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惚れ惚れするほど  作者: 斗丸
4/4

さん

今回は学園紹介と若干のシリアス回。


着々と彼の時は回ります。







「おーい幸村!」




それは放課後のことだった。




一人だけ個別授業だったのに疑問を持った政宗が、休み時間俺に問うてきた。



それに俺は「ここでは中学の普通に習ってた教科の中に、習ってないのがあってさ。それに普通に授業に着いていけそうになくて。」と苦笑混じりに言うと、俺、力になるからな。と頼もしい返しをしてくれた。



8割本当で2割は嘘だ。



正確にいうとすべて本当だが事実はまるっきり教えていないということだ。



正直自分でもずるいと思う。



だが嘘も方便という諺があるように、政宗やクラスの彼らには悪いがその場とこれからの平穏の為に俺のことについては少しだけ目をつぶってもらいたいのだ。



……彼らと過ごしたいだなんだと言うが、結局は全て自分のためなのだが。



そう思うと自己嫌悪しそうになるのでやめておこう。





話を戻そう。



放課後政宗が俺を呼んだ。

用件はというと、



「なあなあ幸村、お前の寮室ってどこだ?」


言われてから、はたと気付く。



そういえば、理事長室から出て泣いていたせいで、そのあと寮に戻る暇がなくそのまま教室に向かってきたのだ。



「あ、そういえば俺もまだ行ってないや」



鞄に手を突っ込んだままそう言うと、政宗は戻ってないのかよ、と呆けたような呆れたような顔をすると、寮までの道のり、つまり通る教室を説明しながら連れていってやるよとニカッと男らしい笑みで言った。



鞄に残りのものを押し込み、廊下に出ると窓にはまだ春らしい白みがかった青空が写っていた。





「ここは理科室、ちょっとばかし汚いけどそれは科学担当の先生がものぐさでな。掃除したがるヤツもいないから大掃除くらいの時しか手をつけないんだ。ちなみに奥の扉が準備室に繋がってる。」



そこは教科担以外誰も入ったことがない、らしい。


と少し不気味がらせようとしたのか不敵な笑みで言った。



「そうなんだ?でも、衛生的にどうかと思うけどな…」



もし許可が取れれば俺が掃除したいくらいだ。と笑うと、虚を突かれた顔をしていて少し面白かった。



まともな事を言った気がするんだけどな。




そのあとに家庭科室、そこは食品研究部が放課後使っており、日々親衛対象のためにバランスのいい食事を作る子達と自炊を心掛けている男子がほとんどの部活らしい。


ちなみに、授業にはほとんど家庭科は組み込まれていないのでほぼ食品研究部の部室と化しているらしい。




そのあとは物置部屋、古文や数学物理などの物が色々収納されている場所だ。



しかし、人があまり来ないことからヤり部屋にされているとかなんとか。



ここが男子校で同性愛が普通だとは聞いていたが、まさかヤり部屋まであったとは。



衝撃的で、なんだか居心地わるい。



そんな心境を悟ってか、政宗は大丈夫!寮に帰る時間帯は基本誰も使わないから!と慰めた。




でも、使うんだよなぁ…




未だ物置部屋へは微妙な心境であるが、通るときに男の喘ぎ声が聞こえないことを祈ろう。



会う確率は低くても気まずく感じてしまいそうだ。




心なしかしょんぼりしている俺を気にしつつ、寮棟に着く。


寮は俺も初めて見たが、これはマンションか何かか?と見紛うくらいの豪華さだ。



パッと見9階ほどか?一体何部屋あるんだ…と思わず呆れてしまった。



ここまで、色んな部屋の説明をしながらではあったが約20分くらいかかった。



政宗曰くここの棟が一番校舎から近いらしいが、3年だけは真逆に寮が位置されているらしく、ここに来るまでの倍ほど時間をかけて学校へと登校するらしい。それでもまだ門の中だというのが驚きだ。



