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15話 ヨシ、何も問題は無ェ!

――広場

 オレサマはフェルズに袖を引かれ、露店の間を歩いていく。

 そして次々に銀貨が使われちまっている訳だ。

 あぁ……お宝が、お宝が……。そう、お宝が減っていく。オレサマが見つけたお宝が……。

 いや、フェルズじゃなく金銀財宝の方だ。

 実情、買い物をした程度で……ではある。とはいえただ普通に暮らしているだけでお宝が減っていく……。なッ……何て理不尽なッ! ……そこまでバカげた世の中なのか? ダレだ、こんなどーしようもねェ世界を造りやがったのは? もしかして神々をも造ったとかいう造物主ってヤツか? まぁ、ンなヤツはどーせロクでもないヤロウに違いねぇ。もしそんなヤロウに会うコトがあれば、思いっきりブン殴ってやりてェ。いや、ブレスで骨まで焼き尽くしても足りねぇナ。……チクショウ。財宝を称ししないと生きていけねェ世の中なのかヨ! 何て不条理な世界なんだ……。全て呪って……いやブン殴って叩き潰してやりてェ。クソ造物主を含めてなァッ!

 う……む。とはいえ現状どうすることも出来んのが歯痒いがナ。

 …………。

 それはそうと、だ。確かめなきゃならねェことがある。


「な……なぁ、フェルズよ。もしかして黒羊亭(あの宿)も金を取るんか?」

「当たり前だよ。世の中そういう風に出来てるんだからさ」

「お……オウ」


 やはりそうなのか。何っつーコトだ。造物主とやらを恨むゼ。

 いや……渾身のブレスでもブチ込んでやらない時が済まねェ。

 そういえばヴォルザニエスのヤロウも戦費がどーのとかブツブツ言ってやがったな。やはり“金”やら何やらの管理は重要なのか? オレサマはそんなコト考えずに戦っていたケドよ。

 う……む。アイツが死んでいて良かったかもしれん……。万一、再会しちまったと思うとナ。


「そもそも、だよ? オレの兄さんたちから奪ったあれだけの財宝あるんだからさ……。しばらくはそれ使えば良いんじゃない? オレもレスィードさんのモノなんでしょ? だからその所有権を主張するつもりはないよ?」


 フェルズの言、ではあるが。


「う……グゥ……。ドラゴンにとってお宝はため込むモンだ。愛でるモノであって使うモンじゃねェ。そう、使うつもりは……」


 そう……ダメだ。お宝が目減りしていく光景は、想像するだけでも胃にクるゼ……。


「あー、そうなんだ。だったら働いて稼ぐしかないんじゃない? そうすれば多分お宝は減らないよ?」

「グ……ぅ、ナルホド。お宝を失いたくなけりゃ働いて金を稼がなけりゃならねェってワケだな。世知辛い世の中だゼ。造物主サンよ、恨むぜチクショウ……」

「そんなコト言うのレスィードさんぐらいだよ……」

「御意」


 やはりそーするしかねェか。にしてもイオレーアよ。お前まで……

 ……まぁいい。


「でもよ〜、働くってどうすりゃいーんだ?」


 オレサマは戦うコトしか知らねーヨ?


「う〜ん……だとすれば、肉体労働とか傭兵とか? オレもその辺なら一応何とかなるよ? イオレーアも行けるでしょ?」

「御意」

「ムゥ……」


 肉体労働か……。建設やら荷運びやらとか? 無論、体力には自信はあるがな。ケドよ〜、魔竜王たるオレサマが誰かの指示受けて働くってのは、沽券に関わるというか……。

 ならば、傭兵か?

 コレも場合によっては雇用主の指示を受けねばならねェか。ケド、肉体労働よりはマシか。

 ……そーだナ。


「とっ……とりあえず、傭兵にでもなるか」


 まぁ、それが最適解だろう。

 でもよ……


「ドコ行きゃいーんだ?」

「……」


 フェルズが無言で頽れた。

 え? オレサマ、何かヘンなこと言った?



――しばし、のち

 オレサマたちは一軒の建物の前にいた。

 ナカナカに立派な建物だ。ごっつい門。そしてイカツイ塀。その先にはこれまた堅牢そうな建物がある。そして門の上には『戦士の館』なる看板まで掲げられてら。

 ふ〜む。確かにココは見覚えがある……というか、魔王軍占領時に練兵所として使ってたトコロだナ。

 今は何に使ってるかは知らんがナ。

 ……というか、仕事と何か関係があるんか?


「ココがこの街の傭兵ギルドさ。ここで登録すれば、仕事をもらえるかも……よ?」


 と、フェルズの言。

 けどさー。


「傭兵ギルドって、何ナン?」


 “傭兵”は知ってるゼ? でも“ギルド”って何やねん?


「えっと……組合というか互助会みたいなモノさ。戦士アレオスが作ったって話さ“戦士の館”っていうヤツ」

「オウ……」


 看板にあった文句だナ。

 にしても、アレオス……か。その名には聞き覚えがある。“勇者”の仲間だっけか? 剛力の戦士と聞いたな。まぁ、幸か不幸かオレサマと戦う機会はなかったケドな。

 ……そうか。そいつの作った組織なのか。

 まぁ、オレサマの正体がバレなくて良かったな。

 ……あっ。……いッ、いや、べっ、別にビビってるワケじゃねェぜ? オレサマが全力で戦ってやらなきゃならねェだろ? そーいうヤツにはさ……。


「何か、変な汗かいてない?」

「グム〜〜」

「フェルズ様、男という生物には触れてはいけない心の痛みというものがあるのです。そこに触れられてしまえば、もはや生死の境地しかないのでしょう。……多分」

「なるほど……」


 イオレーアよ……『多分』」かよ!

 いやまー、予期せぬ強敵の名前を聞いて驚いたのは確かだけどサ。

 でも、いざ戦うとなりゃあ一歩も引く気はねェ! 魔竜王レスィード様だからヨ!

 そして拳を握りしめた。まだ見ぬ強敵との戦いに心が震えるってモンだ。


「まぁ、それはともかくとしてさ……続き、いい?」


 ぐぬぬ……フェルズめ。所詮女子供にはオレサマの闘志など理解できねェか……


「このギルドで警備とか護衛とか、あるいは戦争への参加とか、そういう仕事の依頼を受けるんだ。そしてギルドは受けた仕事を加入したメンバーに振るのさ」

「ふ〜む……」


 ナルホドねェ。そーいうシステムか。


「コレに加入すれば仕事が回ってくるんだな?」

「入れたら、だけどね」


 ン?


「どーいうこった?」

「それこそ身元とか技量とか品位とかさ。誰でも入れるわけじゃないよ」

「ほう……」


 ふ〜む。技量なら何の問題もねェな! ニンゲンの身体にされちまったとはいえオレサマに勝てるヤツなどいねェ! 多分……。あのイルムザールのヤロウを除いてな。ま、まァ……当の本人は死んじまったらしいしヨ……。


「ヨシ、何も問題は無ェ! じゃあ、行こうゼぇ〜」

「えっ……」


 ナニやらフェルズが不安そうな顔をしやがる。イオレーアも目を逸らしよった。

 フ……フン。手前ェら、オレサマの強さを見てなかったンかヨ? 見てソレならとんでもないフシアナだぜェ?

 さて、行こうか。

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