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内戦 2-3

時期、大尉は相手軍の大将の部隊にたどり着いた。

やはり大将の部隊となると、今までの部隊とは桁違いの大きさだ。隠れて遠距離から銃殺して数を減らしてから突入した方がいい。

しかし、大尉はさっきと変わらないスピードでゆっくりと部隊に向かって歩いていく。大尉は何を考えているのか、自分には全く分からない。

その時、一瞬で部隊の半分が一気に倒れた。倒れた死体は腹部の辺りで真っ二つに切られている。この切り口、見たことある……ふと横を見れば、さっきまで近くにいた大尉の姿は近くにおらず、部隊の中心で長刀の剣先を見て立っていた。


「やっぱりこの傷だと力が出し切れないな……でも、何とかなりそうだ……」


大尉はそう言いながら長刀を肩に構え斬りかかった、その時戦車が火を噴いて爆発した。

その長刀で巨大な戦車を切ったのだ。戦車の爆発に巻き込まれた戦士を含めて約半分が死んだ……自分も大尉を狙うスナイパーを狙って援護する。数分後大尉の周りにいた人は全て消えた。いつのは敵の大将と十数人の戦士。

大尉はゆっくりと大将に近づいていく。その大尉の姿とさっき溢れる目に戦士は少しビビリながら後退。エファト大尉は長刀を振りかざしながらゆっくり大将に無表情のまま近づく。血だらけで長刀を持った冥界の船頭が近づいてきているのだ無理もない。


「何をやっている。速くそいつを殺せ! 俺を守れ!」


大将は脅えながら戦士達に無茶苦茶な命令を出す。戦士達もどうしたらいいのか分からずに大将の顔を見る。

大将の言葉を聞いた瞬間、大尉は大将の後ろに回り喉元に長刀を当てる。戦士達もとっさに銃口を大尉に向けるが、大尉がシグ・サウエルを向く方が速く、さっきまで立っていた戦士は左胸から血を出し、膝を折って倒れた。

後は大将を討つだけで、このくだらない内戦が終わる。自分も安心して持っていた銃をおろしその時を待つ。

 その時、大尉の腹部から赤い液体が吹き出し、口から血を吐き長刀を持っていた手に力がなくなった。大将は体に暗器を隠しており、その暗器が大尉の腹部に刺さったのだ。とっさに急所を外したからとはいえ、元々の怪我にこの一撃は効いた。大尉は地面に膝をつけ、手で腹部を覆い苦しんでいる。大将はそれを見て少し笑った。下から大将を睨み付ける大尉の目には殺気が込められていた。


「大尉!?」


自分はおろした銃を大将に向け、発砲。

しかし、大将の体は硬い鎧で覆われておりこの距離で、この弾では効き目がない。さっき大尉が指される前に撃っておけば、油断なんかしないでさっさと終わらせておけば大尉がこんな事にならなかった……

自分は効かないと分かっていながらも何発も発砲をしていた。大将も自分の方に発砲するがかすろうが、血が出ようが関係ない。今はただ銃弾が無くなるまで自分の怒りをこいつにぶつける。とうとう持っている弾も銃も無くなり、弾の無い銃の引き金を押し続ける音が響く。大将は下品な笑顔を浮かべながらこちらに向かって歩いてきた。


(すみません大尉、自分は何もできませんでした……)


自分にはもう逃げる気力も、戦う気力も残っていなかった。ただただ地面に落ちた薬莢を見て涙を流していた。


「おい、俺をちゃんと倒さずに次のターゲットに移るのは駄目だろ。」


その聞き覚えのある声が耳に入って来た。その声がするを方に顔をあげると、大尉がシグ・サウエルを構えて立っているのが目に入った。

その瞬間シグ・サウエルの銃口から銃弾が発砲されるのが見え、自分はとっさに横に飛びよける。でも、大将の体には硬い鎧が覆われていて撃ってもはじかれるだけだ。一発目は予想通りはじかれ、はじかれた弾がこちらまで飛んできた。


「君も君の部下も頭が悪いな。この鎧は特注品でね、そんな弾では貫通することはおろか、傷をつけることすらできないよ。」


大将は余裕な様子で笑っていた。確かに自分があんなに撃ったのに傷一つついていない。大尉はシグ・サウエルを肩に掛け、少し笑いながら。


「五月蠅いな、黙れよ。もう少しで逝けるからさ。」


大尉はそう言ってまたシグ・サウエルを構える。大尉、血を流しすぎて頭が回らなくなったのか? 鎧に銃弾は効かない、大砲ぐらい巨大なものを持ってこないとあの鎧は破れない。


