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惚れ惚れするほど  作者: 斗丸
2/4

いち




俺はつくづく、恋愛には向いていないのだと思う。


なぜなら俺は、恋人がいようとすぐに他の人に惹かれてしまう。詳しく言えば、自分の恋人も愛しているが更に好きな人もできてしまうというわけだ。


しかも俺の場合、二人三人どころの話ではなく複数人で。


今まで付き合った人達は皆俺のこのどうにもならない体質に嫌気が差して離れていった。


俺のこの体質は、病気のようなものなのだと思う。


自分でも、たった一人を愛せたらと幾度となく願うのだ。だが、無情にも俺は好きな人がまたできる。


自分のせいで相手が涙を流すのが、胸が張り裂けそうな程苦しい。最低と罵られる度、俺にはごめんという言葉しか言うことができない。



失恋をした。


数えきれないほど失恋をした。


その数ほど多くの人を愛した。


一人だって忘れたりなんかしない。


すべてが本気の恋だったから。



繰り返すうちに、俺は恋人を作ることにとても臆病になっていた。


悲しませたくない。たとえ両思いでも、断ることが相手のためになるのだと中学を卒業してやっと学んだ。


無理なんだと、ない理由を言い嘘を重ねる。断ってしまえば、相手はまだ傷が浅くすむ。


そして次の相手を見つけるのだ。


その時は心が痛みを訴えるけど、きっと俺も好きな人をまた見つけるから。




弓田幸村。18才。


本来ならば高校三年生だ。


だが、中学を卒業したころに両親とも亡くした。

とつぜん降りかかった身内の不幸に俺はその時どうしようもなく、目指していた高校を諦め働いていくことを決意した。


中卒を雇ってくれるところなんかどこにもなくて、バイトをした。


幸い、行きつけのカフェバーがあって、そこのおじさんがとてもいい人で。身内を亡くした俺を憐れんでくれたのかそこで働かせてくれた。


おじさんは優しい人だったが、決して甘やかすことはしない人だった。


俺は朝から晩まで働いて、食いぶちをつないでいった。


カフェバーの屋根裏に住まわせてもらって、そこそこ幸せで。


図々しいかもしれないが、おじさんが良ければここのカフェを継ぎたいとも考えていた。


おじさんは妻もいなければ、知り合いの子供もいないと言っていた。

このまますればここのカフェは自然と潰れてしまうだろう。


せめてもの恩返しというか、恩返しと言うには押し付けがましいかもしれないが俺は孝行がしたかった。


感謝してもしきれない。おじさんに楽をしてもらいたい。そんな気持ちでいっぱいだった。


そんなときだ。一人の男が訪ねてきたのは。


第一印象は、なんて男らしい人なんだろうと思った。高い鼻梁に少し鋭すぎる目。その瞳は威圧感があり猛禽類を思わせる目だった。


だがその瞳の奥、俺を見つめるその瞳にはゆらゆらと戸惑うような、そんな色があったから俺は冷たい雰囲気を纏ったその人が怖く感じなかった。



しばらく静かな時間が流れた。


それを破ったのは、呆けていたおじさんで。


「何か、ご用ですか」と。


オープン前に、財布も持たずに身一つで入ってきたから、おじさんに用があると判断したのかもしれない。


「迎えにきた。」


男は一言そう言った。


何を迎えに来たのか俺には解らなかったが、おじさんにはわかったらしい。


いつも柔和な表情を浮かべているおじさんに珍しく、苦々しげな表情を浮かべていた。


そんな顔をさせるなんて。


俺も威嚇するように睨み付けると、男は少し戸惑ったように視線をさ迷わせ、意を決したのかまた目を合わせてきた。



「弓田幸村を、迎えに来た。」



次は、はっきりと。


一瞬何を言ってるのか理解が追い付かなかった。


なぜ、今さら俺を迎えに来たんだろう。

