【速報】シンデレラがヤンデレかつ百合だと思ったら義弟だった件
好評でしたら詳しいところと後日談を書きたいなぁともくろんでます
ごほん。
昔々、あるところにとても美しい女の子がいました。
彼女は心がとても優しかったのですが、意地悪な継母と姉にいじめられて、「灰かぶり」なんてよばれてたとさ。
この「シンデレラ」という童話を、みなさんはご存知だろう。
私はイリア(18)。前世の名前。鷹見依莉(21歳。)
ええ。そうです。
私もとはバリバリのゴリゴリの日本人でございます。
なぜ私がこんなことをつらつらと綴っているのか、といいますと、大学生活をエンジョイしていた私は、なんとみんな大好き異世界トリップを成し遂げてしまいまして、早3ヶ月。
ここらで記録をつけておこうかな、と思い立ったわけでございます。
そこではじめのシンデレラのお話に戻るわけですが、見事に私は「シンデレラ」世界の住人となったわけです。
考察そのいち。
・この世界の人々には、本人の意志とは関係なく【役】が与えられる。
・もっとも、この世界で生まれたほとんどの人間は【役】に適合されるように、心の形が変化する。
・ごく稀にいる、重要な【役】を持つ人々は、時たまに他の世界から私のように引っ張り込まれる場合が多々ある。
そう私の【役】ー。なんだと思います?
そもそなんで【役】なんて分かるかって?
まぁまぁ焦らず。それはまたあとで。
ちなみに神様が教えてくれるとかそんなフィーリングバッチコーイの世界ではないのだよ。
すべては仮定、実験、考察、理解で成り立ちます。
この世界でも、そればっかりは同じようです。
はじめにこの世界に引っ張られた時、私は高い木から落っこちてきたらしい。
それで、「何だか…頭が痛いわ…」「あれ…貴方は?」という女優顔負けの演技をぶちかまし、なんだかよくわからないけどすごい美少女につきっきりで看病してもらって、今に至ります。
といっても、意識が覚めるまで一月とちょっと。その間私は寝てすごしていたようです。
医者は、それだけ眠っていたのだから、なにがあってもおかしくない。頭がイかれたのかもしれない。みたいなことを言って去って行きました。
でその謎の美少女に「貴方は…?」と聞いたところ
「シンデレラです…イリアお姉さま、私のことを覚えていませんか?無理もないですよね…お姉さまは私のことをお嫌いでしたから…エリスお姉さまも私のせいで遠い御国へに行かれてしまい、もう二度と…お母様は男遊びが激しく家に滅多に帰ってこられない…」
と夢見がちな少女特有の一人がたりを鈴がなるような可愛らしい声で始められて、ふんふん聞いていたのである。
考察そのに。
・どうやら私は「シンデレラ」世界ではイリアという名前で、そこそこの令嬢らしい。
・以前は悪い男に捕まって、貢ぎまくってたが、その男が流行病で死亡。そのショックで飛び降りようとしたそうだ。
・私の【役】は何とシンデレラの姉さんらしい。
・髪の毛、瞳の色は共にくすんだ茶色だから、シンデレラさんとは血がつながっていない。(ここは童話通りだね。)
・もう一人のお姉さんは、シンデレラのせい(自称)で帰らぬひとになってしまった。
・お母さんはなんと男遊びが激しすぎて、いろんな男とエロスの階段を登りまくってしまったそうだ。そのため滅多にうちに帰らない。
こんな感じのことをシンデレラさんが言ってましたが、まぁ、お母さんまじお母さんだわ。
「お姉さま私やっと、やっとお姉さまが家に戻ってくださって、あの腐れ男から私のもとに帰ってくださって、本当に嬉しいんです。お母様もエリスお姉さまももう居ないんです…お姉さま、大丈夫です。私がお姉さまのお側にずっとおりますわ。お姉さまはずっとシンデレラのものです。ずっぅっと二人きりでいましょうね?」
