風と木と少女
木があった。少女は、木が好きだった。風も、大好きだった。
少女は、木とも、風とも違っていたが、木とも、風とも似ていた。
やがて少女は木の体内に取り入れられて、ただ、傍観するだけのものから、一緒に育てあげるものへと変わった。
でも、少女はすぐに木の体内から出されてしまう。少女はずっと同じ場所にとどまる事ができなかったからだ。
それでも、木と、一緒にいた。木が好きだと思えたからだ。木のそばにいたいと願った。
それは叶わないことだった。願うたびに少女は苦しくなった。雷鳴が轟いた。鈍色の雲が広がった。
時には大粒の涙だって流れた。
それでも、とどまり続けることはできなかった。そこへ少女は風と出会った。
少女は、風に惹かれた。木と同じくらい惹かれた。儚いもの同士は、すぐに仲良くなった。木をこれ以上困らせていけない、とそう思った。
でも、すぐに風とずっと一緒にはいられないことを少女は、また知った。
少女は留まることができないし、それは風も一緒だったが、風はある日突然吹いてきて、どこかに消えてしまうことを知っていた。
長くは続かない、それでも少女はつかもうともがいた。
あたたかな日差しは、眺めていたらすぐに消えて、冷ややかな夜が来る。
夜は、ひとりぼっちになった少女を、照らしてくれた。ときには雲もかかり、涙も溢れた。少女は、自分が何かを傷つけるということを知った。
少女は、ただ、漂っていた。そこへ、昼と夜ではない、別のものが少女を迎えてくれた。
風と木だった。少女は、息が詰まった。うまく、均衡がとれなくて。やがてゆっくりと、冷ややかな氷が落ちた。
木が嫌いそうな、冷たい、冷たい氷の結晶だった。風が嫌がりそうな、重い、重い雲だった。
やがて少女はボロボロになった。鈍色の雲をまき、雷鳴を轟かせて、大粒の涙を流し、大好きな風も、木もなぎ倒し、こうなるであろう未来を回避する方法を探し続けていた。
でも、それでも、やめることなどできなかった。まだ小さめであるその火を消そうと今も少女はもがいている。次の嵐は、きっともっと大きい。
少女は、おおよその感情を理解していた。きっと、この火を消すこともできないことも知っていた。それでも、努力するしかなかった。
少女のことを決められるのは、少女だけ。それでも、少女は願わずにはいられなかった。「誰か私に、新鮮な空気を」と。




