悪魔から天使へ!?
皇族用の高級なベッドで寝ていたアルフォード坊ちゃんが、うっすらと目を開けた。
世話役のメイドことナタリーである私は、ホッと胸を撫で下ろす。だって、高熱で3日間うなされていたから。
「アルフォード様、お目覚めになられて良かったです。その、ご気分はいかがでしょうか。お水お飲みになられます?」
私は恐る恐る声をかけた。きっと、きつい目で、何か嫌なことを言われるんだろうと思って。そしたら、
「あっ、えっと………、少し熱っぽいですけど、大分良いです。………あの、ナタリーさん」
名前を呼ばれて耳を疑った。いつもなら、『おい』『お前』とかしか言わないのに。それが今日に限って私の名前を、まさかの『さん』付けで呼ぶなんて!? あとなにこの穏やかで丁寧な口調!? いつものとげとげしさはどこに!? な、なんかすごく怖い! 別の意味で!!
このお屋敷にメイドとして勤めて3年目、それはアルフォード坊ちゃんの世話役として3年目を向かえる節目で。
ほんとこのクソが………、こほん、親の七光でいつも威張っている、無理を押し付ける、最近は色気付いて私にボディタッチもしてくる、最低なアルフォード坊ちゃんが、
「えっと………、看病してくださりありがとうございます」
まさかお礼も言うなんて!?!?
ガシャーン!!
私は動揺して、手にしていた水差しを落としてしまった。床に割れたガラスがちらかる。し、しまった!? 怒鳴られてしまう!?
私は慌ててかがみ、床のガラス片を拾おうとしたら、
「あっ! ナタリーさん! このハンカチで上から掴んでください。指、切っちゃいますよ」
スッと、差し出された白いハンカチ。
なっ………!?
私は上を見上げる。そこには、
ニコッと、10歳の可愛い少年の笑顔があった。いつもの嗜虐的な嫌味のある悪魔的な笑みではない。まさに純粋無垢な、微笑み。まさに、
「て、天使様がここにおられるぅぅぅーーー!!! いやぁぁぁぁぁぁーーー!!」
「えっ!? ちょ、な、ナタリーさん!? お、落ち着いて!! いやちょっと逃げないで!? な、ナタリーさぁぁぁぁーん!!」
私はあろうことか、アルフォード坊ちゃんの引き止めを振り切り部屋から飛び出してしまったのだった。
だって、超可愛くて優しいんだもぉぉぉーーーん!!
私は全力でお屋敷の廊下を走りながら、なぜアルフォード坊ちゃんがこんなことになったのか必死に考えていたのだった。