父と母が亡くなり、数年重ねてやっと幸せだったのに。


俺が1人で色々と考えている間、おじさんと男は話を進めていたらしく、男ははっと気がついた俺に改めて挨拶をした。


どうやら男は父方の親戚らしく、俺が彼の存在を今まで知らなかったのも、彼が行く宛のない俺を認知するのが遅れたのも仕方がないことだった。

ようやく得体の知れない男の正体はわかったが、


だけど俺は…


俺は俺の意思を口にした。


迷惑でもここにいたいこと。


カフェを手伝いたいこと。


おじさんに恩返しをしたいこと。


まだ実行できてないことばかりだったから、俺がそれじゃあ今までありがとうございましたと去るわけにはいかなかった。


それを聞いたおじさんはびっくりしたように眼を見開き、幸せを噛み締めるようにじわじわと笑みを深くした。


目には少し光るものがあった。


知らぬ間に緊張していたらしく、その表情を見てそっと息を吐き出した。

どうやら俺の押し付けがましい思いは、おじさんにとって迷惑ではなかったようだ。


そして改めて意を固めた俺は、男に向き直った。


「ですので、俺はあなたのところには行きません。」


困ったように見つめ返され、言うことをためらうように口を開いた。


「…残念ながら、もうお前の姓は神薙になっている。来てもらわなければ困る。」

それに、高校の編入手続きも済ませている、と。


ぽつぽつと紡がれる言葉たちに、驚き、そして焦りと怒りが沸き上がった。


「なぜ…」

勝手にそんなことを決められているのだろう、


そこに俺の意思は全くなかった。


「そこまで言うのなら、俺の働く場所に移店という形でそこの男と一緒に来い。」


怒りのまま言おうと思った言葉は、男が遮るように言った言葉で萎んでいった。


男が言うことは、俺にとっては別に悪い条件ではない。高校生に憧れがないわけではない。


しかし、俺のことよりもおじさんがどうかだ。


おじさんがこの場所に建てた意味や愛着があるのなら話は別になってくる。



「確か弓田幸村は18だろう。本来ならばまだ学生であるはずだ。俺が義理の親になるからには、高校という場で学んで欲しい。」


そう言うと、おじさんも真剣に考えるように顎にてをあて、少しだけ時間が開いてから了解の意を示した。


あとから理由を聞くと、おじさんも男の言うことに一理あると感じたらしく、まだ年若い俺に青春を謳歌できる時間を作れないものかと悩んでいたらしい。


おじさんは、この場所は確かに愛着はあるが、俺の幸せと引き換えならば安いものなんだと優しく諭してくれた。



そうして、弓田幸村改め神薙幸村は男の…神薙悠哉の息子に迎えられた。



神薙悠哉の城は、皇鈴学園という一貫制の男子校だった。


場所も森の中と小さな町ひとつないところで、カフェはどうするのだと聞くと校内にあると言われた。普通校内にカフェなんてあっただろうかと思ったが、おじさんも吃驚していたので普通はないのだろう。



そして予想通り“普通”の高校ではなかったらしく、お坊っちゃま達が通う、それも名の知れた有名会社のご子息ばかりの筋金入りの金持ち高校だった。


そして俺は18という卒業間近の歳に高校生として入るのは気が引けて、皇鈴学園の先生方に一から個別授業という形で教えていただくことになった。


もちろん高校一年生として入るわけだから、年齢は俺の意向により16才(という設定)にしてもらった。


俺の生活サイクルとしては皆が授業中、俺も時間が空いてる先生と授業をし、昼休みや休日にカフェを手伝う。

せっかくの青春が…と渋るおじさんを押しきって、今まで通り…とはすこし違うが働いていく。

そしてゆくゆくは継がせてくれると言ってくれた。



そして、忘れかけていた勉学を悠哉さん直々に教えてもらったり、ここの学園のことだったりを教えてもらったりしているうちに、少しずつ彼に惹かれていっているのがわかった。



