7
早すぎる再会。
まあ早すぎるもなにも、俺は会いたくなかったんだけど。
とはいえエイラの乱入でこの模擬戦は終わりだろう。
エイガー先生含め誰もこのオチは予想できなかった。
(あの炎を軽くブッ飛ばすあたり、やっぱとんでもない威力だな……)
「どうやらユウの圧勝のようだな」
「最後の最後、お前のせいでややこしくなったけどな」
「そうか?」
俺が炎を寸止めすりゃキレイに終わったのに。
余計なことしてくれたよホント。
「エイラ・X・フォード、いったい何のつもりだ?」
「おー、エイガー先生ではないか」
「そうだエイガー先生だ」
「なに面白そうな気を感じてな」
「…………それで?」
「混ざりたくなったというわけだ」
はっはっは、なんてエイラは笑ってるけど、エイガー先生の額がピクピク痙攣してる。
気付けよ、先生怒ってるぞ。
「……フォードよ、だとしても下級生の試合に乱入はいただけんぞ」
「まあな。 ただユウがいたから抑えられんかったのだ」
「そういえば相棒がどうとか言ってたな」
「ユウは私の相棒なのだ」
あーあ、絶対大変なことになるぞこれ。
エイラに至っては金髪なびかせドヤ顔で言っちゃいるが、 周りは唖然としてる。
明るいのは彼女くらいで、 周りは驚いて顔面蒼白の言葉がふさわしい。
ちなみに俺は顔色悪い方に含まれます。
「それでこの後はどうするんだ?」
「この後?」
「俺たちの試合を終わらせた今この時だ!」
「わからん」
本能だけで動いてるな。
おそらく理性という観念がエイラには存在しないんだろう。
なんで神様はコイツに、よりにもよって力技の能力を与えたか疑問しかない。
鬼に棍棒というか、脳筋に聖剣だし。
「なぜユウはそもそも小隊戦を1人でやっている?」
「……ハンデだよ」
こいつの前で仲間がいないなんて言えないぞ、恥ずかしい。
嘘、嘘はついてない。
それにエイラの奴『S級なのに情けない、そうだ私のチームに入ら……』とかいいそうだし。
こいつと一緒にいたらどうなるかわからん。
でもエイラは一応SSランクだし、性格に難あれ、はぶられていることはないはずだ。
「フォード先輩! ユウの奴、小隊戦に1人で出ようとしてるんですよ!」
「おいトニー!」
「組んでくれる仲間がいないんですよー!」
「……あとで覚えとけよ」
トニーはいいやつだと思ってたが考えを改める必要があるな。
おもしろい方向にもってこうとしてくの勘弁してほしい。
あとあんまり言いすぎるとホントに小隊戦1人で出ることに真実味が出てきそう。
「ほう。小隊メンバーがいないのか」
「……ああ、……そうだよ」
「やはり私の相棒だな」
「……は?」
「私も1人なのだ」
は?
はい?
コイツは何を言ってる?
「いやお前SSだし、いろんなとこに引っ張りだこになるはずだろ」
「ああ。みな1度は組むが、後後やはりいらないというのだ」
「……一応理由聞こうか?」
「私以外をみなブッ飛ばすからだ」
「味方も殺りゃそりゃはぶかれるわ!」
「それで勝てるのだがな。私はチームプレイに向いてないといわれた」
「あったりまえだろうが!!」
バカバカしい会話。
なんか漫才してるみたいだ。
こいつはホントにSSランクにしてよかったのか?
脳筋と能力混ざってそのうちバーサーカーになるぞ。
てか普段からもうバーサーカーか。
「それで私も1人で小隊戦に出ようとしたがダメだといわれた」
「まあ最低でも2人以上が規則だからな」
小隊戦は最低でも2人がメンバーでなければならない。
言ってしまえば2人で大会自体に出ることは可能だ。
ただ人数限度が5人の以上、勝ちたければ当然5人で出る。
それこそ3人以下のチームなんて聞いたことないし、もしやるならそれは愚の骨頂。
能力以前に人の数はもっとも重要なタクティスだ。
「そうだ。最低でも『2人』いれば予選に出ることができる」
「だけどそんなバカいないだろ?」
「ふふふ。よく考えてみろ、2人だぞ」
「……2人?」
2人をえらく協調するが、そんなことする物好き、それかよっぽどのアホか。
それこそ勝ちを望まないやつのすることだ。
今後が関わる以上するやつはいないはず、いや待てよ、まさか————
「私とユウ、2人で出ればいいのだ!」
「「「「「えええええ!」」」」」
俺含めみんなの声がこだまする。
「そうだそうしよう。1人で出れない以上これしかない」
「いやいやそれはない! そもそもお前と2人って……」
「私の能力にもお前はついてこられる、技術も問題ない」
「途中でお前に殺されそうだわ! エイガー先生! こういうのやっぱりよくないですよね?」
みんなの視線がずっと黙っていたエイガー先生へと向けられる。
頼む。
頼むから『それはやめといた方がいい』的なことを言ってくれ。
コイツの話と性格を考慮すると戦闘中にホントに巻き添えくらいそうで怖い。
「俺は、組んでもいいと思うぞ!」
「「「「「おおおおお」」」」」
おいいいいいいい。
ダメっていうどころか推奨しちゃってんじゃん。
こいつ教師か?
死ぬぞ、お前の生徒まじで死ぬぞ!?
「ということだ」
「なにが『ということだ』だ!」
「いいではないか。相性も悪くない」
「どの口がいうんだよ……」
「——以前剣を交えたとき思った。同世代で私と最も戦えるのはユウ、お前だ」
「…………」
「脳が、体が、剣が、力が震えた。あのときは衝撃と歓喜が私を支配した」
「……俺よか強い奴はいるぞ」
「心配するな同世代なら私が最強だ」
「一番自分かい……」
だけど確かに高校生以下でSSランクをたたき出したのは歴史上コイツだけだ。
あの10人の時はランク制なかったし。
「なに安心しろ。やるからには『勝つ』」
「2人でか?」
「逆だ。私たち2人で勝てない相手がいるか?」
「……相変わらずバカだな」
「誉め言葉と受け取っておこう」
そうか。
本気かコイツ。
バカだ。アホだ。
脳筋で、聖剣ぶん回してる見た目だけはいい女。
ただ、目はまっすぐだ。
「とりあえず予選、予選だけ出る。強制参加だからしかた————」
「感謝する!!」
「おい! 抱き着くな!」
「いいではないかー」
なんか破天荒というか暴走機関車というか。
でも少し面白くなってきたか。
「なら早速練習といこう、聖剣よ!」
「おいおい気が早えええ」
「いくぞ!」
「まてまてまて————」
セント・テレーネ学園、イタリア代表を決める国内予選。
参加者名簿には史上初、『2人組』のチーム名が刻まれるのだった。