5/15
あるはずの無い過去
第三話 「あるはずの無い過去」
気がつくと僕は、一本道の脇にある、色褪せたベンチの上に横たわっていた。
体を起こすとお腹の上に、開かれたままの本が置いてあった。
読んでいる途中に寝てしまったのだろうか。
起きたばかりでまだ寝ぼけているのかもしれない。視界が全体的にぼんやりとして、まるで夢の中にいるみたいだ。今まで僕は、何をしていたんだろう。
とても長い間、悪い夢を見ていたような気がする。狭くて汚い部屋の中で、電気も点けず、いつも一人ぼっちでパソコンに向かい合っていたような。その中で、顔も知らない誰かと、居るかもわからないような誰かと、延々やり取りをして、楽しい時もあったけど、それはいつも上辺だけで、心の底は、いつも冷たくて――――
……あぁ、なんて嫌な夢なんだ。もうあんな夢、絶対に見たくない。あれはもう、悪夢なんて生易しいもんじゃなかった。あそこには、本当に何も無い。あそこにいると、生きる意味すら分からなくなる。
何をしてもつまらなくて、何もかも無駄に思えて。死のうと言う気力すら湧かなくて、本当に、嫌な夢だった。でももう終わったんだ。考えていても仕方ない。大切なのは今だ。
折角こんないい町に生まれ育ったんだから、今を楽しまなくちゃ。




