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断ち切る
風の速さで駆け抜けた
肌寒かった気候も暑くなって溶け出した思考回路も、つめを立てた傷跡も
なくなってしまうと嘆かれた小指のようにあっけなくすぎさった
腐って朽ちて落ちる果実のように
もぎ取られるなら旬であるうちに
早熟であるのなら熟すまで飾ればいい
飾れるうちに飾らなければ、そうして動きづらくなった黒のパンプス
穴が開いて貼り付けて補って常に何かと戦いながらもがいた
苦しい、苦しい、叫ぶうちに秋はいつ過ぎたのか冬が来た。
花が枯れて、また咲いて
狂って狂ってアレルギーを起こす
霜が降りたと喚起の声雨が寒いと嘆く声
時間の流れの速さに圧倒されながら立ち尽くす
くさりきれない思考回路
中途半端な構成の脳みそを回転させれば喉が悲鳴を上げた
痛みにこらえて飲み干した液体、むせて吐き出して、それでもさらけ出せなかったものの数を
誰か笑い飛ばして、そうして立ち上がる
月が照らし出した時、そこに自分の長い影と、なくしていく物の数を思った
過去をふりかえれば風が吹く。
未来を思っても風が吹く。
何か一つでもたがえればここに「今」などなく、石ころ時を刻むままに
長い月日は何を与え、何を奪い去っていくのだろう
知らないままに手を伸ばし、今日も一つを断ち切っていく。




