雪塊の朱雀(セッカイノスザク)
家へ連れて来た彼女は今椅子に座ってキョロキョロと辺りを見回している。
とりあえず適当にお茶を入れテーブルへ持っていくと「ありがとう。」と少し微笑んで見せた。
あたしはお茶を飲みながら彼女の話を聞くことにした。
「ところであんた、なんでこの街に来たんだ?まぁ来たっていうよりは迷い込んだみたいだけど。」
とりあえず一番気になっていたことを尋ねると
「私、水色の街から旅を始めたの。しかもつい3日ほど前にね。」
彼女は淡々と答えあたしは少々驚いた。驚きを表に現さないよう続ける。
「旅?こんな若いしかも女の子が。どうしてそんなこと…?」
「なぜ…か。」
彼女はそう続け少し考える素振りを見せると
「なんででしょうね?」
と逆に問われたことにあたしは呆れた。
「なんでって…聞かれても困るんだけどなぁ…」
と苦笑すると彼女は遮るように
「あえていうなら…探してるのかもしれないわ…。」
という曖昧な答えを見つけた。「へぇ…何を探してると思うんだ?」と聞くと、
「それが…よくわからないのよね。ていうかわかってたら最初に言ってるわよ。」
と、謎の正論と共にあたしの問いに答える。あたしがまた苦笑すると今度は逆に
「それより…ここら辺の地図とか持ってない…?」
そう問われた。あたしは
「んー?あるよ。ちょっと待ってて。」
と言って地図のあるはずの場所に探しに行くと、意外とすぐ見つかったので早めに戻ることが出来た。あたしが地図を手渡すと見方がわからないようだったので
「ここが今いる赤の街。んでこっちがあんたがいたっていう水色の国。そんでここがすぐそこの通称迷い森。正式名称は深緑の森っていうらしい。」
とりあえずの説明を終え彼女を見ると平然とした顔をしていた。
彼女は覚えがいいらしく全て頭に叩き込んだようだった。
話を聞く限り彼女は常識はあるがこの辺りの地形等の知識がまるで無いようだった。
なんかこんな子が一人で旅をすると思うと大分心配になるなぁ…。そんなことを考えているうちに彼女は立ち上がりあたしの家出る支度をしていた。
「何、もう出てくの?」
と問うと、
「えぇ、私もこの街でやることがあるのよ。」
「ならあたしが案内しようか?」
「そんな、大丈夫よ。」
とあたしが出した提案をすぐさま却下したが土地勘のない彼女がこの街を歩いても目的地になんてつくはずがないと思い、
「いや、来たばっかだし。案内するって。」
というと
「そう…?なら、お言葉に甘えて…お願いするわ。」
と了承を得たところで、「ちょっと待ってて。あたしも支度するから」といい愛用のカバンを取りに少し待ってもらった。
「おまたせーじゃ行こっか。」
と言ったところで、あたしたちは街へ出て行った。