「ほんとに頭が悪い。何度同じ事をすれば気が済むんだ?」


「別に俺はお前の鎧を破ろうなんて思ってない。撃てる場所は胴体だけじゃないだろ?」


そう言って、大尉は発砲。当たった先は大将の足だった。うわっという声を出して大将はよろめく。そんなことお構いなしに大尉はまたしても発砲。両足と両腕に当てると大将は膝を地面につけてじっとしていた。腕が使えなければ暗器も使えない。大尉はゆっくりと大将の近くまで歩き、大将の髪を掴み銃口をこめかみに当てる。


「やっとひざまずいたか、誰が頭悪いって? 頭悪いのはお前だろ。そんな鎧や部下に頼っているから、いざとなって自分の身一つ守れないんだ。そんな奴に生きている資格はない。さっさと部下の後を追うんだな。」


銃声の音と共に大将は地面にひれ伏した。これで、内戦は終了した。やっとカラーに帰れる。時計を見ると内戦が始まってからまだ3時間しか経っていなかった。しかし、自分にはその三時間がものすごく長く感じた。とても長く……


「大尉、速く手当てをしましょう。報告は自分がしておきますから、速く。」


大尉に近づきそう言うと大尉は無表情のまま“そうだな”と言って膝を折って倒れた。


「大尉! 今、救護班を呼びますから、死んじゃ駄目ですよ! 大尉!」


大尉に必死に呼びかけながら、切っていた無線をつなぐ。ノイズがひどくなかなか音になってくれない。少ししてやっと音になった。

―どうした、そちらの様子は?


「敵軍の大将を討ち取りました。戦いは終了しました。すぐに救護班を呼んでください、大尉が重傷です。」


震える声で無線に叫ぶ。無線は“了解”と告げると切れた。

大尉の手に触れると少しずつ体温が下がっていくのが分かった。このままでは大尉が死んでしまう。そう思うと涙が出てきた。自分のせいで尊敬する人を亡くしたくない、自分がもっとしっかりしていれば……後悔ばかりが頭の中に流れる。どんどん下がっていく体温、流れ出して止まらない血……自分は何をやっているんだ。失いたくないなら自分がしっかりしなければ、泣いている暇なんて無い。1分1秒が大切なのだ。とりあえず大尉を仰向けにした気道確保を行い止血する。軍事学校で習った事を必死に思い出しながら止血を行い、何度も大尉の名前を呼んだり、顔を叩いたりして意識を戻させる。何回かしているとうっすらと瞼が開いた。


「大尉! しっかりしてください。すぐに救護班来ますから、それまで頑張ってください!」


溢れる涙を必死に堪え、大尉に呼びかける。目に光が入ってないところから、恐らくもう意識はそう長く持たない。


「……ジーニ……と…ブレイン……に…伝言…伝えろよ。……ジーニ、ブレイン。……終わったら……一緒に……飯……行こう……って。ちゃんと……伝えろよ……」


力無い声でそう言う。この伝言から、大尉はまだ死ぬつもりはないらしい……なら自分もがんばらなければ、この人を死なせるわけにはいかない。


「ちゃんと伝えます。だからもうしゃべらないでください。しっかり意識を保ってください。もう少しでいいですから……」


大尉は少し笑うと、薄く開いていた瞼を静かに閉じた。脈を取るとまだかろうじてあるし、呼吸も弱いがしている。しかし、血を流しすぎて体に血液が足りていないのだ。何度も大尉に呼びかける。少しして救護班の声が聞こえた。




「そして、大尉と自分は他の隊員より速くこのカラーに着きました。本当にすみませんでした。自分がもっとしっかりしていれば……こんな事に……」


少尉は頭を深々と下げて謝りながら涙を流していた。少尉の話は恐らく本当だろう。こいつが内戦でこんな大怪我するわけがない。俺は少尉に“お前のせいじゃない”と言って少尉の前に立つ。こんな馬鹿な奴の為に泣いてくれてありがとうの気持ちをこめて少尉の肩に手を置き顔を上げさせる。その時、


「なんて……馬鹿なことしたんだよ! 馬鹿カロン!」


そう叫び、急にブレインが廊下にあった椅子を蹴り上げ半泣きになりながら、早足で廊下を進み。廊下の隅で首からかけていた十字架のネックレスを握りしめながら静かに涙を流していた。俺はガラス越しにカロンをのぞき、静かに息をするカロンを見る。カロンがこんなに弱っているところ、初めて見た。正直ショックを受けている。ブレインは目をこすりながらこちらに戻ってきて壁にもたれかかりながら座る。さすがクールなブレインだ、自分の感情の押さえ込み方を知っている。


