー。

 なんだかんだと戦闘入って10分近く。

 戦況は一方的になりつつある。

 

 「ふっはっはっは! 愉快愉快!」

 

 斬斬斬斬斬。

 一閃一閃がとてつもなく重く、とてつもなく早い。

 そして触れた場所は銀へと変わっていく、相手さん見れば無数の傷痕は銀へと変質。

 身体のアチコチが斑点模様のように銀化している。

 炎煙は俺がメインの相手なので銀化している箇所は見当たらないが、大分結果は見えてきた。

 無体系といっても様々種類、彼女は貯蓄型で削れば削るほど煙の量はわずかながら減少していく。

 数万発撃ち込めばそのうち死ぬだろう。


 (このままなら相手が銀の彫像になるのも、煙化が解けるのも時間の問題、これなら————)

 

 しかし俺は失念していた。

 やはり戦闘に入ったことでのスイッチオン。

 気を配っていたつもり、そりゃシャーロットとその他人間に。

 だがそれで手一杯、忘れていた、俺が最初に取り逃がした1人の存在(・・・・・)を。


 「————秘密の扉(シークレット・ドア)


 急にだ、本当に急に、シャーロットの真後ろに赤い扉が現れた。

 今まで察知できなかった、まるでどこか違う世界から割って入ったように。

 唐突にして急展開、開かれた扉からは1人の男がヌルリと這い出る。

 長い両手がシャーロットに迫る、しかしここ一帯は俺の支配下にある。


 「能力同調アビリティ・シンクロ!」

 「秘密の鍵(シークレット・キー)

 「っな! 同調が弾かれた!?」

 「悪いな変幻、彼女は頂いていく————」


 同調を発動した瞬間にナニカ能力で相殺された。

 正体は不明、しかし一瞬流れ込んできた能力の形は不自然の一言。

 取り残した男、隠れていた男、赤い光を生む男、ヤツの力は異常だった。

 まずい、奴にシャーロットを渡してはいけない、好き勝手させてはいけない、何よりも守ると約束したのだから。

 しかし絶対視していた同調領域は突破された、距離も距離、このままでは間に合わ————


 「神様パンチ!」

 「っ……!」


 刹那に過った不安は刹那にして打ち破られる。

 秘密の男にダサいネーミングでとんでもない威力の拳を叩き込んだ者がいるから。

 その神拳の持ち主はエレネーガ、振り返れば首無しは地面に這いつくばっている。


 「なるほどのう、確かにコヤツは魔族ではない、じゃが人間(・・)でもないな」

 

 レネの拳でシャーロットの位置からブッ飛ばされた男はフラフラしながら立つ。

 あれで沈まないとは、なんという耐久力。

 露わになるのは、年齢不詳の整った顔立ち、そしてルビー色の両眼だ。


 「神は我々の邪魔をするか……」

 「ふん! 貴様らこそ、今更のこのこ出てきてなんのつもりじゃ!」

 

 足本ふらつきながらも、その男の眼はまっすぐだ。

 レネは正体を知っている様子、しかし俺にはその見た目、ただのイケメンにしか思えない。

 だがシンクロ弾かれたからこそ異質なのは理解。

 人智では図れない、同じようなものを最近ずっと見ていた、色は違う、内容も違う、しかし彼女とどこか同じような空気感。

 カテゴライズ不可、そんなシャーロットの能力に何故か似ている気がする。


 「レネ、この男は一体……」

 「人間は滅多に見んだろうな。こやつはエルフ(・・・)じゃ」

 「え、エルフ!?」

 

 なんと赤い瞳の男はエルフだと言う。

 確かにあの日から世界には人間の他に、魔族や神、精霊なんかが住むようになった。

 エルフってのも存在がいるとは聞いていたが、精霊以上に人前に出たがらない。

 超閉鎖的種族だと習っている。


 「でもエルフ耳ってのは無いんだな」

 「エルフはエルフでも混合種なのじゃろう。なあ純潔ではあるまい?」

 「……神は全てを見通すか」


 首無しはダウン、炎煙に至ってもどうやら逃亡路を模索している様子。

 外敵のレベルとしては1つ下がったくらいに。

 問題はこいつだ。

 

 「貴方は何者なの……?」


 聞くのは攫われそうな当の本人シャーロット。

 当然の疑問、エルフが果たして彼女に何の用なのか。

 

 「あの男からは何も聞いていないのだな」

 「男って……」

 「君の父親だ。まさか唯一の継承者だというのにな」

 「待って、なんの話よ!」

 「これも青の運命だというのか————」


 ついにはよくわからん話をし始めた。

 ただ内容的には、俺たちの知らない何かをシャーロットの父親が隠していることになる。

 

 「それで、これからどうする気じゃ? 我らと戦うか?」

 「そうだな。もう少し足掻いてみるとしようか」

 「結構! ならば叩き潰してくれよう!」


 男からは先ほどと比にならないくらいの赤が噴出。

 やばいの来そうな雰囲気だ。

 レネがいなければ俺1人では正直厳しいかってレベル。


 「赤の秘密、今明かそう」

 

 人間と思いきや大将はエルフ。

 炎煙もレネの話を聞いて驚いている様子でまるで今知ったかの様。

 最後にはシャーロットが後継者だとか。

 謎が謎を呼び、シークレット・ボックス。

 周り周って初めて、俺たちはようやく謎解きの入り口に立ったのだと気が付いた。 

 

 

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