久しぶりの感覚。それこそ本当に、毎日といってもいいほど誰かに恋していたころから2~3年ぶりに、俺は悠哉さんに…義父さんに恋をした。


絶望的な恋だ。義父に恋してしまうなんて。だが、合って数ヵ月も経っていないんだ。


父として見ろだなんて、そんなの無理に決まっている。おじさんならともかく。



男を好きになるのには抵抗はなかった。


そりゃあ、女の子を好きになる方が多かったが男を好きになったのはこれが初めてでもない。


親友、彼女がいた彼、先生。


神薙悠哉という存在は、俺の特別な枠にするりと入っていった。


実るのはきっと無理だろうが、久しぶりの甘い感覚に酔ったってバチはあたらないだろう。


片想いは好きだ。


できれば一人だけを好きでいたい。


俺は数年で変われただろうか。


早く他の人を好きになってしまいたい気持ちと、悠哉さんがどうしようもなく恋しい気持ちが交錯する。


もし他の人も好きになってしまったとしても、悠哉さんにも、その人にもこの思いは伝えることはない。


それがその人のためなのだから。


少しだけ切ない気持ちになりながら、自分の指先を見つめた。


するとコンコン、とドアをノックされる音が聞こえ、悠哉さんが入ってきた。



「幸村。」

甘いその声が、俺の名前を呼ぶことに愉悦を感じるのをあなたは知らないだろう。


「はい」


「準備はできてるのか?明日から学校だが」


心配を含む声音に、くすくすと笑う。


「心配しなくても、大丈夫ですよ。友達が出来るかが心配ですが…」


「敬語はやめろと言っただろう…まぁ、お前なら大丈夫だろ。その身長なら襲われる可能性も低いしな。あと、俺が注意したことは…」


「わかってますよ…イケメンに近づかなきゃいいんでしょ…」


耳にタコができるほど聞かされた注意に、若干僻弊しながら答える。


ここの学園は同姓愛者が多いため、ただ健やかに高校生活を送ってほしい悠哉さんからしたら自分が言い出したことが仇にならないかが心配らしいが、生憎俺は男もイケる質だしこの日本人の平均身長を丸無視した身長と友達から羨ましがられるルックス(自慢ではない。あまりに誉められるから自覚しただけ)なので、そんな心配は不要だと思う。



俺は顔が自他共に認める平凡だが、このからだのお陰で中学の頃はそこそこモテてたのだ。(再度言うが自慢ではない)


以前まではラッキーと思っていたが、今の俺としてはこんな体ではなく普通の体型で、俺自身を見てくれる人と付き合いたい。全てが普通だったら、過去に泣かせてしまった人も少なかったのかもしれない。



