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踏み潰す夜
壁と壁を縫いあわせた線の上。
鳩の雄はしつこく雌を追い回し、雌は鬱陶しいとばかりに逃げ回る。
カラスは雄大に一羽で空を舞い、はばたく事なく着地して、忙しなく流れる光のなかでマスクをした少女はクスリと笑う。
「しつこい奴は嫌われるわよ」
低くなった空を背に、人の頭の上を飛ぶ鳩。
恐れることもなく、逃げることもなく、赤い光を放ってこちらを見る。
黒い髪をなびかせて歩く少女にまとわりつく冷たい外気。
一つの線はやがて上まで達し、小さな穴は大きな致命傷となって……やがてそれは捨てられた。
肌色のストッキングの横に並んだ色とりどりのカラータイツ。
綺麗な装飾をされた下着達は今日もウフンとおめかしをして並んでいた。
地面に散った桜の花を踏み潰す夜は満月に近く、その空に月以外の星は見当たらなかった。
黒い漆黒の中で長髪の少女は今日を振り返り、足を速めた。




