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人魚姫
冷たくも暖かい風を体いっぱいに浴びて、長くなった髪の毛をその風にそよがせた。
頬にあたった青い雫。
指ですくって舐めてみたら涙の味がした。
海は、海は泣いているの?
海は、海は鳴いているの?
柔らかくも灰色と青色とオレンジがまざった空は、柔らかな羽を作り上げていて、肩はねがその空にふわりと浮かんでいる。
人魚姫のように歌を歌いたい、歌を、歌を、私に。
声を、声を、私に。
けれど、この喉からは声などでない。
けれど、この体からは音などでない。
歌わせて、唄わせて。
この私に。
唄わせて、歌わせて。
この場所で。
空も飛べず、海も泳げず、大地を滑ることもかなわない。
声はかき消されて、波は弾かれて、空は切り裂かれて、また巡る。
また巡る。
巡っていく。
ねぇ……またね。




