水色の旅人(スイショクノタビビト)
つまらない。そんな子供みたいな理由で飛び出してきた街もう見えなくなっていた。
私はあの街が大好きだ。水色の街。通称不思議の街と呼ばれている…らしい。
突然現れた私を疑いもせず優しく接してくれたあの街は平凡という言葉が似合うのかもしれない。
まぁ平凡が一番なのかもしれないが
なぜ私はあの街に居たのだろう。何もすることもなく只々歩いていた私は暇つぶしにそう考えていると記憶が飛んでいたことに気がついた。
確か私は人と一緒だったはずなんだ。背の高い燕尾服を着た青年と猫を人にしたような少年。あと、気の狂ったような幼い少年。そんなに細かく覚えているのに彼らの顔やいた場所はまるで覚えていない。一体私の頭はどうなってしまったんだ、ついに狂ったかと私自身でも言える程度におかしな記憶があるのに一番大事なことだけは覚えていないのだ。まさか今の今まで気にしていなかったことが今になってワカラナイとなるととても情けないもので先が思いやられた。私は大事な役職を任されていたような気がするのだが…それも気のせいかもしれないと思い私は昔いた場所のことについて考えるのをやめた。
次に私はどうしてはあの街はあんなにも私に良くしてくれていたのだろうか…と、どんなに考えても答えの出るはずもない答えを探していたが、きっとあの街はそういう心優しい人間たちが集まる集成があるのだと、それがあの街の特徴なのだろうという考えをいい具合に適当にまとめ、無駄に思考回路を回すことをやめた。
それでも私の足りない頭は無意識に何かを考えてしまうらしく、あんなに良くしてくれた街が名残惜しい。そんな感情は全くと言っていい程なく、自分はこんなにも冷酷な人間だったのかと驚いているということを考えていた。
まぁそんなことはどうでもよくて、大事なのはこれからどうするかということだ。突然街を飛び出して確実に必要だと思える最小限の荷物だけを持ってきた私は、もちろんこの国の全体地図など持っているはずもなく、途方にくれている真っ最中だった。
そして一本道を適当に歩きながら考えた結果。私は巡ることにした。何をと問われれば答えは街をと即答するであろう。といっても数年しかこの世界にいない私は知識もこの世界の常識より遥かに乏しいため、知っている7つ街を巡りに行くしかないのだが…。
とりあえず私は今歩いている一本道から一番近い赤の国。通称情熱の国と呼ばれる地へ行くということに1人脳内会議で決定したのだった。