赤色の走者(セキショクノソウシャ)
自分の動きに合わせて靡く短髪。頬を切る心地よい風。まだ日が上がりきってない太陽。実に爽やかな朝だ。
あたしは赤の街。通称情熱の街の中で一番と言える程の脚力と顔の広さだった。
まぁ小さな街だが商店街とかではよく魚をまけてくれたりするおっちゃんとか通りかかると売れ残ったからって花くれるおばちゃんがいるし。
脚力は言うまでもなくあたしが一番なのは確かだ。現に街全体のマラソン大会でぶっちぎりの一位。街の運動会とかでもあたしが出る種目は全部一位とってるし。
たまに陰口の噂とか親友のカガリから聴くけど運動も人付き合いも好きだから全然いいんだけどさ。むしろ言わせておけって思うタイプだし。
それに…それよりひどいのがすぐ身近にいるし。
今の言葉で誰だか想像がつくとは思うかあ言わないでおこう。どうせ知るときが来るんだから。
そんなどうでもいいことをない頭で考えていると、この時間には到底いるとは思えない人影が見えた。誰だろうか。そう思い人影の方向へトレーニングがてら走っていくとその人影は薄い霧に包まれながらも徐々に見えてきていた。
流石に遠目からでもわかる。あれは確実に少女だ。ワンピースだかスカートだかまではまだよくわからないがあのシルエットはどう見ても少女だ。頭に大きめのリボンをした少女。
ようやく見えたところで彼女もあたしが近づいていたことに気付いていたようで私の前で止まった。
あたしはありきたりな「あんた…誰だ?」という質問を笑顔でしてみた。そしたら彼女は「人に聞く前にまず自分からって習わなかった?」と最もなことを言ってきたのであたしは小さく頷きそのまま少し俯いた。「まぁそんなことはどうでもいいわ」という声が聞こえ顔を少し上げると「私はアリス。呼び捨てでいいわ。同年代っぽいし。」と短くシンプルな自己紹介した。「あたしはアカリ。あたしのことも呼び捨てでいいよ。」とあたしも続いて自己紹介をする。新しい友達ができたようで少し嬉しがっていると「ところで…」と問いかけてきていた。
「何?」それしか言うべき台詞がないのでこちらも問いかける。何を聞くのかと思えば彼女の言った言葉にあたしは驚かずにはいられなかった。「ここって…どこ?」彼女はそう言ったのだ。
なぜあたしは驚いたか。そんなもの簡単だ。なぜならこの街は。この街の周りには草原しかないのだから。
あえて言うのならば森もあるがここがそんな森林に見えるのならどれだけ彼女の目は節穴なのだろうか。それにあの森は狼が住んでいてごくたまにこの街に降りてくるので誰も近寄ろうとしないのだ。
とはいえ彼女は訳ありのようだ。同い年くらいの華奢な少女をそんな危ないところに放置しておくという程辛いものはない。
あたしは彼女をあたしの家へ案内したのだ。