真正面で見るよりもここの学園は広いらしい。



「よっしゃ、他の教室の説明とかまだまだあるんだけどな、それはまた今度だ!しばらくはウチのパンフレットでも握ってないとな」



いたずらっ子のように笑うと、俺の部屋を開けるように催促した。

ころころ変わる政宗の表情を尻目に見つつ、改めて表札を見つめた。



406、神薙幸村、三国洋…


みくに、よう…と呼ぶのだろうか。同室であるから同じ学年なのだろうが、正直仲良くなれるか心配である。



悠哉さんから前貰ったカードキーでドアを開けると、(ちなみに学生証と財布の役割もある。)1LDKほどの広さの室間があり、目眩がした。



一体どうなってるんだ…ここの生徒達の常識は一般で通用しない気がする。いや、俺がまずついていけない。



「おーい?幸村ー?」



政宗の心配そうな声にハッとすると、なんでもないように笑い返す。


「なんでもないよ。」



「そうか?なんかボーッとしてる時間多いし、疲れたんじゃないか?」


頭は届かないからなのか、近くにあった俺の手を労るように撫でる。



それを見て、胸が暖かくなり自然と笑みが浮かぶ。



政宗に言われてから気付く。



思ったより疲れが溜まっていたのだろう。体が重くなったような気がした。



「そうかもな。今日はもう寝ることにするよ。」



「そうした方がいい。これから時間はたくさんあるし。」



そういえば、身の回りのことでいっぱいいっぱいだったが彼の予定は大丈夫だったのだろうか。

初日に連れ回しすぎたのではないかと心配になる。



「政宗、その、今日はありがとう。」



嬉しさと申し訳なさでお礼を言うと、政宗は照れたようにはにかんだ。



「え?あぁ、いーのいーの!俺が好きでやってんだし。」



彼が好意でやってくれていたのは薄々わかっていたが、言葉にされるとやはり嬉しい。



「そっか、本当に助かったよ。政宗は部活とか、なにかやってないの?俺が今日1日政宗を独占しちゃってたから…」



「独占って!」



更に照れてしまったのか、赤くなって俺の腰辺りをバシバシ叩く。



「俺、一応バスケ部入ってんだ。部長には転入生に色々教えるから行かないって連絡したし、放課後毎日は無理でも同じクラスなんだし休み時間とかでゆっくり教える!」



「うん。よろしくね。」



「おう。なんかあったらメールしろよ。俺の部屋は501だから、いつでも来ていいぜ。」



はじけんばかりの笑顔でそう言い、早く寝ろよ!朝飯は同室のヤツに食堂案内してもらって食え!おやすみ!と俺に口早に伝えると嵐のように去っていった。




彼が行ってしまった後、喋る人がいなくなったからか途端に一人がもの悲しい。



本当に、こんなにたくさん喋るのなんていつぶりだろうか。



いつもはのんびりと過ぎる時間をカフェで過ごしていたから、あまり必要以上には会話は無かったような気がする。



おじさんとも、俺が野良猫の話やお客さんの話を振っていたのでおれがお喋りなイメージがあったのだが、今回政宗や他の人と話してみてそうではないのかもしれないと考えを改める。




