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帰郷 4-1

なかなか書き上げるのに時間がかかりました(-"-;)

今度は頑張って早く書き上げます!

幼い頃から、人付き合いが苦手、というか人が苦手。

昔に受けた暴力の記憶は思ったよりも脳に焼き付いていたらしく、少しの間は人との関わりを避けてきた。


しかし、ブレインとジーニアスによってそれも少しずつ緩和された。

それでも、一つだけ苦手なものがある。

それが女だ。


俺は女が嫌い、っと言うか苦手。クラスの女子にも話しかけられたら脅える事しかできなかった。軍事学校時代は無視したり避けたりすることができたが。



だが、軍事学校を卒業し、1人でミドルの町の大学に入ってからは避ける事ができなくなった。

人も多いし、なにやら女性に話しかけられる機会が多くなった。

無視しても、無視しても引っ付いてくる奴もいる。冷たい反応をして引き離そうとしたが、どうやっても離れてくれない。それが女なのだ。



****



「あ、カロン。遅い! どれだけ待たせるのよ、あんたはいつもいつも……」


「何の用だ? 俺はお前を呼んだ記憶はこれぽっちもないぜ。」


ここに堂々と座っている女もそのうちの一人だ。

彼女は苦笑いのまま立ち上がり俺の目の前まで来て、楽しそうに笑って俺の手を握った。手を握られて俺はギョッとした。



こいつは大学で出会った中で一番の変わり者だ。

そして、こいつがこういうと楽しそうに笑うってことは……なにやらこっちに不利なことがあるってことだ……


「約束したでしょ、卒業近くになったらお願い聞いてくれるって!」


したか? そんな約束……


そういえば、俺が卒業する時に、なんか言ったような言わなかったような……

なんか思い出せそうで思い出せないな。それに俺にとってこいつとの約束なんて正直どうでもいい。

ハテナを頭に飛ばしている俺を見て彼女は大きなため息をついた。


「本当に忘れちゃったの? 私はちゃんと約束守ってきたのに……」


約束、約束……あっ、そういえば……



****



軍事学校の高等部を卒業して、故郷を離れて1人でこのミドルの町に来た。

大学の近くにアパートを借りようと思ったが、家賃が高くつく。そんなお金はバイトで稼げる訳がない、安いアパートを探すがどうしても見つからない。


そんな時、父親の古い友人がアパートのオーナーをやっていて、安い値段でアパートを貸してくれると言い出した。

その知らせを聞いたとき、心の底から喜んだ。


アパートのオーナーのディアさんは幼い頃に一度会ったことがあるが、あまり記憶にない。

小さい頃に父親に連れられこのミドルの町に来た。

小さい俺は父親の後ろに隠れていたが、そこにいた女の子と遊んだ記憶はあった。

ディアさんの家で2人で少しの時間だが遊んだ。

ディアさんは父親の大学時代の友人で、俺にも優しくしてくれた。



大学に近い少し小さめのアパートに着いたのは、大学の入学式より一週間前のことだ。

一階のオーナーの部屋にノックをすると、中からは少し小柄の茶髪の少女が顔を出した。

彼女は俺を見て、優しく微笑み中へ入れてくれた。一礼して、中にはいるとディア夫妻がソファーに座っていた。


「やぁ、カロン君! よく来てくれたね~どうぞ自由に使ってくれ。」


アパートの説明を受け、2階の部屋の鍵を借りた。

条件付きだが、なんと家賃は普通の半分でいいと言ってくれた。ありがたいの一言しかない。


荷物を持って立ち上がると、さっき扉を開けてくれた少女が俺の前に立って手を握った。

手を握られた瞬間ぎょっとしてすぐに手を離してしまった。反射的に出たその行動をした後にしまったと思った。

しかし、彼女は俺が離した手を少し見てから、


「私、シフォン・ディア。高等部の三学年なの、よろしく。あなたの部屋まで案内するわ。」


シフォンは笑いながらそう言って、階段を上がり2階の部屋まで案内してくれた。別にショックは受けてないみたいだ。




中にはいると2LDKの割には広く、とても過ごしやすそうな部屋だった。ベッドや家具はそのまま使っても良いと言ってくれたのはありがたい。

日当たりも良く、キッチンも使いやすそうだ。

荷物を広げ、片付けをしているとシフォンが俺の横に来た。


「ねぇ、エファト君はなんでわざわざこのミドルの大学に来たの?」


片付けをしながら、彼女を横目で見る。

彼女は長いまつげに少し青がかかった大きな目をしてた。


「………………さんが通ってたから……」


「え?」


「父さんが通ってた大学だから! 悪いか……」


自分で言っていて顔が赤くなっているのが分かった。


自分でも分かっている、死んだ父親の影をずっと追い続けるのは馬鹿らしいことだし、執着しすぎている。

軍事学校を出て、ここの大学に決めるときにみんなにそう言われた。今までにいろんな人に馬鹿にされた。

俺の成績ならもっと上を狙えただとか、いもしない父の後を追いすぎだとか言われて笑われた。



「へぇ~そうなんだぁ~私も高校お母さんと同じ学校だもん。でも、良いな~私もエファト君ぐらいの成績があればあの大学に行けるのに……だって、あの大学だったら家からも近いでしょ。それに……」