考察そのさん。
【速報】シンデレラがヤンデレかつ百合だった件
とりあえず私はシンデレラを部屋から追い出し、心の整理を試みるのです。
おい。
何でそんなフラグ立ててんのや。
というわけで、私はこう結論付けました。
とりあえず、お【役】束通り、いじめ抜いてやろう。と。
流石にこんな美少女にそこまで酷いことをするのは気が引けたので、肉体労働と家事。この二つに重点を置いて、やらせることにした。
ところがどっこい。
このシンデレラさん。
何とまぁ。
「お姉さま!そんなに私のこと頼ってくださるのですね!大丈夫です。お姉様の身の回りの事はぜぇんぶ私が行います。ご飯を食べさせて差し上げるのも、お姉様のお洋服を用意して、お着替えをして差し上げるのも、お風呂だって、全部このシンデレラにお任せください!!」
からもう仕方が無いから、
「あんたはまるで灰かぶりよ。
と思いつく限りの暴言を吐いて見た。
そしたら
「あぁお姉さまもっと蔑んで…?もっとお姉さまの言葉で私を包んでください…お姉様ぁ!でもお姉さま、そんなお辛そうになさらないで?私のために無理はしないで?そんな事しなくても、私は貴方のお側におります。」
やぶぇ。
こいつ末期だ。
そんなこんなで、私今に至るのである。
でもそろそろ本格的に精神が耐えきれないので、
「今までお世話になりました。」
シンデレラが、動物小屋で餌をやっているタイミングを見計らい、このうちから出て行く事に決めました。
ぺこりと、頭を下げたその時、
「おねえさま?」
ひどく冷たく、のっぺりとした声が聞こえて、背筋が凍った。
「お姉様、どちらに行かれるのですか。ねぇその荷物はなぁに?なんで、そんな風な目でこっちを見るの?行かないよね?どこにも行かないよね?ねぇねぇねぇ!!」
「さよなら、シンデレラさん。」
そう言った瞬間、体がガクンと揺れた。
「ダメだよ?【役】を捨てて逃げるのなんて、俺たちには出来ないんだ。」
最後にそう聞こえた。
目が覚めると、そこは見知らぬところだった。
「知らない、天井だ…。」
一度やって見たかったんだ。
「なになにー?もしかして、【お姉さま】もあの巨大ロボアニメの時代の人?俺もだよー。まさか日本だったとはさー。」
すぐ横にいたのは、金髪碧眼の、すごい美少年だった。
「あー驚いたー?俺シンデレラー!日本にいた頃は、坂上慎也って名前だったよー。こっちにきてからもう3年は経つねー。いやさー、おねーさまはこの退屈なばっかの世界で、唯一の癒しだよー。ねー?ぎゅーってしていい?あー答えは聞いてなーい。」
彼はどうしてこう世代といい、ハマってたものがことごとくかぶるのだろうか。
「好きだよ、おねーさま。俺あんたの事だーいすき。でもおねーさまはおねーさまのままで居なきゃいけない。この世界ではね【役】と違うことをすると、怒られちゃうんだぁ。だから俺は毎日頑張ってシンデレラやってんのー。俺ちょー可愛くね?」
「でもね、満月と新月の時だけ、俺らはもとに戻ってもいい。解禁日なんだ。頑張ったご褒美だよ。だから、ね?おねーさま、行かないで?俺、王子と結婚なんてしたくない。俺ホモじゃないし。だからおねーさま、
ずっーと、いっしょに、いようね。」
しかしこの世界で【役】に逆らうことなんてできない。
シンデレラはもちろん王子様と結婚をして、幸せになりましたとさ。
だか童話には大きな抜け穴があった。
シンデレラが結婚した後、どんなことをして誰と幸せになったのか。
そして意地悪な姉はどうなったのか。
それは、まだこの先の、誰も紡いだことのない、物語。