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ラージ  作者: 全州明
第五章
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再発

 第五話 「再発」



 ――――重たい(まぶた)をこすりながら時計を見る。

 今日もいつも通りの時間に目覚めたらしい。扉を開けて階段を下り、リビングへ向かう。

 やっぱり今日も母さんの姿は無く、テーブルの上に置手紙が置いてあるだけだった。

 テレビをつけてニュース番組にする。これと言った事件や事故は起こっておらず、かといって、科学の進歩で新たな何かができたわけでもない。

 つまりいつもと変わらない。それが普通だと、今までずっと思い続けてた。

 でもここ最近、この変わらない毎日に、僕は違和感を抱き始めていた。

 あまりにも変わらなさすぎるのだ。本当に、何もかもがいつも通りで、何一つ変わらない。

 最後に遅刻しそうになって焦ったのは、一年以上も前のことになる。でもその日は創立記念日で、学校は休みだった。結果的に僕は遅刻をしなかったのだけれど、ここ最近は曜日に関わらずほとんど同じ時刻に目が覚めて、それすらもなくなった。

 最後に転校生が来たのは、四ヶ月程前になる。例の元気な女の子だ。

 今ではすっかりクラスに打ち解けて、その容姿故(ゆえ)、男子の間で密かに支持を得ている。

 それ自体は別におかしくないけれど、問題は、最近他クラスの知り合いを見かけなくなったということにある。

 担任の先生によれば転校したのだという。けれどその後も一人、また一人とあまり話さなくなった友達を中心に見かけなくなっていった。

 もし見かけなくなった知人が本当に全員転校したのだとしたら、どこかのクラスに必ず空きの席があり、転校生が来ないのだから、それは日に日に増えて行くはずだ。

 そしてそんなことになれば、当然目立つし、通りがかる人の目にも止まる。

 でも僕は、そんな空席を、今まで一度も見たことが無い。

 残る可能性は一つ。僕の教室の奥にある五組から九組が、空きの席だらけでほとんど誰もない、という可能性。かなり強引だけど、もうそうとしか考えられない。でもこれも、多分違う。だって時々聞こえてくるんだ。

 先生の怒鳴り声や、楽しそうにはしゃぐ、誰かの笑い声が。

 このまま考えていても(らち)が明かないので、ひとまず学校へ向かうことにした。

 途中に横切る三つの教室を、いつも以上に注意深く見る。

 知り合いは一人もいなかったけど、やっぱりどの教室にも空席は無く、人数も僕の教室とあまり変わらなかった。

 僕は四組の前を通り過ぎ、その先の、五組へと向かう。微かに笑い声や話声が聞こえてくるけれど、それはどこか虚しくもあった。廊下側の教室の窓は、全て擦りガラスでできていて、入口の扉を開くまで、中の様子を見る事は出来ない。

 僕はその扉を恐る恐る開いた。

 中からは、今も楽しげな笑い声や話声が漏れてくる。

 そんな当たり前の生活音に、僕は愕然とした。

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