001
医療用バッグと水と食料が満載された荷台の頂上で目を覚ました。
立ち上がって周りを見れば、一面の草原。
当然、俺は呆然。
*
人発見!ちょっと遠くで清楚で可憐な女子と汚らしい男三人組がいちゃいちゃしている!しかも汚い男は胸ぐらを掴み女の子を岩に押し付けていちゃいちゃしている。
あ、女の子が何かを出した。あれはこの国のお金かな。色から見て銅貨だろう。女の子から銅貨を取るなんてどうかしてるよ全く。
ちょっと待て、あれは男が女にお金を渡していちゃいちゃしているのではなく、あれはマジで盗賊があの女性を襲っているのではないか。
そう気づいた瞬間、彼は消えた。
そして、しばらくして盗賊たちの首に大きな切れ目が出来ていた。
*
3つの赤い噴水が落ち着いた頃、彼は岩陰から女性の前に姿を出した。
「ありがとうございます!助けてくれたんですよね!」
清楚で可憐な女子と思っていたがどうやら違ったらしい。よく見ると清楚で可憐で猫耳つけた女子だ。
「あの・・・」
ふむ。とても甘くていい匂いを漂わせている。そこに転がっている盗賊とは大違いだ。
「えっと・・・ひゃっ!」
猫耳をそっと撫でてみる。もふもふのふかふかだ。いや、超もふもふのふかふかだ。ずっと触っていたい。
「何なんですかあなたは!」
突き飛ばされた。かなり力が強いらし・・・おお!髪の毛が逆立ってる!普通の人間は鳥肌立てるくらいしか出来ないのに!あ!しっぽもついてる!迂闊だった。普段行くお店は猫耳だけだったから盲点だった。ちょっとしっぽも触ってみよう。
「ひゃん!」
腰が抜けたのかな?そりゃそうだ。盗賊に襲われて助けられた安心感で腰も抜けるだろう。何故しっぽを握ったタイミングで腰が抜けたのかは謎だが。
「仕方ないなぁ」
彼はそうぽつりとつぶやき彼女を荷台にそっと乗せた。
*
「村には50人くらいの人たちがいます。そこまでお願いします。」
わたしは村まで荷台に乗って送ってもらうことにしました。だってこの人、いきなりしっぽを掴んでくるんですよ?荷台に乗って楽するくらいいいですよね?
「そういえば剣をもっていないんですね」
「・・・ああ。剣の扱いに慣れていなくてな」
「でもさっき消えたのは光か闇の魔法ですよね?剣もなしにどうやって発動した・・んです・・か・・・???」
私の話の途中からニヤニヤしながら泣き出してしまいました。ちっちゃい声で「きたこれ」と言っていますが何が来たのでしょうか。
「ああすまん。このマントのおかげさ」
そう言うと涙を拭いながら彼は来ていた真っ白なマントを広げました。本当に白いです。よごれが一切ついていません。しかもすこしだけですが装飾もされています。
ですがここは平野の中の道。今は春から夏への季節の変わり目で、道は土の色、道を外れれは膝くらいまでに伸びた青々とした雑草が広がっています。とてもじゃないけど、この真っ白なマントじゃ目立ち過ぎます。
「でもこれ白すぎて逆に目立ち「そんなことより!光魔法でも闇魔法でもいいからどうやったら使える?というか魔法でどんなことが出来るんだ?君も使える?どれくらいの人が使える?MPとか数字で出てくる?というかその前にHPって概念あったりする?」
突然の質問攻め!ええっと・・・
「魔法は剣を掲げながら呪文を唱えて神様にお願いします。魔法に出来ないことはありませんが神様次第です。剣があれば誰でも使えます。もちろん私でも。数字とか概念とか言われてもよくわかりません」
「まって突然そんなに答え言われてもこっちが処理しきれない」
「私の!質問を!遮ってまで!いっぱい質問したのは!その・・・名前も知らないあなたじゃないですか!」
今気づいた私助けてもらった人の名前聞いてなかった。
「ごめんごめん。俺何も知らないんだ。この世界について、いや自分のことも含め全て」
「にゃ?」
いけない!いきなりのカミングアウトでつい鳴き声が出ちゃった!ってなんかまた泣いてる!「ほんものだ」とか言いながら泣いてる!なんなんだこの人!
*
そこからとりあえず道を見つけ、ひたすら道ある道を歩いていた時に、彼女を見つけ、情報を仕入れた上で一つの答えを導き出した。
どうやら俺は異世界人らしい。