今時はやはり話題には尽きないのだろうな。




特に俺は世間には疎い方だから、周りを飽きさせないといいのだけれど。



不安要素を残しつつ、玄関の扉を閉めた。



広いリビングに、扉が2つ。多分そこがお互いの寝室なのだろうか。トイレは玄関の側に位置してある洗面所にあるだろう。


ダイニングキッチンまで設置してあることから、やはりとんでもないお金持ち高校なのだと実感する。むしろ、ここが寮だということをうっかり忘れそうだ。



一歩踏み出す。



ふわりと人の匂いがする。当たり前なのだが、染み付いている程なので長い間一人部屋だったのだろう。甘いような爽やかな香りが鼻腔を抜けた。



さっと周りを見渡すと、簡素な見た目だった。


全体的にモノトーンで整えられており、家具はソファとテーブルとテレビ、そして小さな冷蔵庫のみだ。

予想するに、ここの住人は自炊はしないのだろう。キッチンはありのままの姿で鎮座している。



あまり生活感がない様に見えたが、よく見ると小説やゲームなども転がっている。



綺麗だと思ったが、広かったからそう見えただけらしい。



ふっと息を吐き、少しの間悩む。



掃除をするか、しないかだ。



しかし疲れていたので地面に転がるものを端に寄せ、自室に戻ることにした。また今度、掃除や調度品を揃えることにしよう。



部屋に入ると、10畳くらいのスペースがあり、シングルのベッドと二箱の段ボールがぽつねんと置かれていた。



あまり部屋が広くないと想定してたんだけど、これじゃあスペースをもて余しちゃうなぁ。




空間デザインを考えてしまうのは、やはりカフェの影響だ。




あそこの内装はおじさんと一緒に考えていたから。




今は仕方がないので、それもまた今度になるだろう。やることが多くなって、これからしばらくは忙しくなる。




それもまた、懐かしくて楽しいな。



これから約1年、自分の住みかとなる家なのだから、うんと頑張ろう。



そう楽しいことを想像しながらベッドに横になる。


日本人用に作られたベッドは、悲しいが俺のサイズに合わない。毎回のこと脚がはみ出すので、のそりと体を丸めた。




あ、毛布…あと、制服も脱がなきゃ。

そう思うのに、ベッドに横になった途端指一本動かすのさえ億劫だ。



なんとか気力を絞りだし、なんとかズボンとブレザーだけは脱ぐ。




瞼はとっくに開かなくなって、のろのろと腕をベッドへと戻す。




ずん、と体と意識が沈む。


ふわふわと意識が気持ちいいところで浮遊する。



今日は色々あった。


18の俺がお金持ち高校に編入して、しかも1年生に。

入学式が終わったばかりの頃だから、俺はこの学園では最年長になるのか。




最年長の1年か。なんだかおかしな響きだ。



こんなの想像すらしなかった。



人生何が起こるか分かったもんじゃない。




広すぎる校舎




豪華な寮




誰かと誰かが話し合う声、




久しぶりの授業、学生としての会話。




なにもかもが新鮮だった。



新しくできた、友達。政宗は男前でとても優しい。




彼は、彼の表情や裏表無さそうな素直な性格で、周りにいる人を明るくするだけでなく、人の懐にするりと入り信頼を勝ち得ていくのかもしれない。





それが素直にすごいなと感心する。





だが、彼の少年らしい立ち振舞いを見ていると独りよがりの距離を感じてしまう。




年の差ではなく、学生として過ごした差というのだろうか。



彼と、彼らと俺には取り戻しようのない何かがあった。



それを少し寂しく感じている自分も、まだ子供だ。




少しでも差を埋めれるといい、

かれらと同等の立場で同じ考えを共有できたら。




明日もまた、まだまだ時間はあるのだし。






できれば好きになりすぎないように、






なりすぎて、ライクがラブになってしまわぬように。






ラブに?



それに、そう、好きな人が出来た。





また。


俺は悠哉さんだけを好きでいるわけにはいかなかった。





結局は。


彼は氷月雨音さんと言っていた。風紀委員長で。




あの綺麗な瞳と洗練された王者のような風格。




大きくて、優しい。




一人の人を、一途に愛するのだろうか。




多くの人を好きになるなんて、考えられないんだろうな。




軽蔑されてしまうかも。




あの困ったような厳しい顔をしてしまうかも。




だめだ。まだあの人を知らなすぎる。





想像してみたけれど、どれも違う気がした。





知ってどうする?






言うつもりも近付くつもりも、





知るつもりも無いくせに。






悠哉さんも、いとおしいのに。







彼も、彼も好きだ。



彼も、好きなんだよ。








嫌だなぁ、







嫌だなぁ。







(一人を愛して、一人に愛されたいと思うことすら、罪に思えた。)



幸村はライクとラブの違いを本能では解っているけど意識のなかでは混同混在してそう。


彼を幸せにしたい。


ばんばんキャラは作っていくつもりですが、誰が彼を幸せにするかは気分次第になりそうです。


気まぐれですごめんなさい。

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