シフォンはそう言って小さなため息をついて置いてある椅子に座った。それからも、一人で話し続けている。お喋りな奴。でも……


こいつ……笑わなかった……


“笑わないのか?”そう聞きたかったが、なんか恥ずかしくて聞くことができなかった。

それに、口には出さないだけで心の中では思っているかもしれないから……

小さく息を漏らしながらゆっくり振り返るとシフォンは俺の顔をじっと見ていた。

すぐに顔を反らし目を薄める。この目を見られたくない、見られたら気味悪がられる。


「なっ、なんだよ……見るな。」


「へぇ~エファト君の目って緑色がかかっているのね。とっても綺麗。」


はぁ? キレイ……誰の目が綺麗って?

こいつ、ジーニアス達並のマヌケか? 俺の目は鬼の目って呼ばれてきたんだぞ、変に緑が混ざった瞳。

“2色以上の色が混ざった瞳は不吉を呼ぶ”

そう言われてきた。だから俺は不吉を呼ぶ子と呼ばれてきた。それをこいつは……


「お前、頭おかしいんじゃないか? 病院行け、病院。」


「なっ! 何よ、褒めただけなのに何でそこまで言われなきゃならないのよ。」


そう言って頬を膨らませてそっぽを向いた。そう言いながらも、心のどこかでは嬉しかった。

今までこの目を誉めてくれたのは両親とジーニアスとブレインだけだった。

それ以外の奴は皆、俺の目を見ただけで気味悪がり、俺を避けていく。避けるだけならまだしも、学生生活では暴力にあった。

なのに、こいつは気味悪がらなかった。表情には出さなかったが、嬉しかった。




こっちに来てから一ヶ月経った。

大学の雰囲気にもだいぶ慣れてきた。基本俺は、講義が終わると直ぐさまアパートに帰る。

大学ではサークルにも部活にも入らず、フラフラしていた。そこそこ友達も出来た。

俺が入った学部は皆、軍事学校からの持ち上がりや運動系の奴らばかりだった為、話は合う奴らだ。


主にアパートでは寝るかバイトをしているか大学の宿題をしているかだ。後は趣味の時間。


しかし、週に一度その時間がつぶれる。シフォンの大学入試の勉強を教えることで半日使ってしまう。

その後、ディア夫妻に食事をごちそうして貰う。これがこのアパートを安く貸しくれる条件だった。まぁ、これだけの条件なら軽いものだ。



翌年、ギリギリでシフォンが俺の通っている大学に入学することができた。俺が思うにほぼ奇跡と言っても良いだろう。

シフォンが大学に入ってからは、やたらとシフォンといる時間が長くなった。あの広い大学でこれでもと言うほど、シフォンと会う。

まぁ、隣で勝手に話しているのを流しているだけだったから良かったが。シフォンもそれを分かっていながらも、話続けていた。



しかし、その二年後。俺も大学を卒業するためアパートを出て、カラーに入るための勉強と大学生活の四年間で鈍った体力作りに専念するため一度家に帰る事にした。

荷物をまとめ、部屋を綺麗に掃除して帰る用意を着々と続ける。

そんな時、扉のノックの音が聞こえたため扉を開けるとそこにはシフォンが立っていた。


「どうした? 手伝いにでも来てくれたのか?」


少しからかうように言うが、全く笑わずに下を向いたまま動かない。

まったく、速く部屋の掃除を済ませたいのに……何があったんだよ、いつもの無駄な元気はどこ言ったんだ?


「カロン、本当にここ出て行くの? その、カラーに入るの?」


はぁ? それはこの前ディア夫妻に説明したんだが……とりあえず、頷いておくと余計に下を向いてしまった。どうしたんだこいつ……


「ねぇ、もしカラーに入れて……このミドルに戻ってきたら、また会いに来ても良い?」


はぁ? またしてもこいつは何を言い出すか……会う理由も意味も無いだろ?

大学にも入れたし、俺も勉強を教える理由もなくなった。


「はぁ? なんでだよ……そうだなぁ~会いに来るなら卒業論文書き終えてからにしろ。」


その間には忘れてるだろうという希望をかけてそう答えると、シフォンは顔を上げてにこやかに笑いながら頷いた。どうしたんだ? こいつ……?

