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ラージ  作者: 全州明
第六章
14/15

楽しげな日々の中で2

「そうやって、また逃げるの?」

 彼女が何を言っているのか、何が言いたいのか、まるで見当もつかなかった。

 逃げる? 何の話だよ。僕は、逃げたりなんか――――


「本当はここがどこなのか、気付きそうになる度に駆け出して、落下して、辺りの景色を書き換えて、無理やり忘れようとしてるみたいだけど、あなたはもう、これ以上逃げられない」

 いつの間にか、僕の右足は、元に戻っていた。

 僕の体はまるで言う事を聞かず、ピクリとも動かない。

「だってそうでしょう? この世界は不自然すぎるもの。そこらじゅうが違和感で溢れてる。

 ここはいつも楽しくて、嬉しくて、明るくて、都合が良くて…………

 でも本当に、ここは素敵な場所なの? あなたの居場所はもう、ここにしかないの?」

「そうだよ。僕の居場所はもう、ここにしかないんだ。だから、だから邪魔をしないでくれよ。

 別にいいじゃないか。いつまでも、ずっとこのままで。

 僕はもう嫌なんだよ。外の世界が。あそこにいる奴らは、皆僕の事を変人呼ばわりするんだ。

 確かに僕は、態度や口調や性格が、ころころ変わるよ。何の前触れもなく。

 喋り方だって、最近やっと、普通になったばっかりなんだ。

 でももう、それも必要ない。だってここでは、僕は普通になれるから。

 所詮ここは、僕の頭の中の世界だ。でもだからこそ、ここには変人しかいない。

 変人しかいない世界では、変人が、普通になるんだよ。

 それで、外の世界の普通の奴らが、ここでは皆、変人になる。

 こんないい世界、他のどこにあるっていうんだよ」

「違う。あなたはこの世界でも普通にはなれないわ。だってあなたは、あの頃とはもう違うもの。

 あなたは本当の自分をひた隠しにして、普通になってしまったから。

 外の世界の普通では、ここの世界の普通にはなれない。そうでしょう?」

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