「誰ですか、さっき椅子を蹴ったのは! ここは病棟ですよ。静かにしなさい!」


婦長がさっきの音を聞きつけてこちらに来たらしい。ブレインは少尉に向かって“こいつです”と指を指す。この様子だと気持ちの整理ができていつものブレインに戻ったらしい。婦長は少尉に注意するとまた戻っていった。ブレインは立ち上がり、静かに息をするカロンを見てすぐに廊下を歩いていった。俺もブレインの後を追って廊下を歩いていく。


2日前カロンは集中治療室から出てきた。集中治療室には3日入っていただけで、自分で息ができるようになった。驚異的な回復力を見せたが、未だカロンは目を覚まさない。軽傷の傷はだいたい治ってきているが、銃弾が貫通したところはまだ治っていない。俺はどうすることもできず、自分の部屋の窓からずっと空を見上げていた。綺麗な秋空だ。


(そろそろ紅茶の時間だな。)


ティーカップを用意し、クッキーを用意したときにいつもブレインはやってくる。ブレインはノック無しに部屋に入ってくる。


「あれ? 今日はいつものクッキーじゃないんだな。俺、あのクッキー好きなんだけどな~」


ブレインはそう言うと俺の向かい側に座りティーポットから自分でカップに紅茶を注ぐと静かに紅茶を飲み始めた。今日の仕事はもう片づけた、と言うより大佐にやらせた。しかし、カロンにやらせるより遅かった。ブレインの下の奴らに仕事をやさせたらしい。

 紅茶もクッキーも食べ終え、そろそろカロンの様子でも見に行くか。立ち上がりハンガーに掛けてある軍服をはおい部屋を出る。めんどくさいが、目を覚ましてもらわないと俺の仕事が進まない・・・病室に入ると昨日までと変わらないカロンがベッドの上で静かに寝息を立てながら寝ていた。ベッドの横の椅子に座り、カロンを見る。なんかこうやってみてたら、目を開きそうな気がするのだ。しかし、この二日見ていたが目は開かなかった。寝ている顔を改めて見ると長いまつげに幼い顔立ちからまだ子供の顔をしている。あきらめて病室においてあるテレビをつけて見る。ここは格好のさぼり場所だ。1時間近く特番を見て、そろそろ帰ろうと思ったとき軍服の裾が掴まれた。


「人の……部屋のテレビ……勝手に見てんじゃねぇ……五月蠅くて寝れない……」


カロンはそう言うと、片目を包帯で包まれ、もう片方の少し充血した目で俺を見てきた。


「カロン! 目覚ましたのか! よかった……今、医者呼んでやるから待ってろ。」


ブレインはものすごく喜びながら病室を出て行った。“ナースコールを押せばいいのに……”そう思いながらも椅子に座り直しカロンを見る。カロンは手を額に置いて眩しそうに目を細める。腕についているチューブから液体が体へと流れ、体中に巻かれた包帯から見える傷は生々しく体に刻まれていた。


「なぁ……俺何日寝てた? っていうか腹減った。」


カロンのそんな馬鹿げた質問に答えようとした時、病室のドアが開き婦長さんが飛び出してきた。その後ろには二人の看護婦さんとブレインがついていた。俺は椅子から立ち上がり部屋の隅に行き、カロンの体の具合を確かめる婦長さんを見る。


「怪我も順調に治っています。あとは傷から来る熱さえ引けば退院できるでしょう。」


婦長さんと看護婦さんは一礼して病室から出て行った。俺とブレインはベッドで寝るカロンの横の椅子に座る。カロンは眩しそうに目を細めながら天井を眺めていた。恐らくまだ自分で起き上がることもできないだろう。


「おい、ジーニ。俺の質問に答えてくれる気はある?」


カロンは首だけこちらに向け俺に向かって問う。この5日間栄養剤だけで何も食べていなかったので、少し痩せて頬がこけている。


「あぁ、5日だよ。3日集中治療室に入ってて、2日前にこの病室に入ったわけ。ったくお前寝過ぎなんだよ。そりゃ腹も減るだろ。」


カロンは“ふーん”と呟くと、もう一度目をつぶった。その数秒後にカロンから寝息が聞こえてきた。この技どうやったらできるのだろうか疑問に思う。さて、こいつも寝てしまったし、さっさと退散しよう。俺とブレインはカロンの病室から静かに出て行った。



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