そして、俺はミドルから出て地元帰り、カラーに入った。

それから、一度ディア夫妻には挨拶に行ったが、シフォンには会っていなかった。





「思い出した……卒業論文書き終えたら会うって言ってたんだ……」


「そうよ! だからせっせと論文書いたのに~」


こいつ、マジで書いたのか? っていうか覚えてたのかよ……思ってたより記憶力良いな……

でも、まだ11月だぞ? 書くの速すぎ……


「なになに~カロンに女? 珍しいこともあるものだ……」


ジーニアスとブレインの声にびっくりして振り返るとロビーの入り口から二人が覗いていた。よく見ると後ろにグレイ少尉もいた。こいつら暇すぎるだろ……


「なんでお前達がいるんだよ……ってか勝手に話し聞くな。」


大きくため息をついてゆっくりと首を回す。まだ酔いが残っているみたいだ。少し体が重い……

ジーニアスとブレインはにこっと不気味な笑顔をして、俺の隣にどかっと座った。

こいつらに遠慮って言葉はないのか……? グレイ少尉は申し訳程度に入り口の辺りに立っていた。

シフォンは二人の顔を見て少し考えて、何かを思い出した様に手を鳴らした。


「あなた達が、ジーニアス君とブレイン君?」


「そうだよ。お初にお目にかかります、俺はジーニアス・ワイズ上級大将。カロンと幼なじみで同期でカラーに入りました。」


ジーニアスはそう言ってゆっくりとお辞儀をして笑いかけた。ってか何和んでんだよ……

ジーニアスは近くを通りかかった受付の女性に二人分の紅茶を頼んだ。俺と少尉の分のコーヒーとシフォンの分のココアも頼むと女性は小さくお辞儀をして出て行った。


「じゃぁ、今度は俺ね。俺はブレイン・リラクスト代将ね。同じくカロンと幼なじみで同期。っで、今度はこっちからも質問。なんで初対面の俺たちの名前を知ってるの?」


ブレインは首を傾げながらシフォンに聞く。

確かに、俺はこいつらにシフォンのことを話した記憶はないし、写真なんてもっているわけがない。

どうやって知ったんだ?


「カロンの部屋に写真があったの。それでカロンに聞いたの、この人たち誰って。そしたらカロンが説明してくれたの~」


………俺そんなこと言ったっけ? 全く以て記憶がない。


「俺そんなこといつ話した? 記憶にないんだけど……」


「えっ? あぁ、そう言えばあの時カロン珍しくお酒飲んでたからなぁ~そのせいかな?」


俺が学生で酒飲んだのって数少ないんだけど……

俺が思い出そうとしていると、さっきの女性が飲み物を持ってきた。ブレインが作られたキラースマイルで受け取った。こいつこういうのにも慣れてるな……

あっ、そう言えば……シフォンの前で酒飲んだのって……


「あっ! 思い出した! 俺の論文書いてた時にお前が邪魔しに来たときだ!」


俺が論文で悩んでいたとき、こいつが俺の部屋に邪魔しに来たんだ。

しかも、そのうえ俺の部屋の棚からワインを飲み出した。つられて俺も飲んだがそれ以降記憶がない……気がついたら部屋で寝ていた。もちろん論文は書きかけの未提出。


「邪魔なんかしてないよ! 私は悩んでるカロンの手助けをしてあげようかなぁ~って思っただけよ~」


何が手助けだ……おかげで単位落とすところだったんだからな……

ため息をつきながらコーヒーを口にする。全く、こいつの自信はいったいどこから出てくるんだ?

ブレインとジーニアスがニヤニヤしながら俺たちを見ていた。


「何見てんだよ、気持ち悪い……」


「いやぁ~カロンにもやっと春が来たのかなぁ~って」


ブレインはそう言って紅茶をすすった。

春? 今は秋だぞ。春ならほぼ半年かかる。ブレインとジーニアスの考えてることはよく分からない……


「今は秋だぞ。」


コーヒーをすすりながらそう言うと、ブレインは紅茶を少し吹き出し、ジーニアスは口を開けたまま呆れたという顔をした。あろう事かグレイ少尉までも驚いた顔をしていた。

俺、なんか変なこと言ったか? 三人の顔を見渡すが三人は微動だにせず俺を見ていた。ってか、ブレイン汚いって……


「お前……それマジ? 素で言ってんの?」


ジーニアスは紅茶のカップを受け皿に置き、俺に聞いてきた。

素と言われても、俺はいつも素で過ごしているのだが……シフォンを見ると着ていたTシャツの裾をいじっていた。こいつ、全く話を聞いていないな……そう思っているとシフォンが顔を上げて俺を見た。


「俺なんか変なこと言ったか?」


シフォンに聞いてみると、少し引きつった笑顔で“さぁ”と言った。

俺は分からないままコーヒーをすすると、ブレインはわざとらしく大きなため息をついた。


「もういい。シフォンさんも、お前の性格をよく理解しているようだ。シフォンさん、苦労しますね。」


ブレインはそう言って同情している様な目でシフォンを見た。言われたシフォンも深々と頷いた。

何が苦労だ……俺の方がこいつで苦労してるんだけど……


「そんなことより、俺まだ仕事あるからそろそろ行くぞ。お前はさっさと帰れ。」


コーヒーを飲み干し、ソファーから立ち上がる。大きく伸びをして欠伸をする。

さっさと仕事終わらせて、寝たい。


「えっ、ちょっと! 私はどうなるのよ!」


シフォンは立ち上がって俺を呼び止める。そんな俺とシフォンの姿を黙って見るブレインとジーニ。何をなんなににやけている……


「はぁ? 帰れば良いだろ。俺は仕事! お前は帰れ!」


後ろで何かを叫んでるシフォンを無視して俺はさっさと出て行く。

さぁ、仕事が山積みだ。


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