そんなことを思いながらため息をはくと、悠哉さんはそれが先程自分が言ったことに対しての溜め息なのだと思ったらしく、仕方ないだろう心配なものは心配なんだと言った。


全く、俺が簡単に舞い上がるようなセリフを言ってのけてしまうのだから、今回の想い人は随分とたちの悪い人らしい。


俺は困ったように笑い、「ありがとう、ございます」と小さな声で応えたのだった。



満足そうに笑い悠哉さんが出ていくと、俺はやっと肩の力を抜いた。


そうだ、明日からは学校なのだ。もう行くことはないと思っていたが、こんなチャンスは二度とないだろう。学生らしく勉強して、悩んで、たまには馬鹿やって。



これからの学園生活に思いを馳せる。


そして少しだけでいいから、恋愛をしたい。


一瞬でもいいから浮かれていたい。散ってしまう恋でも、いつかはいい思い出になるだろう。


こんなことを考えてしまう時点で、俺はもう学生にはなりきれてないのかもしれない。


嫌に達観してしまっていると自身も感じる。


まぁ、ここまでくるのに色々とあったし。


でも悠哉さんは俺のことを甘いなと鼻で笑い飛ばしてしまうのだろう。


「なにせ、まだ花の10代ですから。」

大人ぶったっていいでしょう。


誰に言うでもなく、

想像の悠哉さんに対抗するようにふんぞり返って、口許に笑みをのせた。



そして当日。俺は転校してきた、という設定なので校門の前に立っている。


初めてみたときもかなり驚いたが、やはりここの門は壮大というか豪奢というか。


周りに何もないのも手伝って、ここは日本かと疑ってしまう程に学園自体が豪華天満だ。

まるで西洋に来たようだと錯覚する。


しばらく門の影にいると、向こうから人が一人やってきた。


目を細めるとその人の容姿が見える。その人は、とんでもなく美しい人だった。


思わずかちん、と固まる。

まだ話してもいないのに恐縮してしまう。


それほどまでに“美しい”という言葉が当てはまる人だったのだ。


すこし身動ぎをして、握った鞄に力を入れた。


「おはようございます。神薙幸村くんですね。僕は皇鈴学園副会長を務めています秋元臣です。学園の案内役を賜っていますので、僕に着いてきてください。」


感想、

…くそ丁寧。


一応俺は後輩…だよな、


後輩に対してこんなに丁寧だと嘗められないだろうか…


そんなことを思いながら硬直していると、怪訝そうに下から覗かれた。



「え、あぅ綺麗」


突然のことだったので慌ててしまい、目の前にいきなり現れた美しい顔につい本音がぽろっとでてしまった。


なんだよ、あぅ綺麗って…


恥ずかしくなって顔を背け居心地悪くもぞもぞしていると、秋元先輩はきょとんとした後にくすくすと可笑しそうに笑った。


笑った顔も美しいですね先輩。

思ったことは口には出さず。


まだたぶん赤いだろう顔をごしごし擦る。


「お褒めに預かり光栄です?」


悪戯っ子のように目を細めながら言われて、またぽっぽと顔に熱がたまる。


そんな、この学園でそんな顔をしたら不埒なことを考える輩が増えますよ。



やはり思ったことは声には出さずに、う…ハイ。 となんだかよくわからない事を口にしていた。



あのあと背が高いですね、とか色白なんですねとか色々誉めちぎられた。畏れ多い…


ただ、俺を誉めることで一々反応を示すのが面白いらしく質問攻めをしてきた先輩がいじめっ子に見えてしまったのはしかたがないと思う。


そして秋元先輩に理事長室に案内され、不思議そうな悠哉さんの視線を感じながら秋元先輩の後ろ姿を見送った。


ふぅ、危なかった。どうしてもあの人にときめいてしまう。だって綺麗で笑顔が可愛いんだ。以前の俺なら惚れていた。


どうやら数年で俺の惚れやすい体質も少しは落ち着いたらしい。


だが…

忘れてはならない。ここは理事長室だ。つまり悠哉さんがいる。そして二人きりだ。


緊張で死にそうだ。


「珍しいな。彼があんなにご機嫌なのは。」


「…そう、なんですか」


悠哉さんが何気なく呟いた言葉に、反応する。



「あぁ。彼は事務的というか、機械的に仕事を遂行するだけかと思ったんだが。幸村を気に入ったのか、俺を牽制していったな。」


少し不機嫌そうに眉をしかめて言う。


そう、なのか。彼は少なからず俺を気に入ってくれたのか。


後輩としてか、それとも…


考えてしまうと、彼のことが好きになってしまいそうで怖い。


目の前に悠哉さんがいるのに。


もちろん悠哉さんにもときめきっぱなしだが。


「幸村、あいつのこと好きになったか?」


どきりとした。


まだ、好きにはなってない…と思う。


それよりも悠哉さんの俺を見つめる視線が切なくて、勘違いしてしまいそうになる。


まるで、好きになるなって言われてるみたいな。


バイとも惚れやすいとも言っていないので、ただ純粋に心配しているだけなのかもしれないが、そうだとしても嬉しい。



「先輩としてなら、少し意地悪ですけど…好きです。」


間が空いた好きに、あなたへの本当の気持ちを込めたのには気付かないで欲しい。


こういう形でしかこの言葉を口にできなくて、悔しくて切なくて苦しくて。


思わず唇を噛み締めて手を握りしめる。


胸が痛い。


でも、これが正しいんだと自分に言い聞かせる。


悠哉さんは驚いたように俺を見つめ、何かを言おうとした。だが俺は耐えきれずに、ズキズキと胸の痛みを感じながら「失礼しました」と足早にそこを去ったのだった。



日を追うごとに悠哉さんへの恋心が膨らんでいくのはどうしたらいいんだろう。


俺のこの惚れやすい体質は、もしかしたら重すぎる愛情を分けるためなのかもしれない、なんて考えながら歩く。一人だけを好きになるのは初めてなので、苦しくてしょうがない。


でもできれば、このまま悠哉さんだけを好きでいたい。


彼には幸せになって欲しい。男同士なんて不毛だ。それに加え俺はどうしようもない恋愛体質で他の人に惚れやすくて、さっき分かったばかりだが重い。こんな俺はやはり早くにも彼を諦めなければならないのだろう。



