6/32
声
鳴いて、鳴いて、喜びの歌を。
鳴いて、鳴いて、美しい声で。
私は息を潜め狙う。美しい声とそのやわらかな肢体を。
ねぇ、鳴いて。
もう一度、私にその声を聴かせておくれよ。
私を見つけた美しい声の持ち主は、飛び上がると、逃げるどころか私を抱き締めた。
甘える気分じゃないと噛み付くと、寂しげな顔でそれは私と距離をおく。
ねぇ、鳴いて、鳴いて。
美しいその声で。
手足を伸ばし、私に近寄ろうとするのなら、その体に痣ができるほど強く噛み付いてやろうか。
ただ鳴いてくれればいいんだ。
美しい声も、美しい体もいつの間にかどこかに置いてきてしまったこの私に、鳴いて声を聴かせておくれ。
その美しい肢体を奮わせながらさ。
悔しいなぁ、悔しいなぁ……。
視界が徐々に見えなくなって、目から暖かな何かが落ちた。




