仮面
僕は君のそばで誰よりも君と作り上げた喜びを感じたいと思っていた。
君が僕の一番見てほしいところを見ないことはわかっていた。
君が僕の一番評価してほしい部分を本気で評価しないこともわかっていた。
君の評価はいつでも甘かった。
僕は尻尾をふって、嬉しがっているふりをした。
足掻いても、無駄だとわかっていた。これが君なりの愛し方だから、悪気はまったくないこともわかっていたし、君の決意はかたいから、説得でどうにかできるとも思っていなかった。
やりもしないで決め付けるな、ときっと誰かは怒るだろう。でも、僕にはわかりきっていたんだ。君のそばにいつづけたから。
君が見てくれないなら僕は姿形を変えようと、君の目にいつか留まる場所を探して定着した。
きっと君は気付かないことだろう。ここには、君が評価するものがたくさんありすぎるから。
それでも僕はこれにかけるしかなかった。
君に厳しい事を言われても良かった。
ただ、認めてほしい。
その一心で僕は、姿形を変えた。
甘くて優しいだけの餌なんていらない。僕を可愛がってくれる君は大好きだけど、僕が心の底から認めてほしい部分は、そこじゃないんだ。
僕は、二つの姿を持った。
一方では君に可愛がられる従順な姿で、一方では君の知らない厳しくマイペースな姿。それはまるで太陽と月のようで、僕の中にはじめからどちらも息を殺していたようだった。
一気に空が夕闇にのまれて紫や赤になるように、また、一気に空気が水中で水面へ上がって弾けるように、僕とは違うまた別の僕の姿は驚くほどの変貌ぶりを見せた。
まだ僕は君には見つからない。
もうしばらくは見つかってはいけないし、僕は他人になりすます気でいる。
君と根本が似ている人になら見つかったけど、僕がきちんと僕のことを見てもらいたいのはこの人じゃないんだ。
君なんだ。
だから僕は今日も仮面を使い分ける。