それでもやっぱり、苦しいんだ。



漏らすように小さく呟き、目元を覆った。





少し泣いてしまったあと、時間をかけて職員室へと向かった。


扉を開けると一人しか先生がいなくて、彼が言うには俺を待っていたとのこと。


申し訳なくて、素直にすみませんでしたと謝ると不機嫌そうに歪められた顔は意外そうに眉をはねあげて、まぁいいけどよ、と許してもらえた。


ただ、HRが始まってからかなり時間が経っていたらしく、足早に歩く先生のあとをついていった。



ガラガラと音をたてる扉をくぐり抜けると、騒がしかった教室内がシン、と静まり返った。


俺もそのせいで思い出したかのように緊張してしまって、助けを求めるように先生を見つめた。


先生は俺を一瞥すると、皆に向き直ってよく通る声で話始めた。


「今日から新しいクラスメートが増えることは言っていたな。少し手違いがあって遅れたが、こいつがその転入生だ。神薙、挨拶。」


それとなく遅れたことを庇ってくれた先生を感動しながら見つめていると、皆が俺を見ていることに気がついてはっとした。


「か、神薙幸村です。好きな食べ物は豆乳プリンです。よろしくお願いします。」


ありきたりな挨拶をして、尚も緊張したままクラスメートを見つめる。


だが皆は呆けたままこちらを見るだけで、なにか可笑しなことを言ってしまっただろうかと不安になってきた。


先生はため息をはいて、お前ら仲良くしろよ。と面倒くさそうに言い、あそこがお前の席だから。と窓際の一番奥を指差した。


やはり俺は何か気に触ることを言ってしまったんだと思い少しへこむ。


ぺこりと一つ礼をし、いそいそと自分の席へと戻った。



我にかえった皆は、ヒソヒソと俺のことを見ながら話している。


居心地が悪くて、俺はこれから大丈夫だろうかと不安になった。



「なぁなぁ、神薙」


少し高めの声が教室に響いた。


声の主を見ると、彼は随分小柄な生徒だった。


金髪に染めた短髪に、垂れ目で愛嬌のある瞳。


桜色の唇はなんとも扇情的で。


そんなまさに絶世の美少年が俺に話しかけてきたのだ。


また静まり返った皆には見向きもしないで、まっすぐに彼は俺を見つめる。


「な、なに?」


「お前身長いくつ?」


いきなりそんなことを聞かれて、ぱちぱちと数回瞬きをした。


心なしか彼の目がきらきらと輝いている。


「あっ、自己紹介がまだだったな。俺は佐倉政宗。」


「政宗?」


「そうそう。親が伊達政宗好きでさ、俺に政宗って名前つけてんの。」


「かっこいいね。」


「へへ、だろ?お前もさ、幸村って名前だけどなんか意味あんの?」


自慢気にいった彼を誉めると、彼は照れたように笑った。


「俺も同じだよ。親が真田幸村好きだったから、幸村って。」


「おぉ!なんか運命感じるな。幸村って呼んでいい?」


「もちろん。じゃあ俺も政宗って呼んでいい?」


「あぁ、いいぜ。って、忘れるところだった。幸村身長どんくらいあんの?」


嬉しそうにニコニコしながら尋ねてくる。佐倉政宗、心の中でそっと呼んだ。1人目の友達だ。


「最近計ったのでは192cm…だったかな」


思い出しながらそう答えると、政宗は興奮したように椅子から立ち上がり、すげえすげえと言った。


「192って、あの風紀委員長よりでかいんじゃね!幸村お前、でかいなー!いいな!」


きらきら、きらきら


髪をひょこひょこ跳ねさせながら、これでもかと目を見開きながら喋る政宗が子犬に見えて、俺も自然と頬が緩んでいく。


政宗は170もないくらいだろうか。思わず撫でると、政宗はきょとんとした顔で見てきた。


それがまた可愛くて、次は声を出して笑ったのだった。



「なんか、幸村が笑うと周りの空気が柔らかくなるのな。すごい癒しパワー。」


「はは、なにそれ。」


「ほらそれ。目尻が下がってほんとに幸せそうに笑うから。なんか見てる方が幸せになるな。」


突然真面目な顔していうものだから、まじまじと政宗を見つめ返してしまう。


すると、周りからも和やかな笑い声が聞こえてきて、確かになんて賛同の声も聞こえるからなんだか照れてしまった。


少しずつ俺の周りに人が集まって、最初の警戒したような空気はいつの間にか分散してしまっていた。



おじさん、悠哉さん、

どうにか俺も、うまくやっていけそうです。




           

ひゃあー!(好きな人が)1人目ですね!

もっと相手を増やしていく予定ですが、私も最終的な人数は決めてません…でも、10人は越えることはないと思います…たぶん(自信がない)

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