表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラージ  作者: 全州明
第六章
15/15

楽しげな日々の中で3

 ………嘘だ。そんなはずない。僕が、僕が変わったなんて。

 僕はこの世界でも、普通になれないなんて。だったら僕は、どうすればいいんだよ。

「何を悩んでるの? あなたはもう、外の世界の普通になれたのよ?

 目を覚ませばいいじゃない。目を覚まして、こんな世界から抜け出して、一生かけても見渡しきれないような、広くて大きい、本当の世界を、知ればいいじゃない」

「でもどうやって?」

「簡単よ。口にすればいいの。一体ここが、どこなのか」

 ここがどこなのか。ここは、間違いなく僕の頭の中だろう。でも多分、それを言っても僕は目覚めない。僕の頭の中だってことぐらい、最初から、わかっていたことだから。

 なら僕は、果たして何を言うべきなんだろう。そんなことはもう、わかり切っていた。

 顔を上げ、空を見上げる。視界いっぱいに広がるその景色は、しかしいつもと変わらない。

 雨が降ることもなければ雪が降ることもない。この世界ではいつもいつも、こんな天気だ。

 これが、僕の頭の限界なんだろう。

 そんな自分に嫌気がさしたのかもしれない。目を覚ましてもいいような気がした。



「ここは、この世界は❘僕の妄想だ」



 途端に世界はばらばらに崩れ落ち、僕は二人の間に出来た穴の中へと落ちて行った。

 それは全てを呑みこむような、真っ暗な穴だった。





 目が覚めると僕は、狭くて汚い部屋の、ベッドの上にいた。

 電気が点いておらず、うす暗いせいで、それがさらに際立っていた。

 ふと、この世界が、酷くちっぽけで、つまらない場所に思えた。

 久しぶりに、どこかへ出かけてみようかな。

 例え外の世界が、都合の悪い事ばかりで、何一つ、思い通りになんかならない場所だったとしても、何一つ、取り返しのつかない場所だったとしても、それでいいんだ。

 きっとその場所は、部屋の中なんかよりも、頭の中なんかよりも、ずっとずっと――――



 ――――広くて大きいはずだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